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斎藤くんの残留農薬分析|斎藤 勲

ポジティブリスト制は私たちに何を与えてくれるのか

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2006年3月16日

 3月1日と8日のFOOD・SCIENCEで、松永和紀さんがポジティブリスト制度施行が近づくにつれて発生しているトラブルを報告している。納入先への緊急な検査結果の提出、適合の保証書提出など途方にくれるような要求もあるとか。もう一度ポジティブリスト制度における残留農薬分析の意味を考えてみたい。じっくりと皆で。

 残留基準が設定されていない農薬、動物用医薬品および試料添加物が一定量を超えて残留する食品の流通を原則禁止(英語版では原則という副詞が入っていない)する制度(ポジティブリスト制度)が今年5月29日から施行される。従来は農薬が生産現場で使用された場合、そこで取れた作物にこのレベルまでの残留は良いですよという規則であった。

 現在580農薬に基準が決められているが、1991年までは26の農薬に基準があるだけで、国内で使用される農薬の大半は食品衛生法の基準はなかった。農薬登録時に設定される登録保留基準という農薬を適正使用した場合の残留許容量が決められており、1つの目安となっていた。

 しかし、基準値が決められていない農薬が検出された場合、実際のところ「困ったもんだねえ」といった感じであった。ただし、国内でその農薬を使ってもよい作物(農薬の瓶のラベルに書いてある作物)でない場合は農薬取締法違反となったが、国外での使用は法律の範囲外である。

 以前にも書いたが、80年頃米国やオーストラリアから輸入される玄麦に有機リン剤マラチオン、フェニトロチオンが通常の残留濃度と比較すると、高い濃度で残留するサンプルがあった。収穫後の保管や輸送時に使用されるいわゆるポストハーベスト農薬の残留である。

 しかし、当時はポストハーベスト農薬使用の概念はなく当然基準値も設定されていなかった。故に指をくわえて見ているしかない。そして国際的ハーモナイゼーションから外国の残留基準が準用され基準値となった。通常の作物残留試験のデータから作成されるほかの作物の残留基準と比べると、明らかに高い濃度が基準値として設定された。

 それぞれの作物の1日平均摂取量と残留基準からその農薬のADI(1日摂取許容量)と比較してもADIを超えない値となってはいるが、実情を知らないものから見ればなんとなく「ずるい、ずるい」という感じだ。

 また、75年米国産輸入レモンからポストハーベスト農薬o-フェニルフェノール(OPP)が検出され、その取り扱いで紛糾した。収穫後の使用であるから食品添加物という認識となり、許可されていない食品添加物は使用してはいけない(ポジティブリスト)ということで廃棄された。

 米国では環境保護局(EPA)が決めるCFR40という基準集のparts150 to 189農薬基準には、柑橘類にOPP、チアベンダゾール(TBZ)はPOST- Hとしての使用が認められている。日本では、収穫(ハーベスト)後(ポスト)に使用する農薬を食品添加物という概念で77年、78年に認可処理された。

 甘味料、着色料、保存料などと同じ基準欄に防カビ剤としてちょこんと座っているのだ。みにくいアヒルの子みたいだ。しかし、今回のポジティブリスト制度に伴う暫定基準設定ではOPP、TBZに農薬としての暫定基準がきちんとというか、ちゃっかり設定されている。

 ポジティブリスト制度で運用されている食品添加物は、使用基準として使用量または残存量を決めている。使用した添加物を表示していない食品は表示違反となる。ただし、しょう油に使用された保存料安息香酸が佃煮などから検出された場合、微量でその効果を発揮しないような量の残存ならば表示をキャリーオーバーとして免除される。即ち表示違反にはならない仕組みもある。

 そもそもADIが設定できないような化合物は論外であるが、通常の農薬のようにADI(毒性評価、摂取量の安全性比較が出来る)が設定されている化合物の残留の場合は、一律基準0.01ppmを超えて検出された場合、その理由(不適切な使用、ドリフト、土壌残留など)とADIを用いて判断するのが正道であろう。

 ポジティブリスト制度は、決められた農薬を決められた作物に適正に使用するために設定された法律と思っている。その適正に使用された状況を適時サンプリングして検査し、残留濃度から使用状況を評価する。その結果を現場に報告し問題点があれば改善する、それが本来のモニタリングである。あまりにも頻度の低い使わない農薬探しというか、重箱の隅の米粒の4粒、6粒のような論議とか検査要請が多すぎるのではないかと思っている。(東海コープ事業連合商品安全検査センター長 斎藤勲)

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