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GMOワールド|宗谷 敏

目白押しでもEUは急がない–GMO承認作業の進捗ぶりを概観する

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2007年9月10日

 WTOで押し込まれてからも、EUにおけるGMOの承認作業は相変わらず蝸牛の歩みである。長々続く複雑な手続きを経ても中途決定段階では結論に達せず、最終的に欧州委員会のデフォルト認可に頼るのが慣例だからだ。しかし、溜まっている申請を捌くためのステップは一歩ずつ着実に進んでおり、今後の数カ月内に、およそ10品種のGMOが承認作業の各レベルで議論される予定にあるとReutersは伝えている。

参照記事1
TITLE: EU to clear new GMO beet
SOURCE: Reuters, by Jeremy Smith
DATE: Sep. 7, 2007

 まず、晴れて承認されるであろうGMOの一番手は、米Monsanto社と育種会社の独KWS SAAT AGが共同開発したGMテンサイH7-1系統だ。これは、除草剤グリホサート(商品名Roundup)に対して耐性を持つ。2007年4月19日の専門家会合における特定多数決投票(QMV:Qualified Majority Voting)では合意に失敗している。

 このGMテンサイが、07年9月17日から18日の閣僚会合で、無投票によりEU法務大臣から承認されるだろうとReutersは報じている。Reutersは明確に書いていないが、4月19日の専門家会合以後に制度上3カ月間以内に討議することになっていた閣僚会合に関する報道は見当たらないので、これも欧州委員会のデフォルト認可による立法手続きかと思われる。

 リードに書いたおよそ10品種のGMOとは、ほとんどが掛け合わせ品種のトウモロコシであり、ワタ、ダイズ、ジャガイモなども含まれている。07年3月時点のパブリックコメントの進行状況や5ページ分ある欧州食品安全機関(EFSA:European Food Safety Authority)のGMO Applicationsを参照すれば、何がラインアップされているのかはおおよそ推測できるだろう。

 トウモロコシはすべて除草剤耐性と害虫抵抗性との掛け合わせ品種で、Monsanto社のMON863xMON810xNK603、MON863xNK603、NK603xMON810など、米Pioneer Hi-Bred社(またはPioneer Overseas社、いずれも米DuPont社傘下)と米Mycogen Seeds(米Dow AgroSciences社代理)の1507 Maize、1507xNK603、59122 Maizeなどだろう。ダイズとワタは独Bayer CropScience社の共に除草剤グルホシネート(商品名Basta)に耐性を持つA2704-12とLL Cotton 25だろう。

 これらのうち59122 Maizeはブランド名Herculex RWとして米国での人気種子だ。07年6月25日の専門家会合において例の通り合意に失敗し現状閣僚会合送りとなっているが、07年5月にはオランダやアイルランドでGreenpeaceによりトウモロコシ製品などへの未承認GMOの混入として告発を受けており、業界からの認可を急いで欲しいという声が強い。

 さて、用途こそ非食用に限定されているがEU域内での栽培認可を含むため、もっとも論争の的になるだろうとReutersが報じ注目しているのが、独BASF Plant Science社のGMジャガイモEH92-527-1(商品名Amflora)に係わる承認だ。デンプンのアミロペクチン含有量を増やしたEH92-527-1については、07年7月16日の農相理事会における栽培認可の合意失敗について既に詳しく書いた。

 この結果、栽培承認(環境影響)は欧州委員会のデフォルト認可待ちにある。しかし、依拠する規則が異なるEFSAにより安全性確認が行われた食品・飼料安全性については専門家会合での検討待ちでステップは遅れている。EH92-527-1の場合、この二つの認可が揃わないとフル承認とはならない。

 複雑なEUのGMO承認作業での可否決定段階は、簡単に言ってしまえば3回のチャンスがある。(1)関係専門家会合での合意→(2)関係閣僚会合での合意→(3)欧州委員会のデフォルト認可である。また、上述の通り承認は、輸入と加工利用、食品と飼料・工業用目的、栽培目的などでも準拠する規則が異なる。モラトリアムの余波で申請からの時間が経過し、規則も時代により変遷しているため全体像を理解するのはかなり難しい。

 従って、上述の10品目の認可と一言で述べても、レベルは(1)から(3)までが混在している訳だ。モラトリアム施行以後、上述の通り(1)や(2)の段階で承認が与えられた例はない。EUのGMO承認作業は、メディアからも注目されており、動きがあれば必ず報道されるが、認可システムの基礎を頭に入れてから読まないと混乱するので注意する必要がある。(GMOウオッチャー 宗谷 敏)

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