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斎藤くんの残留農薬分析|斎藤 勲

冷凍ホウレンソウからクロルピリホスが残留基準の2倍出た

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2005年12月8日

 2002年の頃中国産冷凍ホウレンソウ、残留農薬、違反、輸入規制などの言葉が新聞紙上をにぎわした。こういった事件を契機として、食品衛生法の農薬残留基準も公平な規制を課すポジティブリスト制度に移行することとなった。ホウレンソウのクロルピリホスの基準は、奇しくも一律基準と同じ0.01ppmで、2倍の違反は0.02ppmである。通常の検査の検出限界は0.01ppmくらいを用いており、0.01ppmはかなり厳しい数字であり、0.01と0.02は時にはほぼ同じ値の場合もあり悩む数字である。

 11月22日のFOOD・SCIENCE「傍聴友の会」の記事に、ポジティブリスト制度の暫定基準設定農薬等は759であり、分析法が整備されたのは529農薬等で改正法の施行までにはすべての分析法を設定するのは「困難な見込み」で、引き続き努力するとあった。率にすると7割の農薬等に検証された分析法が出来たということだ。以前は6割しか出来ていないといっていたので1割程度進歩した。でも、3割の農薬等にまともな分析法がなくて大丈夫?という意見もあろう。

 しかし、800種類位の農薬などは世界中で均一に使われているわけではない。力のある新人は発売当初から売れ行きを伸ばし、ベテランは実績のあるものだけが生き残っていける実力社会であり、売り上げの伸びないものや評判の悪いものは再登録の際引退となる。当然使用されるものも限られてくるし、実際に食品に残留する農薬などもそういったものが中心となるし、使用される時期が収穫までの期間の前半だとほとんど残留は見られない。

 9月8日のこのコラムでも触れたが、現在検出されている農薬(動物用医薬品を含まない)の総数は、日本を含め世界的に見ても100種類くらいから170種類くらいではないだろうか。新規農薬を除けばそれほどもこれから数が劇的に増えていくとは思われない。分析法が整備されたのは529でも素晴らしい数字ではないだろうか。かく言う私も去年まで分析法の開発作業に参加させてもらっていた。私から見ると、みんな良く頑張ってやってくれているなあと思えてしまう。

 「農薬」という漢字2文字は、ある面では有機化合物全体を指しているような言葉である。水に簡単に溶けてしまうものから水にはまったく溶けず有機溶媒にしか溶かないもの、酸性物質から塩基性(アルカリ性)物質、分子量の大きいものから小さいものまで種種雑多の化合物の総称である。

 それを多成分一斉分析という分析法で多くの農薬をこなそうというのだから土台無理を承知の分析法が主となる。簡単に測るということは、食品成分がまだ十分分離精製してない状態で測定するということだ。当然妨害も多くなり分析機器の汚れ、定量精度の低下も多くなる。そんな状況の中で分析担当者はそれぞれの検体について適切な検査結果を出そうと手間隙をかけて日夜苦労するのである。

 検出限界付近での検出は当然対象とする農薬のシグナル情報も小さいので夾雑物の中で、どう読み取るのかの判断には苦労する。最初に述べたホウレンソウのクロルピリホスなどは実際には0.01ppmよりはもっと下まで読むことは可能な場合が多いので(設備、機器にもよる)、0.02ppmは何とか0.01ppmと区別して出せるであろうが、家庭菜園などでもよく使われるアセフェート(商品名オルトラン)などはシグナル情報が悪く、ルーチン分析ではこの辺りの数字はなかなかというかかなり厳しい。

 そうやって得られた検査結果は数字で報告される。法改正で基準値の数字は有効数字一桁となった。数字の出し方はそのひとつ下の桁の数字を四捨五入して数字を丸めるのである。0.014ppmまでは0.01ppmとなり、0.015ppmから0.024ppmまでが0.02ppmとなる。背後にその程度の幅を持った数字であり、初めに書いた「0.01と0.02はほぼ同じ値の場合もある」という意味もお分かりいただけたであろう。

 微量な数値は3倍以上違わなければほぼ同じ程度と思っていただいたほうが全体的な感覚としては正しいのではないだろうか。分析法のばらつきのほかにも、サンプルのばらつき(どれ程背後の母集団を代表しているか)があるものも当然あるのだから。

 PS.今回のポジティブリスト制度の導入に当たってはお悩みの方も多いと思われます。来週12月15日(木)さいたま市民会館おおみやで、日本農薬学会による「残留農薬分析セミナー2005」が開催されます。ポジティブリスト制度にかかわる残留農薬分析法の概要、問題点や現在進んでいるポジティブリスト対応分析法の現況、それに対応していく各分析機器メーカーや固相抽出法の紹介など盛りだくさんの内容で開催されますので、ご参加ください。詳しくは、日本農薬学会ホームページをご覧ください。(東海コープ事業連合商品安全検査センター長 斎藤勲)

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