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目指せ!リスコミ道|森田 満樹

私が見て、感じて、考えた不二家問題(2)

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2007年4月26日

 昨日に続き、今日は不二家問題はそもそもなぜ起きたのだろうかということについて考える。私の最大の関心は、コトの発端となった現場で一体、何が起こったか?ということであった。不二家の洋菓子工場における品質管理上の問題について整理すると問題は主に4つ。(1)期限切れ原料の使用(2)最終製品の消費期限超過(3)細菌検査の不備(4)工場におけるネズミや虫などの問題—-に集約できる。それぞれの原因、法的措置、対応策について、最終報告書別紙資料「品質管理関連の実態調査」に詳細は記されているのでご参照いただきたいが、今回はそのあらましを紹介しよう。

 まず(1)の期限切れ原料使用について。最初の記者会見で公表されたのは、消費期限切れの牛乳の使用で、マスコミの第一報もその点であった。なぜ、期限切れの原料の使用が行われたか、その原因は1つではなかった。

 今回問題となった使用期限切れ牛乳は、中身はUHT殺菌で、通常のワンウェイの容器であれば賞味期限取り扱いであったものが、集乳缶のリターナル容器の搬送だったため、厳しめの製造日に3日を加算した「D+3」の消費期限が付されていた。さらにこの場合、月曜日納品で期限が1日分短く、水曜日には期限切れになってしまった牛乳をほかの製造部署から回されて、1日超えたものを使ってしまっていた。

 経験上、そのくらいは大丈夫だろうという過信があったのだろう。このように従業員の消費期限に対する意識が低かったこと、食品衛生マニュアルはあったが形骸化していたこと、原料発注・在庫管理の生産予測システムが不適切であったこと、在庫処分の考え方が徹底していなかったこと、工場における資材管理者がいなかったことなど、さまざまな要因が重なって起きた。

 これに対して、埼玉工場管轄の川口保健所は「平成18年11月8日消費期限が1日過ぎた牛乳60?を科学的検証なしに原材料として使用し、シュークリームを製造したこと」として、食品衛生法第50条違反を指摘、2月2日に行政指導を行った。

 ちなみに50条とは都道府県等が公衆衛生上講ずべき措置に対して、条例で必要な基準が定めることができるというもので、その技術的な助言として厚生労働省による「食品等事業者が実施すべき管理運営基準に関する指針(ガイドライン)」が別途定められている。現場での衛生管理や、記録の作成及び保存、回収廃棄など多岐に及ぶもので、その中の第2の6(2)「原材料として使用する食品は、適切なものを選択肢、必要に応じて前処理を行ったのち、加工に供すること。保存に当たっては、当該食品に適した状態及び方法で行うこと」とされており、そこに抵触したというわけだ。

 つまり、最終製品において健康被害が無い場合でも、期限切れ原料を使用してしまった場合、たとえ1日であっても「消費期限を超えて」「科学的検証なしに使用」という点で、違反になり得るということなのである。

 話はそれるが、食品工場ではさまざまな原料を使用しており、現場においては期限切れにならないよう原料調達・管理を行っていることと思う。しかし、現実には計画通りにいかないこともあるだろう。もちろん不衛生な原材料を使うようなことは決してあってはならないが、少しでも期限が切れたものを原料として使うことは×なのか、果たして法律に触れるのかどうか、触れるのであればどの条項か、私は最初の報道時から大変関心があった。この解釈があることから、今後安易な回収につながるようなことになれば、それはそれで消費者が本当に求めることなのかどうかという点について、また別の議論としたい。

 次に(2)最終製品の消費期限超過について、プリンとシュークリームについて、消費期限を社内基準より1日長く表示していたことが過去にあったというものだ。プリンの社内基準は、不二家では科学的根拠(微生物試験と官能試験)に基づき、製造日に8日間を加算した「D+8」が可食期間、安全率80%をかけた「D+6」が消費期限としていた。その後の仕様変更時に「D+9」を可食期間、「D+7」が消費期限とするデータもあったが、社内基準として期限は厳しめに「D+6」で運用していたという。

 不二家では2004年6月から、泉佐野工場で製造したプリンを夜中に埼玉工場に搬送して、翌日埼玉工場で受け入れた後、改めて期限表示を印字して出荷する体制となり、これに伴い、受入日翌日に出荷した場合はそれまでの日数を引いて出荷日を起点に「出荷日+4」を表示することにし、出荷する両工場で日付を打つこととしていた。ここまでは問題はない。

 問題なのは、さらに1日たった受入日翌々日にまで在庫として残っていた場合だ。工場長の判断で廃棄処分とせず、「出荷日+4」の印字をして通常品と同様に出荷してしまった。結果的に社内基準を逸脱して「D+7」となってしまったプリンを出荷、販売してしまったのである。ただし、社内基準は逸脱していたものの、消費期限として「適」とするデータはあったので法的には違反とまでにはならなかった。

 一方、シュークリームについてはデータに基づき「D+5」を可食期間として、「D+3」を消費期限とする厳しめの社内基準を定めていた。通常の工場内の製造、出荷においてはこの社内基準が守られていた。しかし年に数回、埼玉工場及び泉佐野工場でラインの保守点検のために2、3日生産を停止した場合、他方の工場が応援生産体制を敷いて互いに補完し合う体制がとられており、その時に問題は起きた。

 応援する側の工場ではその際、すべての生産を1日で行うことは難しいと考え、2日間の生産分のまとめて消費期限表示をあわせて、「D+3」として印字、相手工場側に送付したのだ。結局、1日目の製造分については、自社で設定した消費期限を1日超過して印字してしまったことになり、この件について管轄保健所において食品衛生法第19条違反とする判断が下された。

 期限表示の設定方法については、04年に厚生労働省と農林水産省が共同で「期限表示設定のガイドライン」を策定され、この中で、科学的データに基づき、自社で定めることとされている。こうしていったん決めた消費期限を、勝手に工場の判断で超過することは許されることではないと、保健所は判断した。不二家の場合は、社内基準を厳しく定めていたことから、今回のプリンもシュークリームも食中毒などの健康被害はなかったが、こうした社内ルールの逸脱が、度重なれば事故を起こす可能性も高くなるのは当然で、その体制に問題があった。その体制に消費者は不信感を持ち、たとえ安全であっても安心感が損なわれた。

 また話はそれるが、通常、保健所では食品営業施設の立ち入り検査等の監視指導を行っており、その数は全国で年間400万件近くになる。その中で不適切な点があれば、製造基準などの違反(11条)、表示基準の違反(19条)公衆衛生上講ずべき措置基準の違反(50条)、施設基準の違反(51条)などが指摘され、行政処分やその場で改善指導が行われる。

 行政処分の件数は5000件程度、行政指導の件数はさらに多い。このうち、19条違反は、期限表示を故意に偽るなど悪質な場合は行政処分にまでなることが稀にあるが、ほとんどの場合は行政指導である。違反内容の多くは、表示の付け忘れ、期限表示や製造者、保存方法当の項目のの記載漏れ、誤記等の記載不十分といった項目。今回の不二家の19条違反は、川口保健所は厳重注意、泉佐野保健所は改善指示として、適正な表示が行われるよう行政指導が行われた。

 (3)の微生物検査の不備について。第1回目の記者会見時に一般生菌数が100万個を超える「シューロール」を出荷したことが公表されたが、この場合も社内における出荷基準を逸脱していた。そればかりか、国が定めた「洋生菓子の衛生規範」の数値(一般生菌数10万個以下)も超えていた。「洋生菓子の衛生規範」は指導基準であり、冷凍食品などで定められている規格基準とは異なるため、この件については食品衛生法違反とはならなかったが、さらにこの数値を逸脱した自主回収基準が存在していたことも分かり、マスコミのメディアバッシングに油を注ぐ結果となってしまった。各工場で自主検査は確かに行われており、数多くの検体をこなしていたが、微生物検査の捉え方、判断基準そのものに問題があったのである。

 (4)工場における虫やネズミの問題と異物混入について。この問題については不二家側からは記者会見などで情報発信は行っていないが、元従業員の証言といったマスコミの過熱報道によって指摘され、消費者の不信感を煽る結果になってしまった。また菓子部門における過去の異物混入についても報道され、不二家では1月26日、1年間の異物混入の問い合わせ件数を公表するという、食品企業にとっては大変な情報公開に踏み切らざるを得なくなってしまった。

 余談だが、虫の異物混入は健康被害にはつながらないし、法令違反にも当たらないので、食品の安全と言う意味のリスクは少ないと思うのだが、一般消費者がそう思うとは限らない。私の子供の母親友達にも、この話をしてみたがまるで伝わらず(ひかれてしまいました)、期限表示や検査体制よりも「虫」の与えたダメージは大きいことを実感したのである。

 これらの品質管理上の問題について不二家は厳粛に受け止め、抜本的な対応策を講じている。まず、経営体制から見直して品質保証部は社長直結となり、人員も10倍以上増やして食の安全体制を増強した。各工場には品質保証部直属の品質管理担当者を配属、仕入れ部門の担当者も配置して、品質面を重視する社内システムを構築している。また原料受け入れから製造段階においても原料仕掛品製品チェックマニュアル、食品衛生マニュアル等を整備し、記録の徹底を図るようにした。さらにAIB食品安全管理システムを導入することよって、衛生管理は飛躍的に向上し、従業員の意識改革も進んだ。問題のあった微生物検査においても、細菌検査マニュアルをすべて見直して、検査体制も増強している。こうした対応策をまとめて保健所へ報告、3月には立ち入り審査も終了して、保健所より「製造しても差し支えなし」とされて再開にこぎつけた(対応策の詳細については、不二家のHPでも公表している)。

 それにしても、品質管理上の実態を見るにつけ、なぜ現場においてマニュアルが守られなかったのであろうか。社内基準を逸脱してしまうのだろうか。そこには経営体制における本質的な問題が横たわっていたのである。この続きは、また明日。(消費生活コンサルタント 森田満樹)

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