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GMOワールド|宗谷 敏

年末・年始のGMOワールドを整理・整頓(下)〜アジア・アフリカ編

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2008年2月4日

 先々週と先週に続き、年末・年始のGMOワールドをスナップショットする試みも最終回となり、アジアおよびアフリカを取り上げる。しかし、書いているうちに、この手法はアフリカにはあまり適していないことに気がついた。この地域は点描を重ねるより、もっと大きな構図を描いて面を眺めないと良く見えてこないのだ。そこで、そのためのヒントとなる記事をいくつか末尾に紹介することでフォローすることとした。

 世界をブロック別に分けて日付順に並べる。今回はアジア・アフリカを取り上げる。国名は日付の前に置き、日付の後に<キーワード>を追加する。<BF>はバイオ燃料の略。記事へのリンクは全部貼ると煩瑣になるため適宜選択し、直リンさせない場合には最後に(媒体名)を置いた。

<アジア編>

韓国12月12日<クローン>慶尚大学の研究チームが、世界初の赤色蛍光タンパクを持つるクローンネコを誕生させた。クローンネコ自体は、既に2004年に成功している(Korea Timesなど)。

中国12月19日<クローン>上海交通大学と中国農業科学院付属機関が、世界で初のGMウサギのクローンを9月14日に誕生させていたと発表(China Viewなど)。

タイ12月21日<GMトウモロコシ流出>有機農業NGOが、地方の農場にGMトウモロコシが成育しているのを発見したと報告、付近のMonsanto社の隔離圃場からの流出が疑われる(Bangkok Post)。

タイ12月25日<GM試験栽培禁止令>農業・農協省が求めた01年4月からのGM作物(野外)試験栽培禁止令解除を臨時閣議は拒否した。しかし、実は公的機関によるGMパパイヤ、ワタ、トウモロコシなどの試験栽培は、禁止措置から除外されていたことが後から判明する。

中国・オーストラリア12月27日<植物育種協定>浙江大学と西オーストラリア州が、遺伝物質の交換などを含む植物育種協定に署名(FarmOnlineなど)。

韓国12月30日<輸入LMO規制強化>08年1月から輸入LMOに対する規制が強化されるが、あまりに多くの政府機関が複雑に関与するため、混乱や非効率をもたらす懸念も(Korea Times)。

フィリピン1月7日<Mon810認可延長>政府は、Mon810の栽培と種子販売に係わる認可を更新し、5年延長の2012年まで有効と発表した(Dow Jonesなど)。

中国1月7日<GMブドウ>狭西省の北西農業と林業大学の研究者が、GMにより赤ワインに含まれる抗酸化物質レスベラトロールを通常の6倍多く含むブドウを開発したと「New Scientist」に発表。

中国1月9日<クローン> GMで緑色蛍光たんぱく質を組み込まれたクローンブタが、試験交配により蛍光たんぱく質を持つ子ブタを自然出産したと東北農業大学の研究者が発表(APなど)

インド1月9日<耐寒性GMトマト>国防研究開発機関(DRDO)が、低温耐性のGMトマトを開発中で、栽培試験間近であることが明らかにされた(Indian Express)。

インドネシア1月9日<BF・ダイズ危機>米国のバイオ燃料傾斜などにより輸入ダイズの価格が2倍以上に高騰、主食のテンペが市場から消える事態に政府は輸入税をカットするなど対応に追われる。食糧自給論が勃興(Al Jazeera)。

パキスタン1月9日<自国開発Btワタ導入>国立バイオセーフティセンター(NBC)の次長が、09年から自国で開発したBtワタ種子を上市すると語る(Daily Times)。

中国・ドイツ1月24日<BASF>独BASF社が、トウモロコシ、ダイズ、コメなど主要農作物のGM開発を中国国立生物学研究所(NIBS)と共同研究すると発表(AFXなど)、BASF幹部は、政治的動きや厳しすぎる規制からヨーロッパでの研究を諦めたとコメント(Food Navigator)

インド1月25日<GM安全性争議>Vandana Shiva女史ら積極行動主義グループから提出された、07年8月から9月にかけてGM加工食品(具体的にはダイズ油とダイズ粕)の輸入・販売から遺伝子工学承認委員会(GEAC)の安全性試験を免除する政府決定を取り消すよう求める誓願に関し、最高裁は政府に対し2月19日までに説明するよう求めた(IANSなど)。

中国1月26日<GMコメ>GMイネのさまざまな品種が、湖南州と湖北州で研究されており安全評価の最後段階にあるが、安全証明書を得るには、ラボでの実験、パイロットテスト及び生産試験を経なくてはならない。さらに市場の受け容れがなにより重視されるだろうと、規制当局者が語った。

インド1月29日<Btワタ増加>Mahyco Monsanto Biotech (India)社によれば、Bollgard IIの投入などにより農家への経済的利益が認められたBtワタ種子販売が、タミルナヅ州などで続伸している。ワタ栽培9州のBtワタ栽培面積合計は、05年の310万エーカーから1440万エーカーに拡大した(Commodity Onlineなど)。

フィリピン1月30日<ゴールデンライス>国際米研究所(IRRI)の長官が、2011年までにビタミンAリッチのGMコメであるゴールデンライスを上市させられるだろうと語る。

<アフリカ編>

ケニヤ12月11日<GMソルガム>栄養と消化性が改善されたGMソルガム開発を目的とし、9組織で構成されるthe Africa Biofortified Sorghum (ABS) Projectは、栄養素含有量がさらにすぐれた(リジンなど必須アミノ酸、ビタミンAとEおよび亜鉛)第二世代のGMソルガム(ABS#2)開発が順調と発表した。なお、このプロジェクトには米Pioneer Hi-Bred International 社が協力し、米the Gates Foundationが資金提供している(Seed Quest)。

ウガンダ1月22日<GMワタ試験栽培>国家バイオセーフティ委員会(NBC)は、国立半乾燥地資源研究所(NaSARI)が申請していたボールワーム抵抗性と除草剤耐性を併せ持つGMワタの圃場試験栽培を認可した。圃場試験栽培が許されたのは、07年5月の耐病性GMバナナに続き2番目に当たる(Seed Quest)。

アフリカ1月22日<IAASTDの内紛>開発のための農業科学技術の国際査定(IAASTD)は、世界銀行から資金提供を受け、様々な技術の農業改善に対する有効性を評価する国際プロジェクトである。ところが報告書ドラフトのGM技術に対する記述を不満として、Monsanto社,スイスSyngenta社および独BASF社が脱退を表明した(Guardian)。

アフリカ1月25日<AGRAへの資金援助>スイスで開催された世界経済フォーラムにおいて、米Microsoft社のBill Gates氏は、The Bill & Melinda Gates Foundation(ゲイツ財団)が途上国の農業改善のため総額3億600万ドルを援助すると発表した。このうち1億6450万ドルはアフリカ緑の革命同盟(AGRA)が受ける(APなど)。

 冒頭書いた通り、現在のアフリカ情勢を眺めるためには、少し引いた視点で大きな構図を捉える必要があるが、詳細を論ずる紙幅はない。そこで、筆者は参考となるいくつかの論考を提示して点描を補いたい。

 先ず、参照すべきは07年11月26日から12月2日までマリで開催された一連の会議とこれに関する報道だろう。この会議は複数の議題が並び、特に全体を総括する会議名称を持たないようだが、アフリカの25カ国およびアフリカ以外の10カ国から約150名が参加した。
これらのうちで注目されるのは、11月26日の「Climate Change, Agriculture, Fisheries and Pastoralism in Africa」と11月30日の「African Agroecological Alternatives to the Green Revolution」である。

 11月26日の会議では、一部のアフリカ諸国から先進国や多国籍企業による環境破壊や小規模農家の存続圧迫、バイオ燃料生産の食糧分野への浸食などに対する懸念が強く表明された。また、11月30日の会議の論点は、アフリカにおける緑の革命の是非論に集中した。

 この緑の革命を推進するのは、前国連事務総長Kofi Annan氏率いるアフリカにおける緑の革命同盟(AGRA)だ。上述のスナップショットにある通り、ゲイツ財団やロックフェラー財団から巨額の援助を受け、まさに花も実もある組織だし、GMO導入に関しても慎重姿勢を堅持している。しかし一方、これらに懐疑的な対抗勢力の風当たりもかなり強い。

 このあたりの事情は、農業イデオロギーの衝突という見方を提示するChido Makunike氏が「The African Executive誌」に寄稿している「Agro-ideological Battle Raging in Africa」や「Critical Questions Raised on AGRA」、「Agricultural Techniques for Africa」で巧みに分析している。また、Syngenta East Africa社のPete Veal氏によるChido Makunike氏の論考に対するコメント「Food Security: New Technologies Will Save Africa」も、ぜひ併せて参照されたい。(GMOウオッチャー 宗谷 敏)

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