ホーム >  FoodScience過去記事 > 斎藤くんの残留農薬分析 > 記事
こちらのページは以前、日経BP社 FoodScienceに掲載されていた記事になります。
当サイトから新規に投稿された記事については、こちらよりご覧ください。

斎藤くんの残留農薬分析|斎藤 勲

食品衛生法の検査は可食部でやろう

  • シェア
  • Check
  • このエントリーをはてなブックマークに追加
  • Share
2006年7月13日

 食品衛生法は、「飲食に起因する衛生上の危害の発生を防止し、もって国民の健康の保護を図ることを目的」として作られた法律である。ならば残留農薬分析は、もっと飲食=食べるに重きを置いた分析部位のサンプリングにしてほしい。前回に続き、残留分析の際の分析部位、ミカンは皮をむくけどバナナは皮ごとに検査をすることについて再考したい。

 要するに分かりやすく「可食部」=食べるところを検査しませんか、ということである。現在、ミカン、モモ、ビワ、キウィ、スイカ、メロン、ギンナン、栗、タマネギ、ネギ、トウモロコシなどが皮(外果皮、果皮、外皮)をむいて検査している。それを基本に考えてみよう。

1)オレンジ、グレープフルーツ、ポンカン、イヨカンなどの柑橘類は皮をむいて検査する。マーマレードを想定する場合は外果皮の基準を作る
2)レモンはそのままスライスなどで食べるので果実全体
3)バナナは当然皮をむいて検査する。検疫所で緑のバナナを検査する時は皮をむけないので全体で分析しても良い
4)ナシ、カキは皮をむいて検査。リンゴも皮をむいて食べることが多いのでそれで検査。しかし、丸かじりもあって議論の余地あり
5)パイナップルも全体ではなく食べる果肉の部分を検査する
6)葉菜類はほぼ従来通りの可食部
7)抹茶以外のお茶は従来通り煎じて飲む形で調製する。最近の健康志向で食べるお茶は抹茶と同じ分類
8)玄麦、玄米は精米した時の加工係数を示しておく。または白米、精麦で検査する
9)分析部位としなかったところが、食べられる場合はその基準を追加する

 このように分析部位を食べ方で整理して、消費者の食べる視点から残留農薬の濃度を見ていく必要がある。きっとこの方が、消費者には数値を身近に感じられるはずだ。身近に感じられるということは理解できる可能性が高いということである。要は、一般的な食べ方の場合の基準を設定し、特殊・一部の場合は別途基準を設定する考え方を示してほしい。

 当然のことながら、従来の農産物としての残留基準は加工係数などを加味した数値(オレンジとミカンの残留基準を見てみると参考になる。ミカンの方が基準値が数分の1から10分の1厳しい農薬がある)に変更する必要はある。通常の適正な散布方法での農産物の作物残留試験の結果+加工係数を加味した数値である。この数値に対して基準を超えたのならADI(毎日その量ならば食べていても大丈夫ではないでしょうかという量)と比較検証する上でもよく理解できる。

 どうしても、海外基準と分析部位が合わない場合は、検疫所は農産物に近い形で世界の共通基準に従って検査してもよい。国内での検査は食べる者の視点から行えばよい。

 このように実態に即した変更が可能ならばついでに、可食部を検査した結果が一律基準(原則0.01ppm)を超えた場合は、検出された濃度(0.03ppmとか0.05ppmとか)とその食品を通常で最も食べると思われる食品の量(シソの葉なら1日4、5枚)を掛け合わせた量(実際に私たちが食べる量)が「許容される摂取量の目安の1日1.5μg」と比較して判定してほしいのだが。

 さて、第11回IUPAC国際農薬化学会議が8月6日から11日まで神戸国際会議場で開催される。前回2002年にスイス・バーゼルで開催されてから4年ぶりである。農薬というよりも作物保護、植物防御の総会といったほうがよいかもしれない。このコラムを読んで興味をもたれた方は、日本農薬学会のホームページを一度見ていただきたい。

 農薬分析に関してはセッション13で環境化学・残留分析が一番身近な話題かもしれない。LC/MS/MSの応用、残留分析の概要・問題点、MALDI-TOF/MSによる環境動態分析、QuEChERs法による迅速多成分分析、土壌中Bt蛋白分析などが発表される。ほかのセッションでも分析に関する発表はあるが、ポスター発表では多くの分析関連の発表もあるので期待されたい。ちなみに私はセッション13のオーガナイザーを拝命しているが、何も準備してないのでだんだん精神的には追い込まれてきた。

 また、学会中の8月7日には農薬残留分析セミナー2006が会場隣のポートピアホテルで開催される。こちらはすべて日本語なので、ご安心あれ。内容としては「精度高い分析をするために」というタイトルで残留農薬に関する行政的背景、分析捜査の要点、ポジティブリスト制度に伴う分析法、その課題、精度管理などが4名のベテランによって紹介される。

 本セミナー参加者は、当日の分析機器、試薬メーカーが参加する展示とポスター会場(世界各国からの残留分析技術紹介あり)を、国際会議に参加しなくても見ることができる。忙しい毎日の業務の中、なかなか時間は取れないが、現状、今後を見据えてどうあるべきかを考えるよい機会になると思われるのでぜひご参加いただきたい。(東海コープ事業連合商品安全検査センター長 斎藤勲)

⇒ 斎藤くんの残留農薬分析記事一覧へ

専門家コラム一覧

FoodScience 過去記事

以前、他のサイトで掲載されていた記事をこちらより選択してご覧いただけます。

お知らせ

FOOCOMが「第1回食生活ジャーナリスト大賞」を頂くことに決まりました(3/28)
FOOCOMはこのほど、食生活ジャーナリストの会(JFJ)の「第1回食生活ジャーナリスト大賞(ジャーナリズム部門)」…【全文を読む】
FOOCOM.NET 会員募集 科学的根拠に基づく食情報を消費者に提供するために、ご協力ください。