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GMOワールド|宗谷 敏

有機の郷の奇想天外-米国でGM表示をしてみたら

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2007年11月19日

 先週末の2007年11月16日には、英国のThe Soil Association(土壌協会)がお騒がせで同国メディアは大忙しだった訳だが、内容の面白さで11月15日付米国一地方紙のトリビアネタに一歩譲る。一般にメディアが大好きな全米「初」(「おそらく」と遠慮がちながら)というカリフォルニア州の一農家による「GM自主表示」実施の顛末は、意外性と驚きや笑いに満ちていて読む者を飽きさせない。

参照記事1
TITLE: Engineered corn proves easy to swallow
SOURCE: The San Luis Obispo Tribune, by David Sneed
DATE: Nov 15, 2007

 読者は、カリフォルニア州サンルイスオビスポ郡をご記憶だろうか? 2004年11月、GM栽培禁止令を求める住民投票が行われた結果、41%:59%で否決されたが、なお論争が継続している地区である。有機栽培が盛んな同州でも、同郡がひときわ反GM意識が盛んな地域であろうということは、この記事の下に続く「Avila Barnは恥を知れ!」に代表される地元読者からのコメントを読まずとも、容易に想像できるだろう。

 同郡のリゾート地であるAvila Beachの後背地に位置する兼業農家(本業は歯列矯正医だから多分地元の名士だろう)John DeVincenzo博士は、80年代に観光農場という事業スタイルを思いつく。家族と共に自作の農産物を道端のスタンドで販売することからスタートし、85年には古い納屋を購入して店舗に改装した。これが、Avila Valley Barnとして大当たりし、今やご当地の観光名所となっている。

 5年前にDeVincenzo博士は、殺虫剤費用とスプレーするトラクターの燃料コストが節約できるという純粋に経済的動機から、害虫(コーンボーラー)抵抗性のGMトウモロコシの栽培をはじめた。今年は、約12エーカーずつにGMトウモロコシと非GMのトウモロコシをそれぞれ栽培する。

 DeVincenzo博士がGMトウモロコシを栽培しはじめ時から、環境保護主義者と地元の反GM食品積極行動主義者たちが、GM表示をするようしつこく要求してきた。「人々は、自分の食べているものについて知る権利を持つ」と考えた博士は、今年の9月にこれに応じAvila Valley Barnで販売する自家製GMトウモロコシに、「自家栽培したGEトウモロコシ」というラベルを貼った。

 表示を要求してきたSierra Clubなどは博士のGM表示に満足して支持を表明し、「GMフリーという若干の自主表示がある」がGMの自主的表示については、寡聞にして今まで聞いたことがないから、「本州もしくは全米初」ではなかろうかと推測する。

 さて、Avila Valley Barnを訪れた顧客は、同じ価格に値付けされたGMトウモロコシと非GMのトウモロコシの両方を選べる訳だが、ここで何が起こったか? 当初、DeVincenzo博士はGMトウモロコシがNon-GMの半分程度しか売れないだろうと予想した。しかし、実際の結果が全く正反対だったことには、博士自身も驚いた。

 若干の顧客が、GMトウモロコシが販売されていることに不満を述べたが、通常の顧客(つまり、観光客と推測される)がGMは皮が剥かれていないのでより新鮮に見え、GMの方が好きだと言った。Non-GMトウモロコシは、害虫の存在や被害をチェックするために部分的、または完全に皮を剥かなければならないのだ。この結果から、DeVincenzo博士の農場管理者は、GMとNon-GMトウモロコシの来年の作付け比率を2:1にするよう勧めている。

 この記事を書いたかなり優秀な記者は、PNASに掲載されたIndiana大学研究者による水中生態系に対するGMトウモロコシの影響可能性を論じた最新の懸念に言及することも忘れていないが、これに対するDeVincenzo博士のコメントもなかなか立派だ。

 博士は、GM農作物の使用が正当な関心を招くことを認めるが、GM農作物の環境への利益は欠点よりももっと重要だと信じている。例えば、Non-GMトウモロコシは、4日ごとに風で周辺に吹き流されるかもしれない殺虫剤スプレーを必要とし、噴霧に使うトラクターは温室効果ガスを発散させている。

 さらに、殺虫剤スプレーの効果は穂軸内のコーンボーラーに対しては必ずしも有効ではないから、GMトウモロコシと同量の非GMトウモロコシを得るためには、収穫ロスを見込んでより多くの土地面積を必要とする。「我々は鋭敏なこの惑星に対する殺虫剤の環境影響を評価しなければならない。利益と負債とは、我々がなすすべてを比較熟考すべきだ」

 この小さな地方記事が、来年の大統領選候補者たちの政策論争の一つであるGM表示の是非や、FDAのGM表示不要という確固たる信念に対し、なにか影響があるかと言えばそれはいささか疑問だ。しかし、それでもこのトリビア記事の面白さは抜群だし、野暮な説明は一切不用だろう。

 と言いながら、一つ注記が必要なことに気がついた。これは食用のスイートコーンではなくて飼料用のデントコーンではないかという疑問を抱く詳しい読者がおられるかもしれない。GMのスイートコーンはSyngenta社のBt11しかないが、記事にはスイートかデントかの区別は記載されていないからだ。しかし、記事のリードには「locals want food that looks good」とあり、かつ上記のAvila Valley Barnのホームページにある製品紹介のところにも「焼きトウモロコシにして、溶かしバターをつけて食べてごらん、おいしいよ!」とあるから、仮にデント種であっても食品用として販売されていることは間違いない。(GMOウオッチャー 宗谷 敏)

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