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斎藤くんの残留農薬分析|斎藤 勲

欧州で注目の多成分一斉分析法QuEChERS法

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2006年8月31日

 8月6日から11日まで、神戸で開催された第11回IUPAC国際農薬化学会議は、盛会のうちに終了した。関係者の努力の賜物と思われるが、何はともあれ終わってほっとしている。この会議に多くの外国の関連研究者が集ったが、その中に多成分一斉分析法QuEChERS(Quick早い、Easy簡単、Cheap安い、Effective効果的、Ruggedしっかりした、Safe安全な、をミックスした合成語)法を開発したMichelangelo Anastassiades博士(写真)がいた。

 黒髪を後ろで束ねた37歳、先月子供が生まれたばかりの若いキプロス生まれのドイツ国籍を持つ残留農薬分析の研究者である。

 QuEChERS法という名前を初めて聞いたのは、2002年ローマで開催された第4回欧州農薬残留ワークショップでの発表であった。口頭発表で、Michelangeloさんの共同研究のボスであるUSDA(米国農務省)の研究機関のS.J.Lehotay博士(外見は若い)が発表した。彼は精力的に残留分析の開発を行っている研究者で、多くの発表があり、その仕事の1つとして聞いていた。

 方法は、10gのサンプルに10mLのアセトニトリル、5gの硫酸マグネシウム、1gの食塩を入れ、振とう抽出する。遠心分離後上層のアセトニトリル層の1mLを取り、そこに25mgPSA塩基性固相吸着剤と150mgの硫酸マグネシウムを入れて振とう(バッチ法)、遠心分離。上澄みをバイアル瓶にいれて、GC/MSで分析する。6サンプル同時に20分で出来、費用は1サンプル当たり1ドルというものであった。めちゃくちゃ早い。

 この方法で行うと、従来は極性が高く抽出しにくかったアセフェート(オルトラン)やメタミドホス、オメトエーとイマザリル、チアベンダゾールも、良好な回収率で分析可能との報告だった。その時の正直な感想は「本当かなあ?そんなに簡単にうまくいくの?」というものであった。後は、ローマやイタリアの多くの思い出の中に消えてしまった。

 しかし、翌03年、残留分析などの研究が多い米国の雑誌J.AOAC Int.の86巻2号412−431にMichelangeloさんがトップネームのA4で20ページというQuEChERS法の長い論文を発表された。これはじっくりと読んだ。感想としては面白い。硫酸マグネシウムの添加が面白い。やってみよう。

 操作は溶媒をとばす濃縮行程がなく、確かに至って簡単であるが、通常の分析で用いている機器のGC、GC/MSへ注入すると、汚れを十分除去してない面もあり、注入口部分・カラムの先端の汚れが早い感じがする。ちょっと変更しないと使えないなあという印象を持った。

 この報文を受けて、国内でも色々な人が追試、または一部変更して使い始めた。

 04年第5回欧州農薬残留ワークショップがストックホルムで開催された。その時はMichelangeloさんの口頭発表もあり、ポスター発表も4、5題あった。この方法の特徴は、抽出に使うプラスチック容器、通常の遠心分離機、PSAで精製するときのプラスチック試験管、溶媒の濃縮操作なしという至ってシンプルな検査方法であり、欧州では結構普及しつつあるという印象を受けた。

 06年のギリシャで開催された第6回のワークショップでも一般的な方法として発表されていたと聞いている。精度管理検査結果も良好なので、結構使われるであろう。

 現在は改良法が発表されており、参考になる。サンプルをドライアイスを入れて粉砕すると、サラサラになり、酵素で壊れるものも阻止できる。その10gを計り、10mLアセトニトリル、内標物質(精度を増すため)を加え、硫酸マグネシウム4g、食塩1g、クエン酸三Na1g、クエン酸ニNa0.5g(クエン酸緩衝液でpHを5-5.5に調節)を加え振とう、遠心分離、脂肪分があるものは、アセトニトリル層をフリーザーで保存、脂肪を析出させた後、精製はPSAまたは活性炭で精製を行う。ものによっては逆相系固体も使用される。

 QuEChERS法は、そのまま持ち込むとラボによっては分析機器の汚れで困るところもあるだろう。最初は大々的に始めないで、少しずつ農薬やサンプルの種類を広げながらそれぞれの立場に合うように改良していくと、QuEChERS法の良さが生きてくるであろう。Michelangeloさんも本望だろう。詳細はwww.quechers.com を参照されたい。(東海コープ事業連合商品安全検査センター長 斎藤勲)

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