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斎藤くんの残留農薬分析|斎藤 勲

05年EU残留農薬モニタリングで349農薬検出!

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2007年11月15日

 2005年のEU25カ国(現在はエストニアとラトビアのデータが加盟して27カ国)とノルウェー、アイスランド、リヒテンシュタインにおける残留農薬モニタリングのデータが、07年10月17日付けで公表された(「食品安全情報blog」10月26日を参照)。野菜、果実、穀類など6万2569件の検査を行い、MRL(残留基準)以下の農薬残留の検出は41%、MRLを超えた検出率は4.7%であった。農薬検査数は各国により異なるが、少ないところは44種類、多いところは631種類、総計で706の農薬を検査した。検出された農薬の種類は代謝物を含めて349種類。検出数が代謝物を含めるとはいえ、そんなに出るの?という感じだ。

 EU残留農薬モニタリングは、96年にノルウェーを含む15カ国のレポートからスタートして毎年報告されている。当時はEU全体に共同で食品中の残留農薬問題を検討しようという機運が盛り上がっており、96年にはオランダのアルクマールで、第1回の欧州農薬残留ワークショップが開催されている。筆者もオランダやスウェーデンの分析者とは面識があり、第1回をDr.Andre de Kokの主催で開催するという連絡があり、日本からは私を含め3人が参加した。

 アルクマールはチーズの市が開催される町で有名な場所で、木靴をはいてチーズを運ぶ職人の写真を見られた方も多いと思う。学会は近くの北海に面した保養地で行われ、6月のオランダは日も長く、街中を散歩していると多くの家でカーテンもせず歩く人に家の中を見せているという開放的な感じだった。仕事から帰ってもまだ十分明るく、庭仕事などする方もいた。砂浜を歩いても、街中を歩いても本当にのどかで、人間の生活とはこういうことをいうのかとも実感した。

 話を本題に戻す。EU残留農薬モニタリングの目的は(1)消費者への農薬暴露が有害な量にならないよう最小にする(2)農薬の使用回数、使用時期など農薬の適正な使い方をコントロールする(3)MRLを満たした食品のEU内での自由な流通を可能にする—-と記載されている。検査の内容は通常の検査・モニタリングと共に、欧州全体での食事からの農薬暴露評価ができるように、EU共同モニタリングプログラムとして3年サイクルで主たる農薬残留と作物の組み合わせを変えながら調査も行っている。報告にはいろいろな情報が含まれているが、今回は検査対象農薬数と検出された農薬の種類に絞って紹介する。

 10月26日付けの「食品安全情報blog」には、報告の本文が紹介されている。 。しかし、具体的な表や数値はここには出てこない。一度ここに戻って、プルダウンメニューのspecial reportsのpesticide monitoring reportをクリックすると、2005年の報告と概要、添付1、2、3がpdfファイルで閲覧可能となる。

 EUおよびその周辺国というと、国力も違えば人口も違う(最も小さいリヒテンシュタインは人口3万3000人の国!)。千差万別である。当然検査の技術レベルにも反映される。97年時は検査対象農薬が66種類から281種類、平均126種類であった。01年頃までは平均145くらいであったが、02年以降分析機器や一斉分析法の発展もあり、05年はアイスランドの44種類からドイツの631種類、平均184種類(一部除外すると215種類)と各国の分析対象農薬は着実に増加して、残留実態全体を把握することが出来るようになってきた。

 ちなみに各国の分析対象農薬は一斉分析法と個別分析法の合計であるが、ドイツは631(292検出、以下カッコ内は検出数)、オランダ401(170)、イタリア297(129)、オーストリア271(121)、スペイン263(93)、スウェーデン249(112)、フランス237(110)、ノルウェー226(90)、フィンランド217(114)、ベルギー200(72)などが多い部類、アイスランド44、リヒテンシュタインとラトビア56、ルクセンブルグ59、ポーランド80などが少ない部類である。

 検出される農薬数(代謝物を含む)を見ていると、349種類の農薬が検出という数字を見るとびっくりするが、各国の検出農薬を合算したものであり、それぞれの検出状況を見ると妥当なところかなと思われる。一斉分析法での検出となるともう少し数は減ってくるが。

 Annex.1の表Aに分析対象農薬706種類とその中で検出された農薬349種類が、5ページにわたって記載してある。6万件の検体から、1回から4回検出された農薬が118種類、4回以上検出された農薬が231種類である。231種類から代謝物や異性体を除くと219種類の農薬が検出されたことになる。

 EUで検出されないからいいかというとそうでもない。検出されない農薬と1〜4検体検出の農薬を見ていると、フォスチアゼート、イミベンコナゾール、ホセチル、シラフルオフェンなどがあり、日本で開発された薬剤や国・作物の種類により当然使用農薬は異なってくるので、その点は注意する必要がある。国内では使用実績はないがEUでは多いものは輸入品では要注意となる。

 野菜果実からよく検出される農薬は、一斉分析では殺菌剤のベノミルグループ、かんきつ類のイマザリル・チアベンダゾール・OPP、クロルピリホス、昔から良く使われている殺菌剤のイプロジオン・プロシミドン、トリフルアニド、シプロジニル、キャプタンなど。個別分析では、殺菌剤のマンネブグループ、クロルメコート、臭素、マレイン酸ヒドラヂド、ジクワット、プロパモカルブ、2,4-Dなどが検出されている。当然のことだが、良く効く農薬はよく使われるので検出頻度は上がってくる。

 かんきつ類からはイマザリルが7割、クロルピリホス5割、チアベンダゾール4割、マラチオン3割、西洋梨はマンネブグループ3割、トリフルアミド3割、ベノミル・クロルメコート2割、ポテトからクロルプロファム2.5割など。当然だが果実類からの検出率は高い。

 しかし、MRLを超える事例となると、ホウレンソウの殺菌剤マンネブグループ5.12%、マメのジメトエート3.9%、オレンジのジメトエート3%、ホウレンソウのシペルメトリン1.42%、キュウリのエンドスルファン1%などが並んでおり、残留頻度の高い農薬と作物の組み合わせと、かなり違う。果実で残留頻度が高いからといって違反になるわけではない。むしろこういった農薬の作物別の使用方法を厳格にすることが大切だということだろう。

 まだまだいろいろな角度から説明を始めると、誌面がどれだけあっても終わらない。じっくりとお茶で飲みながら、このレポートを紐解いて味わっていただきたい。昔からよく言われることだが、日本は分析技術は世界一流だが、結果の解析・評価となると心もとないといわれている。だいぶ改善はされてきているが、まだまだEUのレポートを見ていると、彼らはやり方が上手だなあとつくづく思う。日本ももっとコストパフォーマンスを良くしよう。(東海コープ事業連合商品安全検査センター長 斎藤勲)

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