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斎藤くんの残留農薬分析|斎藤 勲

中国産・学校給食・基準の2倍の農薬の3点セットでレッドカード

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2007年7月19日

 先日土曜日の夜の番組を見ていたら、横浜市で子供たちの給食材料として使用した焼きそばの具材の中国産キクラゲに基準の2倍の農薬が残留しており、6月から食べさせていたと問題にしていた。私に軽い認知症が始まっていなければ、どんな農薬がどの濃度で残留していたか、基準がないから一律基準の適用の説明もなく、ただ、「子供たちの給食に使った中国産キクラゲに、あろうことか農薬が残留していた!」という雰囲気である。

 番組の内容は、横浜検疫所輸入食品検査センターでの検査風景(一生懸命やっている)を撮影し、専門官から検査の実態を取材していた。通常のモニタリング検査では、全サンプルしているわけではないという取材の雰囲気だった。中国では農薬残留による中毒なども発生している情報も伝え、全体的にはこれからの日本を担っていく感受性の高い児童たちに、そんなものを食べさせるなんてけしからんといった勢いで、農薬はやはり怖いもの、特に中国が生産するものは要注意、もっときめ細かい検査をすべきといった報道であった。

 しかし、一生懸命聞いていたが、放送中農薬の名前(ピレスロイド系殺虫剤フェンプロパトリン)は出てこない。キクラゲに基準がないので、一律基準(0.01ppm)が適用され、その2倍の0.02ppmが検出されたということなのだが。当然ながらADI(1日摂取許容量)からみて、すぐに健康影響を与える量ではなく、予防的に規制していくのが目的であるが、番組ではいろいろな識者の意見を交えて、有害で怖いものを子供たちに食べさせたといった論調で組み立てられていた。

 本当は、中国産キクラゲから基準値が設定されていない(=日本が使用を想定していない)殺虫剤フェンプロパトリンが0.02ppm検出されたので、給食の食材として今後使用しないことを横浜市教育委員会が決めたということを、粛々と伝えてくれればよかった。

 フェンプロパトリン(日本での商品名ロディー)は、国内で開発され、1988年に登録されている。急性経口毒性はネズミのオスを使った試験で半分死ぬ濃度は60mg/kg体重の劇物で、市販の薬剤には10%程度含まれている。ADIは0.026mg/kg/dayとなっており、30kg位の体重の子供がこのキクラゲを毎日40kgくらい食べても大丈夫でしょうという感じである。このキクラゲを子供が食べて、間違ったことになるのはありえない話である。

 ちなみに、残留基準が設定されている作物では、かんきつ類、リンゴ、ナシ、イチゴ、ブドウが5ppmで、ミカンは0.5ppm(ミカンは皮をむいて実を検査するため基準が厳しくなる)。ハクサイ、ブロッコリーは3ppm、トマト、ピーマン、ナス、キュウリ、カボチャ、バナナは2ppm、ウリ科でもスイカ、メロン(果肉のみ検査)、キウィ(皮をむいて検査)は0.5ppm、キャベツ0.4ppm、豆類0.01〜0.5ppm、ウメ、サクランボは5ppm、モモは1ppmである一方、ネクタリン、アンズ、スモモは0.02ppmと厳しい基準もある。

 上は5ppmから下は0.01ppmと千差万別である。極端な話、甘くて美味しいイチゴに基準値ぎりぎりの農薬が残留し、それを子供が腹いっぱい食べたというなら、まだ健康影響などを論じても意味があるかもしれないが、今回のような0.02ppmは、決めた基準を守る法的対応の問題であって、悪いものを食べさせたという話ではないだろう。

 給食では6月から供給したというが、焼きそばの具材として使われていたくらいの量なら、食べたとしても問題はないだろう。しかし、一律基準(基準が設定されていない場合適用)を超えた農薬残留が見つかった以上、食材としては使い続けるのはコンプライアンスに反するので、予防上そのロットは使用を中止するというのなら筋が通っているし、保護者、消費者にも説明でき、理解してもらえる。そういった伝え方をしてほしかった。

 品質的には発展途上国の中国は、これからもいろいろな問題を発生させるだろう。そういった事例を参考にして、中国の商品の全体的なレベル評価を行い、良くない部分を見極め、当面はきちんと安全性確保に対応できる仕組みを検証しながら、必要な部分は適切に管理(契約、仕様書、点検、ヒアリング、懇談、検査などなど)しトラブルを避けていくべきである。協力の中にも緊張関係を持ちながら、双方が回収廃棄、積み戻しという食材の無駄を少しでも減らしていける関係を作っていきたい。(東海コープ事業連合商品安全検査センター長 斎藤勲)

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