ホーム >  FoodScience過去記事 > GMOワールド > 記事
こちらのページは以前、日経BP社 FoodScienceに掲載されていた記事になります。
当サイトから新規に投稿された記事については、こちらよりご覧ください。

GMOワールド|宗谷 敏

この国にGM商業栽培の未来はあるか?〜英国の場合

  • シェア
  • Check
  • このエントリーをはてなブックマークに追加
  • Share
2008年12月1日

 日本と同様にGM商業栽培が行われていない島国である英国だが、このところGMを巡る動きは激しいものがある。それらについては都度フォローしてきたので、過去記事などを参照して頂きたい。今回は、英国政府のGM推進政策を反映したメディアの論調変化が良く表れている「Farmers Guardian」紙の記事を読んでみる。GM上級読者には多少食い足りないかもしれないが、英国のGMに関する現状が多角的に考察されている。

http://www.farmersguardian.com/story.asp?sectioncode=24&storycode=22891

TITLE: Is there a future for GM in this country
SOURCE: Farmers Guardian, by Alistair Driver, Jack Davies and William Surman
DATE: Nov. 28, 2008

(以下抄訳)
 GM大論争の第1ラウンドは、懐疑論者の完勝に終わった。しかし、バイオテクノロジー産業は新世代GM製品で再挑戦を試みている。

 1950年代半ばの開発段階からGMは農業における論争の的であり続けた。植物の遺伝的形質を変える能力は、自然交配を凌ぐオーダーメイドの農作物を生産するツールを科学者に与えた。それは一部の人々から大きなブレークスルーとして歓迎される一方、ほかの人々からは行き過ぎた近代技術の危険なステップと見なされた。
<第一世代>
 最初の商用GM作物は、94年に栽培されたトマトだったが、GMが本当に前面に出て来たのは、GMトレイトを持つ農作物が166万haに栽培された96年からだ。これら第一世代GMは主要な雑草や害虫と戦うよう意図され、このフォーカスは農家収入を大いに引き上げてきた。

 最初に栽培された60%以上が除草剤耐性ダイズであった。残りは、除草剤耐性のトウモロコシ、ナタネおよびワタ並びに害虫抵抗性のトウモロコシおよびワタにより構成された。

 96年以来、世界的に栽培面積が毎年拡大し続け、07年には、1200万人の農家が1億1400万ha以上のGM作物を20カ国以上の諸国(原文の『世界のGM栽培面積』グラフ参照)で栽培した。これは英国の耕地面積の約28倍に相当する。

 今日のGM市場は、除草剤耐性と害虫抵抗性のトウモロコシ、ダイズ、ナタネおよびワタの様々な品種が独占する。最大の栽培国は5200万ha以上の米国であり、1800万haのアルゼンチンがこれに続く(原文の『国別GM栽培』グラフ参照)。

 インドは、07年には前年の380万haから63%増の620万haを栽培し最も成長が早いGM栽培国であるが、主に小規模農家がGMを栽培しており、GM栽培農家数では第3位に位置する。
<EUと英国の市場>
 一方、EUはこれまでこの技術に抵抗してきた。98年のEUモラトリアム以前に承認された米国Monsanto社のBtトウモロコシだけが唯一の域内栽培が可能なGM農作物である。スペインが最大の栽培国であるが、域内全体としてのGM栽培は低調なままだ。

 英国では、3年間にわたる政府による試験栽培の一環として、2000年に除草剤耐性品種のGMトウモロコシ、サトウダイコンおよびナタネが60カ所の国内圃場で栽培された。物議を醸したこの試験栽培は、GM農作物あるいはどちらかと言えば一緒に使用された農薬の生物多様性に対する影響を評価した。結果は入り混じったものだったが、それ以後規制上の障壁が導入され、公共の反対と併せて効果的にGM作物の商業栽培を効果的に妨げてきた。

 科学者が、今やこの技術は飛躍的に発展しつつあり、農家と社会にほとんど無限の可能性を提供する農作物を開発しうると告げる。

 第一世代は農家の利益をターゲットにしたが、将来のGM作物は同じく消費者に栄養的利益を提供し、途上国の食糧供給を引き上げるのに役立ち、さらに広範な環境保全上の利点も提供することができるだろう、と科学者が述べる。以下にいくつかの可能性を示す。
<2015年までに…>
*耐病性GMジャガイモ−独BASF社はケンブリッジシャー州の圃場で試験栽培を現在行なっており、商業化はまだだが、今日までの英国に最も適切なGM農作物だろう。

*干ばつ耐性−Monsanto社は、より少ない水分でも最適な成長条件を満たすように設計された農作物の4年目の野外試験栽培をすでに完了した。このような農作物は、農業での水の使用を減らすことができ、農業の環境影響を減じるのに役立つ。

*窒素使用の改善−農作物の窒素の使用効率を最大にするMonsanto社のこの技術は、肥料の必要量を減らすのに役立つだろう。

*オメガ3リッチ−最近米国では、健康を増進するオメガ3油脂を作り出すダイズの野外試験栽培が実施された。スーパー栄養食品が増やされるために、このプロセスのほかの農作物への展開が希望されている。
<2030年までに…>
*霜耐性−寒冷水域のサカナからの遺伝子を用いて、科学者が寒冷地で栽培できる農作物を設計しようとしている。これは世界の一部で栽培シーズンを延長することから、収穫量を引き上げることになる。

*一般環境ストレス耐性−気候変化に富む英国において、広範囲の環境ストレスから保護することは主要な進歩であり得るだろう。Newcastle大学分子生物学のChristine Foyer教授は「ストレスに対してより高い限界を持っている作物を作ることは可能です。それで干ばつ、霜あるいは洪水の期間であるかにかかわらず、作物の全体的なストレス反応を高めることは、それらが生き残ることを可能にするでしょう」と語る。

*がんと戦い健康を増進する食品−ある特定のがんに対する予防を提供する化合物を作り出す紫色のトマトが、 英国Rothamstead研究所で最近試験栽培された。より高いビタミンレベルと健康増進成分を産み出すための農作物を開発することは、巨大バイオテクノロジー企業の今や主要な研究テーマである。
<2030年の先には…>
*医薬生産−大いに注目を集めながら、初期段階に留まっている1つの領域が食用作物によるワクチンの開発である。医薬生産のために農作物を栽培することは可能であるかもしれない。
<これらのうちどれが英国に当てはまるだろうか?>
 近い将来、例えば、英国においてほかの国々で開発されたこれらの技術を使うことは可能であろうと科学者が言う。例えば、害虫抵抗性のコムギの市場が見いだされ、規制をクリアすれば生産されるかもしれない。英国の気候から害虫抵抗性作物は、農家にとって理想的だと科学者は信じている。

 Monsanto社と独Bayer社は、EUの輸入承認リスト上に除草剤耐性GMナタネを持っており、さらにBayer社はEUで認可されれば英国で栽培できる除草剤耐性GMサトウダイコンを持っている。しかし、それらの少数の作物を除いては、英国で栽培できるものがほとんどないので、多くの農家がGMの価値を疑問視する状態に留め置かれている。科学者は、より多くの作物が将来英国の農家に提供されるであろうことを指摘することに熱心だ。

 しかし、英国の最大の問題は、農家が直面する特定の問題を処理するよう適応させられた米国と南米から「すでに10年遅れてしまったことです」とNFU(全国農民連合) のHelen Ferrier主席科学アドバイザーは指摘する。トウモロコシ、ワタやダイズのような現在のGM作物の大部分が英国では栽培されていない。

 「開発企業が、英国で栽培者に有用な作物に投資することを決める必要があります。作物開発には多くの費用がかかります。そして試験栽培が反GMの活動家によって破壊され、政府と食品販売業者からほとんど肯定的なシグナルが得られないとき、多くの企業が投資することを思いとどまります。かれらは明確な市場のある国へ投資するのであり、現在のところそれは英国ではありません」とFerrier女史は続ける。
<克服すべき障害>
 産業は、GMが達成することができることの「潮目の変化だけ」ではなく、GM製品が英国で上市される前に、科学者が反GMのロビーから確固とした反対を克服しなければならないだろうとFoyer教授は述べた。

 土壌協会のPeter Melchett政策担当理事のような中傷者は、この技術が「予測不可能」であり、科学の大きな進歩にもかかわらず、ゲノムが働く方法については非常にわずかしか理解されていないので、食品にGMを使うのはリスクが大き過ぎると言う。

 遺伝子と遺伝子のグループの間の関係は非常に込み入っているので、干ばつ耐性や窒素固定のような複雑な特徴を遺伝子工学が達成することは「ほとんどありそうもない」と、彼は主張する。

 Greenpeace International科学政策部門のJanet Cotter博士も「GMは外部からの遺伝子を導入しており、それは従来の育種で使われた確実に制御されたネットワークの外にあります。したがってそれは完全に予測できません」と言っている。
(以上記事抄訳終わり)

 典型的な両論併記ではあるが、長年GM報道をフォローしてきた筆者には面白い発見がある。最近の論調に顕著なことだが、同じ一般紙の両論併記でもポジとネガの位置付けが一昔前とは完全に逆転しているのだ。以前は最後に付け足されたのは「(それでも)世界の食糧危機解決に貢献する可能性もあると一部からは期待されている」といったように、きまってポジの方であった。(GMOウオッチャー 宗谷 敏)

⇒ GMOワールド記事一覧へ

専門家コラム一覧

FoodScience 過去記事

以前、他のサイトで掲載されていた記事をこちらより選択してご覧いただけます。

お知らせ

FOOCOM会員、執筆者がかかわる催し、講演(10/17)
<FOOCOM事務局よりのお願い> 「FOOCOM.NET」にアクセスいただきありがとうございます。私たちは201…【全文を読む】
FOOCOM.NET 会員募集 科学的根拠に基づく食情報を消費者に提供するために、ご協力ください。