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斎藤くんの残留農薬分析|斎藤 勲

コエンザイムQ10の30mgと300mg

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2006年12月14日

 コエンザイムQ10(以下CoQ10)は、「いわゆる健康食品」として今人気のサプリメント成分である。人の体内でも合成される成分であるが、年とともに減っていき、80歳くらいになると肺や心臓では20歳の時の半分くらいの量になってしまうと言われると、ついつい飲みたくなる。しかし、2006年6月に食品安全委員会の審査で「摂取量の上限値設定は困難」との見解を示した際、色々な報道があった。ペーパーファーマシスト(薬剤師免許のみ)としてCoQ10は少々気になる部分もある。

 CoQ10は57年、牛の心臓ミトコンドリアから脂溶性物質として単離された。ユビキノンとも呼ばれて、医薬品としての名前はユビデカレノンである。細胞の中のミドコンドリア内に多く、電子伝達系に関与する補酵素としてエネルギー産生に貢献している。Q10の10は、キノン骨格にイソプレン10個の側鎖がついた構造に由来する。

 73年に日本ではうっ血性心不全治療薬として医療用医薬品として認可され、91年にはOTC薬(一般市販薬)として販売が開始。01年には食薬区分の見直しにより健康食品(サプリメント)として市場に流通している。CoQ10は、体内では抗酸化作用、免疫機能強化、美肌効果などが知られており、まさにサプリメントまたは化粧品の成分として、最適なものとなっている。市場規模としては06年度は200億円程度で、毎年伸びている。

 厚生労働省は03年11月に日本健康・栄養食品協会に安全性の確保、消費者への適切な情報提供のための規格基準設定検討を依頼し、協会は1日摂取目安量の上限値を300mg以下に設定したいという中間報告を厚生労働省に提出した。それを受けて05年8月食品安全衛生委員会に食品健康影響評価を依頼したのだ。

 06年8月食品安全委員会での審議の結果、安全な摂取上限量を決めるにはデータ不足で、困難であるとの結論が出された。厚生労働省は、事業者の責任で用量を考慮した長期での安全性確認、消費者への注意事項の提供、被害事例(従来は胃腸痛、嘔吐、下痢などの報告あり)の収集などの指導の徹底を指示している。

 薬事法に規制される医薬品としては、CoQ10はユビデカレン製剤として、虚血心筋での酸素利用効率の改善の効能から、基礎治療施行中の軽度および中等度のうっ血性心不全症状に適応が認められている。用量としては、1回10mg、1日3回で合計30mgとなっており、この30mgが今回の物議の大元である。薬の値段としては保健薬価は10mg1錠21.9円、ジェネリック医薬品だと6.4円位である(余談だがやはりジェネリックは安いねと言う感じ)。

 30mg/日の摂取での副作用としては、承認前後の調査期間における総症例数5350例中1.46%に胃部不快感、食欲不振、吐き気、下痢、発疹などの報告がある。サプリメントとして1日60mg、100mgを飲んだ時の健康被害の問い合わせ状況では、因果関係は未確認だが下痢、胃部不快感などの健康被害発生率は0.034%という。医薬品との調査とは少し違うので単純に比較は出来ないが、それほど色々な副作用が出るものではないことは推測される。

 食品安全委員会の報告を見ていて面白いと思ったことは、「当該食品の評価に当たって」(食品である!)の項で、当たり前ではあるが「食品としての安全性評価」という視点で見られている。確かに血流量の増加や代謝改善のデータなど見ていると、効くかなとは思われる。しかし、データは全体的に健常者を対象に行った投与実験で、投与期間が短いものが多い、6年間飲ませた時の効果の部分でも心筋症患者に有効であった事例、高用量群でのパーキンソン病の症状改善事例など、医薬品ならともかくCoQ10を「食品として」長期接収する影響を検討するには適切な資料ではないと判断されてしまった。

 CoQ10の製剤により従来の脂溶性物質から乳化剤の添加などにより吸収率が2倍程度上昇するものもあり、当然体内動態も変わってくるので、物質としてではなく個別の製品で評価する必要があるとも判断された。データがないわけではない、「食品として」使用する場合のデータが不足して判断できないと言っているのだ。

 食品という性格を配慮し、かつ摂取上限目安量が判断できるCoQ10の長期摂取試験の成績がほしいとなっているが、東北大の坪野吉孝先生の11月8日付けのコラムのβカロテンの例ではないが、長期の大掛かりな2重盲検の栄養素を投与する臨床試験をやったら、意外な結果が出てきたとならなければと思ってしまう。

 厚生労働省は事業者への指導として、医薬品では1日用量30mgであり、健康食品の成分は原則として医薬品の用量を超えないとした同省指針に沿うこと、医薬品を越える摂取量の製品については安全性を確保することとした。

 消費者には分かりにくい。分かりにくいだけではなく、厚生労働省が1つの物質に対して2つの顔を持たせるというのは良くない。なぜならば、同じものなのに薬として飲む場合とサプリメントとして飲む場合で言うことが別々では(別々ではないと言われるが、別々としか読み取れない)戸惑ってしまい、とどのつまりが不信感が残ると言う悪循環に陥る。自分の手で自分の首を絞めているような気がする。本来なら医薬品の用法用量を見直してOTCくらいで売ればいいのかもしれないが。

 例えば、ある病院で心機能の悪い患者さんの診断・治療でユビデカレン製剤が処方されたとしよう。薬剤師さんが1日10mg錠を3回を飲んでくださいと説明している時、患者さんが「私いつもCoQ10300mg飲んでいますが、止めたほうがいいでしょうか?」と質問された時どう答えますか?

 私なら困ってしまうなあと思いながら、机に置いてある「いわゆる健康食品」CoQ10を2粒(錠ではない)60mgを飲んでいるのである。(東海コープ事業連合商品安全検査センター長 斎藤勲)

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