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斎藤くんの残留農薬分析|斎藤 勲

激辛ラーメンとポリソルベート

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2008年4月24日

 今から20年以上前になるだろうか。韓国産のカップラーメンから違反添加物(良くないという意味+体に悪いものという意味が感じられる)のポリソルベートが検出されて事件になったことがあった。私が初めて外国で許可されている食品添加物ポリソルベートの名前を知った時である。今でも日本の検疫所の検査や自主検査で月に1件くらいは即席めん(韓国)、チリソース(タイ)、カレー(インド)などから指定外添加物として検出され、回収となっている。韓国の輸入食品チームが日本への輸出業者にポリソルベート使用への注意を伝えている。

 ポリソルベート類は、ブドウ糖を還元→ソルビトール→+脂肪酸→ソルビタン脂肪酸エステル→+酸化エチレンと縮合反応→ソルビタン脂肪酸エステルのポリオキシエチレンエーテルのことを言う。Tweenとも呼ばれる。脂肪酸の種類により、ポリソルベート20,60,80などと名称が変わっていく。ちなみに60は、炭素数18のステアリン酸と炭素数16のパルミチン酸が主成分である。大豆油と水を混ぜても、通常上に油層が浮いた状態になっている。

 ここに日本で乳化剤として使用が認められているグリセリン脂肪酸エステルやレシチン(リン脂質)を入れても、ゲル化して均一にならないが、ポリソルベート60などを添加すると、犬猿の仲の水と油が均一になって24時間後でも均一性が保たれている乳化剤としては優れものである。米国、EU、韓国、タイ、マレーシア、フィリピンなどでもパン、ケーキミックス、サラダドレッシング、ショートニングオイル、チョコレートなどに広く使用されている添加物である。

 現在国内ではほかの乳化剤でいろいろな食材が作られているので、なくてもいいのかもしれないが、諸外国でよく使用されていると、国内に間違って入ってきたり、貿易障壁となる場合もある。雰囲気的には、以前まだ赤色40号が国内で添加物として許可されていない頃、米国から輸入されたどぎつい色のキャンディー菓子から赤色40号が検出され、有毒色素検出のような報道された記憶がある。

 米国では一番ポピュラーな色素であったが、日本では有毒色素となる、面白いというか、所変われば品変わるという感じを持った。極端な濃度でなければ、基準違反と健康影響は関係がないということだろう。基本は決めた約束は守りましょう、規則を守れないものは入れませんよという組織運営の仕組みである。

 しかし、近々検疫所の違反事例から姿を消すかもしれないのだ。それは、03年10月に厚生労働省は「食品衛生法第6条に基づく添加物の指定及び同法第7条第1項に基づく使用基準及び成分規格の設定」のため、食品安全委員会に食品健康影響評価を依頼した。そして、7回の議論を経て07年6月には健康影響評価の通知、10月には使用基準などが討議された。

 ポリソルベート類の評価内容は、主な症状は下痢である。油と水を混ぜてしまう物質だからそうだろう。ラット(ネズミ)を使った実験では無毒性量は、ポリソルベート60を13週間食べさせた実験で餌に2%(体重あたり毎日1000mg)となり、2年間の反復投与毒性試験など複数の長期試験の結果も考慮し、安全係数100をかけてポリソルベート類の一日摂取許容量ADIはグループとして10mg/kg体重/日と設定されている。

 ポリソルベート60はEUで年間1500tから2500t、米国で4000tから7000t、次いでポリソルベート80が使用されており、1日当たりの摂取量は12mgから111mg/人/日と推定されている。使用基準(案)はCodex委員会の基準を基に、米国またはEUにおいて使用が認められている食品を使用対象としているが、パンは食品摂取量がそもそも多いので、米国の現行基準では推定摂取量が大きくなり、コーデックス基準が検討中でもあり今回は使用対象食品としないとなっている。

 ヨーグルト、アイスクリーム、洋菓子・焼菓子やその原料、ソース・ドレッシング類、スープ、野菜・海藻などの漬物などなど結構使用範囲は広い添加物である。ちなみにカップラーメンなど即席めんの添付調味料の基準は5.0g/kg(5.0ppm)以下となっている。カプセル・錠剤等通常の食品形態でない食品は25 g/kg以下、海藻・野菜の缶詰は0.030 g/kg以下と使用基準はさまざまだが、検査を行う者から見ると0.030、そのほかの食品0.020いう値は、なかなかいやなものである。0.030ということは、1つ下の桁まで計算して四捨五入することになるので、0.031が違反となる。0.030と0.031どれ程違うのか、しかもグループの合算である、ん—-、でもやるしかない。

 厚生労働省は国際的に汎用されている食品添加物については使用基準を設定していく方針であり、それに対する不安、不満を持たれる消費者も多いだろう。しかし、昔の不十分な毒性試験や検査法、昔から使っているからいいかといった添加物も多かった中、こういった審議過程を踏まえ基準設定にいたる道筋が関心がある人には公開されていくことはとても良いことだし、最低限それがないと消費者は漠たる不安を払拭できないし、それをいろいろな場でいろいろな人が分かりやすく説明しながら、定期的に食品のトータルダイエットスタディ(実食品からの摂取量調査)で評価しながら現状を情報公開していくことが大切だろう。

 食品添加物は表示義務があり、包剤に誠実に名前を書けば書くほど添加物まみれのような印象を消費者に与える食品もある。スペースがあるならば、水分含量も含めた主な主原料の重量%と、科学的ではないといわれるかもしれないが、食品添加物といわれるもの、または消費者が不安(理由は問わない)に思っている添加物の重量%位は合算でもいいから表記したほうが良いのかもと思っている。

 私たちは毎日日常的にいろいろなものを食べている(いろいろながポイント!)。添加物が入っているいないではなく、食事の単調化が体を壊す原因であることは分かっている。バランスのよい食生活に尽きる。そういった面では、加工食品を含めいろいろな食材を楽しませてくれる今の日本はすごい国なのだろう。そういった状況を自分の目と鼻と舌を持ちながら吟味して食を楽しみたい。たまにはエスニックな「トムヤンクンラーメン」も、いいかもしれない。(東海コープ事業連合商品安全検査センター長 斎藤勲)

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