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GMOワールド|宗谷 敏

EU農相理事会は合意に失敗したが……–BASF社のGMジャガイモ域内栽培承認

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2007年7月23日

 2007年7月16日、ブリュッセルで開催されたEU27カ国農業閣僚理事会において、独BASF Plant Science社のGMジャガイモの域内栽培承認に関する特定多数決投票(QMV:Qualified Majority Voting)が行われた。結果は、例の通り賛否ともに必要とされる議決数が得られず、決定は数カ月後の欧州委員会によるデフォルト認可へと委ねられた。

参照記事1
TITLE: EU ministers pave way for biotech potato crops
SOURCE: Reuters, by Jeremy Smith
DATE: Jul. 16, 2007

参照記事2
TITLE: Commission set to approve controversial GMO potato
SOURCE: EurActiv
DATE: Jul. 17, 2007

 この農業閣僚理事会が注目された理由は、1998年のGMO承認モラトリアム以来はじめてGMOのEU域内栽培が認められるかどうかという点にあった。GMOの輸入販売は、04年5月にスイスSyngenta社の除草剤耐性GMスイートコーンBt11の承認によりモラトリアムが解禁されたが、栽培となると共存論争があちこちで戦われている現状から、欧州委員会の姿勢も慎重だった。

 農業閣僚理事会における各国のスタンスであるが、賛成票を投じたのは、英国、ドイツ、オランダ、スウェーデン、フィンランド、エストニア、スロバキア、リトアニア、ベルギーおよびチェコの10カ国、反対に回ったのはイタリア、オーストリア、ギリシャ、ポーランド、アイルランド、ルクセンブルグ、デンマーク、ハンガリー、ラトビア、キプロスおよびマルタの11カ国である。この結果、賛否共に必要な票数を得られなかった。

 フランス、スペイン、ブルガリア、ルーマニア、ポルトガルおよびスロベニアの6カ国は棄権した。なお、最近のQMVの傾向として、新加盟した小国群があからさまな反対に回るよりは棄権を選ぶ方向にあり、このことはGMO反対勢力の弱体化につながるとの分析もある。

 今回議題に上がったBASF Plant Science社のGMジャガイモはどのようなものなのか? 通常ジャガイモにはアミロペクチン(約80%)とアミロース(約20%)という2種類のデンプンが含まれている。00年にBASF社がGM技術により開発した商品名Amflora(EH92-527-1)はアミロペクチンのみを含み、用途は製紙産業で使用されている化学薬品の代替や動物飼料に限定さており、ヒトの食用としては利用されない。この点からは逆風はやや弱いと考えられ、モラトリアム解禁後の栽培承認第一号としては適任という見方もできる。

 BASF Plant Science社は、04年4月、スウェーデン政府を通じてAmfloraの欧州認可を申請している。06年12月、欧州委員会からの諮問に答えて、EFSA(欧州食品安全機関)はAmfloraの安全性に対し肯定的意見を提出した。これに対して収まらないのがGreenpeaceやFriend of the EarthなどGMO反対環境NGOである。

 争点はいくつかあるのだが、先ずAmfloraには抗生物質抵抗性マーカー遺伝子(ARMGs)が含まれるという点がある。他のGM作物にもポピュラーに用いられるNPT II(カナマイシン耐性遺伝子)であるが、ARMGs使用の段階的廃止を命じる01年の欧州指令を、EFSAの承認は無視しているというGreenpeaceの主張だ。

 しかし、これは知識のない一般紙に対するGreenpeaceの騙しテクニックである。なぜなら04年4月、EFSAはARMGs使用に対しリスクにより実験用も市販用にも許されないもの、実験用のみは許すもの、制限する必要なないものの3段階に分ける意見書を提出しており、NPT IIは一切制限する必要が認められないグループに属しているからだ。Greenpeaceは、最近インドでもウミガメ保護のための環境影響評価を改ざんしたという疑惑に直面しており、こんなことをしていてはその品格が疑われるばかりだ。

 Friend of the Earthは、Amfloraの食物連鎖へのコンタミやヒトへの健康影響への懸念(因みに動物影響評価は既に行われている)を表明しているが、アミロペクチン自体従来のジャガイモに含まれていることから迫力を欠く。欧州委員会広報の「120%安全」という自信は理由のない訳でもなさそうだ。

 欧州委員会のデフォルト認可待ちのBASF Plant Science社は、08年からの欧州域内におけるAmflora商業栽培を期待している。クローズドループで契約栽培を行う意向だが、各国共存法との折り合いなど、まだ不透明な部分も残る。(GMOウオッチャー 宗谷 敏)

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