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斎藤くんの残留農薬分析|斎藤 勲

悪者? 中国産ウナギの嘆き

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2008年7月10日

 おいらは中国で育ったウナギだい!最近は頭に来ることばかりだよ。土用の丑ももうすぐだというのに、人前にも出られないじゃないか。本当にもう。たまたま、おいらは中国で育てられたけど、ひょとしたらおいらだって、台湾生まれや日本生まれになる可能性だってあったんだから。もっと真面目に育ててくれよ!

 まだ誰も知らないけど、マリアナ諸島近くのスルガ海山(火山の噴火などで出来た海の中の山)の辺りで生まれるらしい。物心つく前から西へ行く海流に乗り、それからどういうわけか黒潮に乗り、漂いながらあちらこちらに散らばっていく。陸地にたどり着けるのは幸せものなんだが、台湾へ行く子供、中国へ行く子供、日本へ行く子供と別れて、それぞれの国で育てられると「俺は台湾」「俺は中国」「俺は日本」ということになる。
 昔は陸地へたどり着くと、それぞれの川へ入り込み川を上っていくのさ。そして何年も暮らしてまた川を下り、本人もよく分からないけれど、自分が生まれた辺りへたどり着いて産卵するんだって。でも最近は河口付近でさあ上ろうかと思っていると、多くの仲間が網ですくわれてしまうのが多いよ。そして養殖池に入れられて、えさをもらって育てられるのさ。中国では、以前はヨーロッパ生まれのハイカラさんも結構養殖されていたが、最近送ってもらえなくなって大半が日本と同じ仲間のウナギになっているよ。
 最近はどこの国でもあまりウナギの子供が取れなくなり、先行きどうなるか心配されているけれど、世界の半分以上のウナギを日本人は食べているのだから、本当にすごいよ。蒲焼きにもいろんなバリエーションがあり、本当においらたちの味を楽しんでもらうには白焼きが良いんだけどね。
 とにもかくにも、少子化(うなぎ)の大波の中、大切な食べ物なんだから愛情を持って育ててほしいなあ。本当は使っていけない抗菌剤や殺菌剤を安易に使って育てて、ほかの国に入るときに門番の人に捕まって、捨てられてしまうなんて、死んでも死にきれないよ! おいらたちを殺生して食べるのなら、ちゃんと育てて、責任を果たしてからやってくれよ。本当に、本当にもう、恥ずかしくて外を歩けないじゃないか!(以上、斎藤代筆)
 中国産ウナギの蒲焼きが、原料原産地:「愛知県(三河一色産)」、製造者:「愛知県岡崎市一色町字一色119-20 (有)一色フーズ」という架空会社が製造した愛知県三河一色産ウナギ蒲焼が、東京都内の2社の会社(伝票のみ)を経由して魚秀から神港魚類へ256t納入された。それに対して7億7000万円が支払われ、証拠が残らないよう現金でやり取りされている。プロのグループによる知恵を絞った大胆な事件である。つい先日、里帰りウナギ(誰が考えたかうまい言葉)で株を落とした一色ウナギ(三河の愛知県幡豆郡一色町)もブランドになったものである。
 誰が悪いという責任のなすりあいも面も見られるが、商品からマラカイトグリーンやロイコマラカイドグリーンが検出されたり、賞味期限の改ざんもあるという相当際物の商品であるようだ。神港魚類の発表では、回収した偽装蒲焼きからマラカイトグリーン0.005ppm、ロイコマラカイトグリーン0.63ppmが検出され、神戸市保健所に届け出たという。
 マラカイトグリーンは、06年5月1日に中国産天然ウナギおよびその加工品について検査命令の対象となっている。検疫所で違反になった事例を見てみると、大半が代謝物のロイコマラカイトグリーンであるが、0.002ppmから0.087ppmの範囲で多くは0.005ppm以下のものが多い。そういう面では今回のロイコマラカイトグリーンの0.63ppmという値はなかなかのものである。
 養殖池の土壌に残留していたとかではなく、はっきりと生育過程で使用したのだろう。おそらくベテランブローカーたちの仕業であるから、独自ルートを開拓していろいろと問題のある商品も安くたたいて買い付けているのだろう。もともと「肉」と「水産物」は、いろいろな歴史経過、流通経路があり、偽装の手口の生まれやすい環境にある。
 肉の場合、BSE(牛海綿状脳症)問題の時の偽装問題、ミートホープ事件、最近の飛騨牛偽装事件、ウナギでは昨年からの産地偽装事件など、以前から問題とされていた部分が明るみに出ている。問題ありと思われてきたところが処分されて改善はしてきているが、時間のかかることである。国産も誇れたものではない。
 冷凍ギョーザ事件のような健康被害はないが、偽装は食の安心を著しく低下させる大きな因子であり、選択肢の多い今の食生活では相当長い間ボディブローのパンチのようにように効いてくる。
 「おいらたちを殺生するのなら、ちゃんと育てて責任を果たしてからやってくれよ。本当に、本当にもう、恥ずかしくて外を歩けないじゃないか!」と、ウナギの嘆きが聞こえてくるようだ。(東海コープ事業連合商品安全検査センター長 斎藤勲)

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