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GMOワールド|宗谷 敏

GM作物の途上国への影響と先進国が植える理由〜インドと米国の分析

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2007年1月29日

 先週書いたISAAA年次報告は、諸国においてさまざまな反響を呼んでいて興味深い。それらとは直接的関係はないが、GMO導入が途上国農民に与える影響のケーススタディとして、インドのBtワタ栽培を取り上げた論文記事が面白かったので、まずそちらを紹介したい。さらに、米国農家がGMO種子を植える理由はなんなのかという研究を、インドの場合と対にして眺めてみよう。

参照記事1
TITLE: Study explores the effect of genetically modified crops on developing countries
SOURCE: University of Chicago Press Journals
DATE: Jan. 26, 2007

 米国ワシントン大学のGlenn Davis Stone氏は、ワタ栽培農民に自殺者が多いインドのアンドラ・プラデシュ州ワランガル地方を調査し、遺伝子組み換え作物の導入が途上国農民に与える影響について探索した。ワランガル地方では、Btワタ種子の市場占有率が2003年の12%から05年には62%に跳ね上がった。

 「Btワタの開発者Monsato社は、インドにおけるGMコットンの速やかな普及を、米国農家へのハイブリッドトウモロコシの普及を説明するのによく使われる農民の体験結果と管理技能と解釈するが、Stone氏の複数年にわたるワランガル地方ワタ農家調査は、地域のワタ種子の流行の意外なパターンを示した。ワランガル地方は、思慮深い査定と採用より、むしろ通常なら管理実務を磨くはずの技能プロセスのひどい混乱によって悩まされたと結論する。

 ワランガル地方のワタ栽培は、農業の『非技能化』におけるケーススタディを提供する。種子の一時的流行は環境の基礎を持たず、農民は実際なにが植えられていたかを知らず、戦略上の種子選択プロセスへの認識を欠いた。ワランガル地方のワタ農家は、一つの品種を長期にわたり選択するより、次々に新しい種子を少量ずつ試みることを好んだ。問題はBtワタ導入に先行して起きていた。

 根本的原因は、毎年購入しなければならないハイブリッド種子への依存と、農民が自分でなにを使っているかさえ言えない混沌とした種子市場だ。新奇さを求める農民が市場での種子の回転率を悪化させる。種子会社は人気のなくなった種子を改名して再販する。例えば、いくつかの村で最近人気が高い種子は、市場に出まわっている他の4種類の種子とまったく同じものだ。

 各々の村が種子から種子へとっかえひっかえしている記録されない流行のパターンが、『環境的学習』プロセスの崩壊を反映し、農民が純粋に『社会的学習』のみに頼るがままの状態にしていると、Stone氏は論じる。Btワタはこの『非技能化』の原因ではなかったが、問題を悪化させた。しかし、奇妙なことに同じインドのグジャラート州では、Btワタの異なった導入史が、農業技能改良を導き出した。Bt技術の企業によるコントロールの敗北が、地方での育種と明白な知識ベースの革新の増加に農民を導いた」(記事抄訳おわり)

 誤解のないように重ねて断っておくが、これはインドの一地方に限定された研究である。論考の最後にあるように、同じインドのBtワタ栽培でも、別の地方ではまた異なった結果が示されている。さて、この記事と対にして、筆者がどうしても紹介したかったのが、イリノイ大学のCarl Nelson博士とJustin Gardner氏による、米国農家がなぜGMO種子を植えるのか? その理由は除草剤耐性ダイズと害虫抵抗性トウモロコシでは同じなのか? それとも違うのか? という興味深い論考である。紙数の関係から結論だけを記すが、原文にも是非目を通して頂きたい。

参照記事2
TITLE: And Why Is It Again That You Plant Biotech Seed?
SOURCE: SeedQuest
DATE: Jan. 16, 2007

 農家がGMO種子を採用する具体的理由は、トレイト毎に異なっているが、総論としては、家庭生活における福利を向上させ、農業収入を落とすことなく農場での労働以外の作業を行ったり、余暇を楽しんだりできるように家庭内労働時間を再配分することが可能となるというものだ。

 労働集約的な除草剤耐性ダイズの場合は、家庭内労働を平均23%減らし拘束時間が減るため大人気となり、急速に普及していった。同じく害虫抵抗性ワタも、殺虫剤のスプレー回数を減らすので、結果的に家庭内労働を平均29%軽減する。一方、トウモロコシの場合には、害虫抵抗性も除草剤耐性も家庭内労働にはあまり影響しないけれど、害虫や雑草により引き起こされる経済的損失を予防することを目的に広く普及していった。

 多くの農家は、これらの作物を併せて栽培するから、効果は複合的なものになると考えられる。上記2つの論述の結果だけをもって、GMOは先進国の大規模経営農家のみに益するものだという結論に飛びつくのは早計だが、途上国へのGM導入には、ともかく売れれば良いではなく地域に密着したより精密な分析と戦略こそが推進派には要求されるだろう。(GMOウオッチャー 宗谷 敏)

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