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GMOワールド|宗谷 敏

商業化への一番乗りは?〜栄養改善GM食品の胎動

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2008年11月10日

 干ばつ抵抗性など気候変動への対応と共に、栄養分を改善して消費者にも明白なメリットを示すいわゆる第二世代GM作物というのも、長年謳われながらまだ果たされていないお約束の1つだ。今年の秋は、これらアウトプット・トレイトGMの進捗に関するいくつかの話題が(海外を中心に)メディアを賑わしたので、今回はこれらをまとめておこう。

http://www.sciencedaily.com/releases/2008/10/081016162238.htm
TITLE: Better Beer: College Team Creating Anticancer Brew
SOURCE: ScienceDaily
DATE: Oct. 17, 2008

最初の記事は米国から。テキサス州ヒューストンのライス大学の学生たちが、遺伝子組み換え技術を用いて、ワイン(ブドウ)などに含まれ、がんや心臓病リスクを低減させるとされている抗酸化物質レスベラトロールを含む「バイオビール」を製作中だという。

 レスベラトロールの効果は動物実験では確認されているが、ヒトへの検証はなされていない。しかし、高脂肪分の食事を好むにもかかわらずフランス人の心臓疾患発症レートが低いのは、ワインの消費と関係しているのではという、俗に「フレンチのパラドックス」と呼ばれる推測がある。

 この8名の学生グループは、2008年11月8、9日にマサチューセッツ工科大学(MIT)で開催されるinternational Genetically Engineered Machine competitioni(iGEM)に、このビールをもって参戦するつもりだ。iGEMとは、いわば「ロボコン」のGM版のようなイベントであり、学生を対象にした世界最大の合成生物学コンテストで、日本からの参加校もあるようだ。

 昨年のコンテスト終了時に、1人の大学院生がレスベラトロールをビールに入れる思いつきを冗談まじりに語ったが、誰もまじめに受け止めなかった。しかし、今年の春になって新たな挑戦プロジェクトを捜し始めると有望な論文や文献が見つかり、チームは「今年は、これで行こう!」ということになった。

 遺伝子組み換えされるのは、ビールを発酵させるイーストであり、発酵と同時にレスベラトロールも生産するイーストの開発にチームは取り組んでいる。素となるイーストを、近隣でビール醸造業を営むライス大学卒業生がチームに寄贈したという美談もある。

 学生たちのほとんどは、法的にビールを飲める年令に達していないが、「バイオビール」をまだ飲めないのは誰でも同じだろう。というのは、「バイオビール」が実際に新製品として市場に出るまでには、マーカー遺伝子の除去やFDAの認可など、技術・規制面でクリアすべき課題があり、まだ長い時間がかかるだろうと学生たちは言っている。

http://news.yahoo.com/s/nm/20081026/hl_nm/us_cancer_tomatoes
TITLE: Scientists develop cancer fighting purple tomato
SOURCE: Reuters
DATE: Oct. 26, 2008

 次は英国からだが、こちらも抗酸化物質の強化になる。ノーウィッチ在の植物遺伝学研究所John Innes Centreで、一般に食される果菜類の栄養品質改善を研究している科学者が、アントシアニンの含有量が高い紫色のGMトマトの栽培に成功した。さらに、動物実験により健康増進効果を確認できたとNature Biotechnology誌に発表した。

 アントシアニンは、暗色のベリー類などに多く含まれる抗酸化物質で、いくつかのがんと心臓疾患、加齢から起きる変性疾患などを予防することが証明されている。抗炎症活性も併せ持ち、視覚能力を向上させて、糖尿病や肥満を防ぐとも言われている。アントシアニンを発現させる遺伝子はキンギョソウから導入され、同時にトマトを紫色に変えた。

 遺伝的にがんに罹患しやすく設計されたマウスを使った実験では、普通に給餌された対照群の142日に対し、紫色のトマトを食べさせたマウスの平均寿命は182日と際立って長命であった。これは当初科学者たちが期待していた以上の成果である。

 栄養学的に推奨されているように5種類の野菜と果物を、毎日食べている人はほとんどいないため、より高度に生物活性成分を持つ普通の果菜類が開発されれば、それらはより大きな利益を人々に与えられるだろうと、科学者は期待する。

 次のステップは、より良い健康状態を促進するために抗酸化物質がどのように影響を与えるか調査するために、ボランティアの人体実験による臨床データを収集することになるだろうと、科学者は述べている。

 記事に添えられた紫色のトマトの写真は非常にインパクトがあり、英国を中心に各国で10月最終週のメディアはこの関連記事で大いに盛り上がっていた。

http://www.unitedkingdomnews.net/story/425484

TITLE: Genetically modified soya bean can cut heart attack risk
SOURCE: ANI
DATE: Nov. 3, 2008

 3本目はまた米国に戻る。心臓疾患リスクや最近ではアルツハイマー病 まで予防するとされるオメガ3系脂肪酸作物の開発レースは、2年前にイントロダクションめいた記事 を書いた。この時は、独BASF社と米DuPont社の取り組みを主に紹介したが、やはりというか、一歩先んじたのは米Monsanto社のようだ。

 ダイズやナタネに含まれる多価不飽和脂肪酸α-リノレン酸(ALD)は、体内でまず飽和脂肪酸ステアリドン酸(SDA)に変換され、次にEPAを生成する。最初からダイズ油中のSDA含有量が増える(脂肪酸組成中の約20%)ように遺伝子組み換えされたのが、このMonsanto社のGMダイズで、これはALDを増やすよりもおそらく効率が良いことになる。

 今年、Monsanto社は、試験圃場から600tのGMダイズを収穫し、その一部をテストした結果、ファットスプレッド、ヨーグルト、シリアルバーやサラダドレッシングなどの食品加工に使用できると確信するに至った。このGMダイズ由来ダイズ油のオメガ-3系脂肪酸を増やす効果について人体実験により確認したのは、米university of South Dakotaの研究者らだ。

 the journal Lipids(「脂質ジャーナル」)誌に発表された実験は、21歳から70歳までのボランティア33人を対象に、16週間にわたり行われた。無作為に3つに分けられたグループは、各々普通のダイズ油、EPAカプセルと普通のダイズ油およびGMダイズ油を与えられた。被験者のEPAとDHAレベルを測定したところ、EPAカプセルおよびGMダイズ油を摂取したグループのオメガ-3インデックス(EPAとDHAの量を表す指数)が増加を示し、両群には有意差がなかった。

 一方、普通のダイズ油を摂取した対照群では、EPAとDHAレベルの増加は見られなかった。このことから、SDA 摂取が冠状動脈疾患のリスクを減少させるオメガ-3インデックスに好影響を与えることが証明されたので、SDAレベルの高いGMダイズ(油)の生産は支持されるべきであるというのが、この実験のあらましである。Monsanto社は、11年までにFDA(食品医薬品局)の認可を得て、12年の上市を計画しているという。

 これらのスーパー食品群がスーパーの棚に並ぶには、まだまだ時間がかかるし批判もある が、今後も注目していきたい。ところで、栄養改善GM作物の本家本元といえば現在試験栽培中のゴールデンライスだろうが、こちらはフィリピンで12年からの上市が期待されている。食品を離れるが、日本サントリーのGM青バラもロンドンでお披露目され、09年に発売されれば世界に300億円規模の潜在的市場があるのではと話題をさらった。(GMOウオッチャー 宗谷 敏

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