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斎藤くんの残留農薬分析|斎藤 勲

主食のおコメの農薬残留は大丈夫?

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2005年11月24日

 今年のお米の作況指数は101と若干、予想収量を上回り全国的には豊作であった。特に北海道では109とたくさんのお米が獲れた。しかし、集荷円滑化対策として9万tがお蔵入りになるという。豊作とばかり喜んでいられない日本の厳しい現状である。日本では25万t位の殺虫剤、殺菌剤、除草剤などが使用されており、その半分弱が米作りに使用されている。それでは日本のお米は農薬だらけなのか?話はそう単純ではない。

 まずは、岩手県農業研究センターのホームページをご参照いただきたい。こちらでは、いろいろな業務・研究成果を紹介している。例えば、2002年の生産環境部環境保全研究室の試験研究成果では、「岩手県の防除体系における米の農薬残留」を見ることができる。種をまき苗を育て、田植えをしてイネとなり、実がついて大きくなり収穫されるまでのコメの生産過程と農薬の防除体系の関係が図で表してあり、良く理解でき、とても参考になる研究成果である。

 葉イモチ、初期害虫剤4種類を育苗箱で施用、除草剤2種施用、穂イモチ剤2種類、カメムシ防除剤2種類が施用された。9月末から10月にかけて収穫した玄米の残留農薬分析を行ったところ、5月に育苗箱に施用した農薬は検出せず、5月に散布した除草剤検出せず、6月、8月初めに散布した穂イモチ防除剤(水面施用)検出せず、8月後半に散布した穂イモチ防除剤(茎葉散布)は検出せず〜残留基準の10分の1以下の検出、8月後半から9月初めに散布したカメムシ防除剤は検出せず〜残留基準の5分の1程度検出であった。

 収穫2カ月前以前に使用した農薬は残留しておらず、8月後半からの散布では散布時期が遅くなるにつれて残留濃度は高くなる傾向が見られたが、いずれも残留基準よりかなり小さい残留値であった。要するに、普通に農薬が使用されていると玄米に残る農薬は遅い散布時期のものが残留基準地未満で残るが、思ったほどの残留ではないということだ。さらに、大抵の人は玄米を精米し、米とぎし、炊飯して食べている。

 我々の実験でも、殺菌剤、殺虫剤とも精米すると大体3分の1、米とぎすると3分の1と玄米の10分の1くらいになってしまう。多くの玄米ではもともとの残留量が少ないので精米、米とぎすると検査できないくらいの量になってしまう。炊飯で更に減る農薬もある。

 雑賀技術研究所の佐藤らの研究(食品衛生学雑誌44巻7頁2003年)によれば、田を借りて自分たちで育てたイネでの残留実験で同様の結果を得ている。刈り取った籾には農薬は残留している(実験のため多めに散布しているためもある)が、籾殻を取ると10分の1以下になってしまい、精米では同様の現象となっている。また、最近人気の無洗米は表皮部に残るヌカを取っているので、精米の残留の半分程度に減少している。

 以上述べてきたように、稲作においては日本で使用される農薬の半分を使用するが、食べるコメには農薬は意外と残らないのである。これが日本の現状であり、多くの人に理解していただきたい事実である。コメの生産における農薬の環境負荷の問題や暴露の問題などは別の機会に述べたい。

 消費者がコメを安心して食べることができるよう、玄米で食する人のための玄米の検査、結果のきめ細かい情報提供、収穫前2カ月くらいは農薬は控える(天候にもよるが)生産など、目に見える形の農薬が残らないコメの提供の工夫が必要である。残留農薬がまったく気にならない人から気になる人まで、いろいろな消費者が自分の考え、立場で好きなものを選んで買える選択肢を複数提案することが、消費者の安心を醸成する近道であり正道である。(東海コープ事業連合商品安全検査センター長 斎藤勲)

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