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斎藤くんの残留農薬分析|斎藤 勲

タケノコ産地偽装、中国産が悪いのではなく業者の品性のなさが問題

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2009年12月10日

 昨今、中国産タケノコを国産品と見せかける産地偽装などが相次いで摘発された。中には、国内業者に中国産タケノコと「国産」表示の包材を渡して小分けさせ、熊本県産と偽ったり、さらに生産者を装った偽の写真を掲載したりする徹底した者もいる。「国産を食べたかったのに中国産を食べさせられた」という消費者も多く、産地偽装という犯罪の主たる責任と思って見る人もまた多い。しかし冷静に考えてみると、品質的には変わらないタケノコを賃金などの安い中国から安価で購入して、全ての経費が高い国産と偽って販売するその業者こそが、業者だけが悪いのである。

 林野庁の特用林産物のタケノコの生産量統計では、2008年は主産地が表年だったことや国産品に対する需要の高まりによって、前年に比べて約7000t生産量が増加し3万tであったという。しかし、主に中国から輸入されるタケノコは加工品のため生タケノコに換算して計算すると、08年は前年より3.5万t減ったが、それでも22万t余りと国内生産量の7.5倍である。テレビで京都などのタケノコ掘りが放映される3月、4月の旬の季節を外せば、私たちが食べているタケノコは輸入品だと思った方がいいだろう。

 中国の広大な土地で日本からの技術指導もあってタケノコ栽培が盛んになり、日本の消費量の9割を担うほどの輸入量となった。加工品としては、水煮などの料理の材料として販売されている。先日、中国の食品加工工場を訪問した際も、若い人が水煮した大きなタケノコを一生懸命カットしていた。タケノコは日本では米糠などと茹でてあく抜きをした後、煮物などに使われている。タケノコご飯も季節感のある美味しい料理の1つだ。ゴボウほどではないが、大きく育ったタケノコは繊維質が多く、初めて食べた外国人などは戸惑うだろう。

 しかし、どうしてこれほどまでに「国産」志向が高まり、「中国」産が悪の権化になってしまったのだろうか。乾シイタケ、アサリ、コンブ、ソバなどいろいろな食材に付けられた国産という看板を信用した結果、騙されて買ってしまう事件が後を絶たない。確かに中国は、いろいろと予想外のことをやってくれる国ではある。その最たるものは08年1月の冷凍ギョーザ農薬混入事件だろう。この事件が日本人に与えたインパクトは大きかったが、一番の問題はその原因がいまだに公式では不明でその現状がどうなっているのかが消費者に分からない状況が続いていることだ。同様の事件で、中国産冷凍エダマメから高濃度の殺虫剤が一袋だけ検出された事件もあった。その原因も不明だ。そういった事件の原因が解明されない限り、不安を持つ消費者がわざわざ中国産の食材を選んで買うはずもないのが現状だ。

 では、食品に関する事件は日本で起きないかというとそうでもない。パンやバナナに針を入れたり、飲み物に除草剤を入れたり、餅菓子の餡から殺虫剤が検出されたりと、被害は大きくないが発生している。とはいえ中国産食材の事件と異なるのは、どこで混入したかなどはある程度推測され、それに見合った対応策がとられている点だ。そういった対応策が速やかに取られて、きちんと消費者に伝わることがおそらく安心への一番の近道なのだろう。

 タケノコの場合、国産と中国産との価格差は2倍くらいの差があると言う。この微妙な価格差と、品質の差も少ないのが産地偽装に走らせる一つの要因でもあるのだろう。これが、生鮮のマツタケやニンニクのように価格は3倍から数倍、輸入量はマツタケの場合20〜30倍位多く、香りや味である程度の判断ができるものであれば、一部の加工品の具材を除いて産地を偽装しづらいはずだ。むしろ堂々とマツタケならカナダ産や中国産、ニンニクも中国産とはっきりと表示してある。消費者も料理によってニンニクも使い分け、価格差をうまく使いこなす賢い消費者となっている人も多い。そういった人が増えてくれば「原産国中国」という表示を見ただけで選ばないと言う人も減るのではないだろうか。

 昔から日本人は産地偽装に関しては結構いい加減で罪悪感をそれほど持ってこなかったことも背景にあっただろう。その程度の商道徳だったと考えることもできるが、ひとえに法律が厳しくなったため、新聞の紙面をにぎわすことが多くなったのも事実だ。

 前にも述べたが、中国産も業務用といった具材として使用される食材や総菜原料においては相当輸入量が回復している。加工食品を含め、低価格競争に全ての業界がさらされている状況で、中国産の品質はまあまあというかむしろ良いものもある。中国産の食材は、日本の食卓にもはやなくてはならないだろう。簡単に言えば、私達は目に見えるところで中国産を嫌悪するが、目に見えず管理しきれない部分では積極的でなくとも容認しているかもしれない。

 そうした状況の中、ある冷凍食品メーカーは原産国中国の市販品の販売価格を1〜2割値上げした。品質管理を含め製造にかけているコストをきちんと価格に反映しますという自社製品に対する品質の自信の表れでもあろう。こういった動きが少しずつ増えてくれば、低価格ゆえに品質が良くないと思われている中国製品のイメージを少しずつではあるが変えていくきっかけになる。たとえ低価格にしても消費者が欲しい商品を開発しなければ、どこの国のものであっても売れるわけではないという時代になったのだ。(東海コープ事業連合商品安全検査センター長 斎藤勲)

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