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GMOワールド|宗谷 敏

使えない他山の石も?ニュージーランドのGM種子コンタミ報告書

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2007年2月5日

 話は昨2006年12月に遡る。ニュージーランド政府は、未承認GM種子が混入したスィートコーン種子が米国から輸入され、ニュージーランド国内で既に播種されていたと公表する。播種されていた圃場が突き止められた結果、これらのスィートコーンは圃場において全て破棄された。07年2月1日、このコンタミ事故の全貌に関する最終報告書がニュージーランド農林省から公表された。

参照記事1
TITLE: MAF releases imported corn seed report
SOURCE: Ministry of Agriculture and Forestry (MAF), New Zealand
DATE: Feb. 1, 2007

 この事故の端緒は、06年12月11日にニュージーランド農林省から出されたリリースに詳しいので、そちらも併せて見てみよう。風評被害などというものは気にしないでも済むおおらかなお国柄なのか、情報開示の透明性にはちょっと感心する。

参照記事2
TITLE: Sweet corn investigation. Update 2
SOURCE: Ministry of Agriculture and Forestry (MAF), New Zealand
DATE: Dec. 11, 2006

 06年10月と11月に輸入された米国Syngenta社供給のスィートコーン種子4ロットが、輸出前3回のGMスクリーニング検査中、各々1回のGM陽性反応を示していた(この時点でのGM判定はまだグレー)にも拘わらず、誤って輸入されニュージーランド国内の種子供給ラインに流れてしまった。

 Syngenta社側から情報を得たニュージーランド農林省がサンプルの確認再検査を行ったところ、4ロット中の2ロットにGM陽性反応が確認され、GM種子がコンタミしていたことが明らかになった。全ての種子のトレーサビリティが可能だったため、播種されていた国内各圃場が特定され、成育中のスィートコーンは全て廃棄された。当該農家の大部分は、植え替え用種子をSyngenta社から提供され経済的損失は被っていない、というのが事故のあらましである。

 ニュージーランド政府は、GMが混入した種子がたやすく同国の輸入時チェックをすり抜けてしまった事態を重く見て、昨年の事故発覚時点で直ちに輸入監視システムの点検と改善に着手する。それと共に、農林省長官が元判事であるDavid Oughton氏に、今回公表された報告書作成を依頼した。

 Oughton氏の最終報告書は、以上の事故の経緯を分析し、主因をニュージーランド農林省の輸入時の監視システムが有効に働かなかったためという結論を導き出す。同時に改善のための提言も種々行っているが、農林省によればそれらは事故発覚時のレビューで既に対策済みとのことだ。

 筆者が注目したのは、ニュージーランド農林省の最終報告書リリースに添えられているQuestions and Answersである。この一問一答集はかなり痒いところに手が届いており、わが国の行政担当者には是非ご一読願いたい。

 特に7番の「種子への低レベルのGM混入をニュージーランドは避けられないのか?」という問いに対する回答は率直だ。曰く「ますます多くのGM作物が世界中で栽培され、貿易されている実状で、GM種子が種子供給に存在していることはかなりの確率で起きうるだろう。一方、GMと非GM農産物を分離するシステムも、商業的圧力と政府からの要求によって運用され、進歩を続けている。

 未承認GM種子が、偶発的に発見可能な閾値の間際や閾値以下に存在しているような事故が続くことは十分にありうる事態だ。しかし、適切な運用と進化する保証システムにより、これらの事故を最小限に留め置くこともまた可能であるべきだ」

 つまり、抑止には最大努力するという留保をつけつつも(未承認)GMゼロトレランスは無理だと、先ず客観的に現実を見つめて臆することなく公表している。わが国政府の「誇るべき」保証システムは、依然ゼロトレランスを標榜する。一粒ずつ調べる非現実的検査を除き、どのような検査にも限界があるから、実はゼロトレランスは観念でしかない。
 しかし、ニュージーランド農林省のようにホンネを漏らしたら、厚労省も農水省も、トレンディ正義の味方環境保護団体と自称消費者の守護神メディアからの集中砲火を浴びて、たちまち火だるまになる。わが国にも例外はある。Non-GMO表示を許してしまった運用や閾値に対する批判もあるが、5%までGMの意図せざる混入を認めたわが国のGM食品表示制度は、キチンと現実を直視した基本政策に基づく。

 仮に、わが国においてGMコンタミ種子が播種されていた圃場の存在が公表されれば、客観的安全性に関わりなく、破棄されようがされまいが、消費者保護に名を借りた「魔女狩り」が大好きなおごれる一部流通は、その「穢れた」土地からの農産物引き取りを全面拒否するのだろう。「この国の消費者は幸せである。しかし、何かがおかしい」と、宇宙人ジョーンズ氏は缶コーヒーを飲みながら首をひねるだろう。(GMOウオッチャー 宗谷 敏)

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