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斎藤くんの残留農薬分析|斎藤 勲

ドイツ産イチゴの残留農薬に注目!

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2006年3月2日

 今年5月21日から25日、ギリシャのコルフ島で第6回(2006)欧州農薬残留ワークショップが開催される。コルフ島は別名ケルキラ島、首都アテネから飛行機で西北に1時間ほど飛んだところにある風光明媚な国際的リゾート地だ。日本からも農薬残留分析関係者が10名以上が参加する予定である。

 これは2年おきに開催されるもので、2004年のストックホルムに続いて今回は、ギリシャのChaido Lentza-Rizos女史が世話人(Chairman)だ。日本の農薬関係者にとってポジティブリスト制度実施目前のワークショップは、貴重な海外情報が入手できるまたとない機会である。絶対得することはあっても損はしない。我と思わん方は今からでも遅くない。ぜひご参加いただきたい。

 ヨーロッパの学会は面白い。南北アメリカから、東欧から、ロシアから、アフリカから、オセアニアから、アジアから研究者がやって来る。いわゆるインターナショナルである。またEUはさまざまな国から構成されている。

 農薬問題では南北問題が存在する。スペイン、イタリアといった南の農業生産国とスウェーデンなどの北の消費国の基準規制に対する考え方は当然異なっており、いつも議論になっている。しかし、EUとしての統一基準が設定される中、一時的にはコショウの約6割が違反となり農業として成り立たない事態も発生していた。

 このワークショップの面白いのは分析法の発表もさることながら、いろんな国の農薬残留モニタリングの報告が数多くあり、各国の実情をつかむにはとても参考になる点だ。こういった情報はなかなか学会誌には載ってこないので入手できない。結果として各国の状況が分からない。

 また、日本の自分たちがやっていることがどのレベルなのかを知ることができることもよい。結論的には日本はかなり優れていると思うし、分析方法のいろいろな組み立て方も勉強できる。

 96年に第1回がオランダのアルクマールで開催された時、学会でダイコンなどアブラナ科の野菜の硫黄化合物などによる妨害をどう取り除くかという議論があった。日本では既に凍結リン酸方式など対処方法ができ上がっていたが、まだまだヨーロッパまではきちんと伝わっていないのだと思った。その際、今回世話人のDr.Lentza-Rizoに日本の文献を送った記憶がある。

 分析法ではQuEChERS法(Quick,Easy,Cheap,Effective,Rugged,Safeの頭文字)と言う非常に簡便な抽出精製法がある。この方法は03年に学術雑誌に報告され注目された。だからといってみんなに使われるかどうかは別問題である。日常業務は数多くの検体をこなし精度の高い検査結果が求められている。論文は新規性、独自性が要求され審査されるが、実際のところ現場でルーチン業務に持ち込んでどれ程耐えられるかは別問題なのである。

 消えていった論文は多いのだ。しかし、このQuEChERS法は部分的には問題も含んでいるものの、前回のワークショップでも3、4カ所のラボが利用して報告していたので、それなりの利用度はあるのだと判断できる。

 各国のモニタリングデータを見直していて面白いと思ったのは、ドイツの公的機関の1998-2002年までのモニタリングデータ発表である。年間約6000検体の検査を行い、残留農薬が検出されるのは最近では約半分くらい、基準値超過は01年3.6%、02年度は8.7%であった。

 このデータの中で興味を持ったのは、イチゴの検出農薬で基準値超過(7.8%)農薬の約27%がBupirimateであった。普通は知らないピリミジン系殺菌剤である。国内登録はなく、ドイツでは登録がある農薬で今回の暫定基準ではキュウリなどに1ppm、リンゴ0.8、ナシ0.5ppmなどの基準があるが、イチゴにはない。

 ということはイチゴは一律基準が適用されることになる。イチゴを使ったドイツの加工食品は気をつけようということになる。検疫所のモニタリング200項目にはちゃんと入っている。モニタリングデータは暇なときに目を通すといろいろなことを教えてくれる大切なものである。(東海コープ事業連合商品安全検査センター長 斎藤勲)

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