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斎藤くんの残留農薬分析|斎藤 勲

ドリフト対策で今こそ“農薬”の汚名返上を

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2006年2月2日

 今年5月29日からのポジティブリスト制度の施行が視野に入ってきたせいもあり、農水省も農薬の飛散(ドリフト)による周辺作物への影響防止対策を、指導機関や農業関連団体に通知した。できたら、事前連絡は2003年の消費安全局長通知のように、栽培者だけでなく周辺住民にも知らせてもらえばもっとよいのだが‥‥。

 通知には、周辺の栽培者に事前連絡、最小限の散布、風が少ない日の選択、ドリフトが起こりにくい農薬選択、収穫日時の変更、圃(ほ)場の被膜などが挙がっている。また、総合的病害虫管理IPMの導入も勧めている。

 「地上対策 ドリフト対策マニュアル/マニュアル編集委員会編」という小冊子(47ページ)が、日本植物防疫協会から05年12に発行された。1年半の調査検討であるが、写真や図が多く、編集の素人である私が見ても、面白く理解しやすい。ドリフト対策の基本は適正な散布を行うことであり、本書をよく読んでドリフトを正しく理解しその適切な低減対策を図ることを勧めている。

 例えば、ブームスプレヤーのノズルの改良において、従来の慣行ノズルでは農薬の平均粒子径が100μm以下でノズル周辺・上部に霧状に漂っていたのが、ノズルの改良で粒子径を2倍から3倍大きくした。写真でも見るからに、散布された農薬は作物に効果的にかかっていることが分かる。このお陰でドリフトによる飛散量も、約7分の1に減らせるという。

 ドリフトを減らすことも大切だが、「見るからに」というところが、農薬使用と関係ない人から見てとても重要になる。健康影響があると不安視される暴露が「見るからに」少なくなるからである。このノズルで無人ヘリコプターの空中散布も、ドリフトが減らせたら素晴らしいことだが。

 農薬散布の中では空散と並んで評判悪いのが、リンゴやナシの防除で使われるスピードスプレーヤー(略してSS)である。風下への到達限界は50m以上といわれ、ドリフト対策上一番問題となる。果樹園の中でSSで農薬散布している写真は、いかにも「これだから農薬は健康に悪いのよ」と周辺住民や消費者の農薬不安を助長させる一助となっている。

 このSSにはドリフト対策として、農薬の噴出ノズルの上から可動式の板で覆う風向き遮断板が考案されており、農薬をかけたくない方向にはこの板で覆ってその方向に農薬が飛ばないようにする装置である。いたって簡単な仕組みであるが、写真を見る限り、かなり効率的な散布ができている。また、近接農園との間の防風ネットも有効らしい。本当はブドウ棚くらいの高さのリンゴやナシの木があれば散布作業ももっと効率的になるかもしれないが。

 そのほか、農薬の剤形によっても残留濃度の減少が異なる。粒剤や除草剤の散布はドリフトは少なく、粉剤、殺菌剤・殺虫剤の茎葉散布は細かい散布粒子を用いるのでドリフトがおきやすいとか、コマツナ、チンゲンサイ、シュンギクなど、軽量・小型の葉菜類では残留リスクは高いなどだ。

 しかし、ドリフトによる残留のデータを見ていると、一律基準0.01ppmという値は相当厳しいものであることが理解できる。従来、生産現場ではより効率的な散布方法、剤形の研究がなされてきたが、いわゆるドリフトに対する対策の研究は遅れていた。近接住民との間でいろいろとトラブルもあり、03年9月に消費安全先の局長通知で、農薬の飛散により人畜に危害を及ぼす恐れがあるとして、注意深い農薬散布、近隣住民への周知徹底に努めることとした。とはいえ、現実にはそれほど効果が上がってはいないであろう。

 今回の一律基準設定に伴うドリフト低減対策が急務となり、生産現場は混乱しながらも、いろいろな改良が具体的に進んでいる。こういう状況(生産者が一生懸命飛散防止で努力している)があってこそ、初めて近隣住民への農薬散布への説明や理解が少しでも進むのではないか。「農薬」の名前のイメージを悪くしているかなりの部分は、この散布による農薬飛散である。(東海コープ事業連合商品安全検査センター長 斎藤勲)

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