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斎藤くんの残留農薬分析|斎藤 勲

食欲をわかせ、かつ食の安全の一歩を伝える

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2008年6月12日

 6月8日、全国紙に味の素冷凍食品の全面広告が掲載された。フライパンのふたを取ると美味しいギョーザが出来上がっている。「あら、この冷凍ギョウザ、大丈夫かしら?ちゃんと作ってるのかしら?」の文字が浮かんでいる。大部分の水が飛んで美味しいギョーザが顔を出した、食欲をそそる写真である。

 広告の下半分がこのギョーザの成り立ちの説明となっている。日本の自社工場(群馬県・岐阜県・佐賀県)で製造。原料の中国産野菜は自社管理農場および同等の基準に合格した指定農場のものだけを使用。今回の冷凍ギョーザ事件で信用を落としてしまった冷凍食品。その大手の味の素冷凍食品が打った広告である。正直、見て、読んで上手な宣伝だと思った。今この時点で中国関連の冷凍食品を出すなら、中国原材料→国内製造の商品からきちんと説明していくのが良いだろう。

 ギョーザ事件が起こったときには、冷凍食品のような手作りを忘れた商品が批判され、ギョーザの皮や国産の具材がもてはやされた。加工食品一辺倒も困るが、何でも手作りが優れているともいえないだろう。それぞれの生活の中でゆとりと楽しさを与えてくれる食材ならばバラエティは多いほうが良い。冷凍ギョーザもいろいろなバリエーションが楽しめるのが良い。

 今回のギョーザ事件で原因はまだ闇の中だが、分かっているのは原材料の汚染ではなく、ギョーザの形になってから、冷凍、袋詰め、箱詰め、保管、輸送、国内配送、お店に届くまでのどこかの工程で殺虫剤が混入したことだけは確かである。関係した人がいたら、その人が喋ってくれない限り分からない事件となってしまっている。

 この事実は、中国でも圃場管理がしっかりして、農薬の使用も減らしたきちんとした野菜を作って、それを原料にするなら大丈夫ですよということを丁寧に伝えている。さらに、その原料を日本に運んで、それを日本の工場で選別、加工食品の原料として使って商品をきちんと作って消費者にお届けするなら、少しずつ納得してもらえるだろう。道は長いが、こんなシナリオが当面理解してもらうには必要である。

 このシナリオを実践したのがこの広告である。「自社管理農場では、種まきから収穫まで毎日毎日社員の厳しい目が野菜の成長を見守っています」。中国福建省アモイ市郊外のニラ畑で害虫防除と早期発見による農薬使用の減少、東京本社と連絡を取りながらの管理がつづられている。望むらくは指定農場でも同等の管理が日常的になされることである。決めたことを守ってくれる人の確保がポイントである。

 「原料を検査、皮に包んで検査、蒸して冷凍して検査、袋詰めして検査」。国内3工場で人と機械の目を光らせ繰り返しの検査。3工場の中の岐阜県中部工場、揖斐郡池田町にあるとは知らなかった(余談だが、私の住んでいる地区も偶然多治見市の池田町という)。出来上がった冷凍食品のギョーザは、たれをつけないで焼いて食べて肉のうま味やにおい、皮の食感などを検査官がチェックする。いろいろな検査をパスしたものだけが工場を出てお客様のもとに届くという。

 工場はすべてISO14001を取得し、環境に配慮した取組みをしている。望むらくはISO9001や22000を取得されると外部からさらに理解されやすいかもしれない。中国ではどんな田舎へ行ってもエーと思うようなところがISO14001、9001を持っている。当然中国と日本のレベルは違うかもしれないが。

 さらに、品質管理プロセスの図が載せてある。農薬については、農地の土壌の残留農薬検査・農場周辺の農薬使用状況の調査(日本と違って隣がはるか彼方といったところも多いが)、成育中の農薬使用管理、収穫前の残留農薬検査を行い、基準以下を確認してから収穫(この方法は中国では結構多く、有効な方法)と、ポイントが押さえてある。

 この広告は、文字が結構並んだ説明であるが、文章力さえあれば文字のほうが、漫画・イラストよりもはるかに多くのイメージを読み手の想像力を使って伝えることが出来る。

 今回のギョーザ事件を受け、食料自給率向上運動が国全体の動きとなる中、食糧供給の全体的なバランスが求められている(ポイントはカロリーベースで6割以上を占めているえさを含む穀物・油・畜産物の3者をどうするかであるが)。国内製造でも冷凍食品売り上げ回復の道のりはまだまだ厳しい。

 しかし、中国の農業現場でやっていること、国内工場でやっていることなどを、地道に今までやってきたこと、やっていることに担当者が自信を持ちながら粘り強く伝え続けることが大切である。誰が何をやっているのかを伝えながら、この仕組みを消費者が受け入れて日常的に機能し始めるならば、やっと次に中国など海外工場での生産に対する理解も見えてくる。今回落とした信用は、2002年の冷凍ホウレンソウの比ではないのである。

 とにかく味の素冷凍食品の今回の広告は上手であった。(東海コープ事業連合商品安全検査センター長 斎藤勲)

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