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目指せ!リスコミ道|森田 満樹

日本と違って生鮮有機農産物が店頭にあふれるタイの食糧事情

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2007年9月18日

 バンコクで暮らし始めて1カ月。毎日の買い物にいろいろな店を利用しているが、ORGANIC、NON CHEMICALなど、食の安全に関する表示が結構目立つことに気付いた。中には「無農薬栽培」といった、日本では禁止されて見かけなくなったちょっと懐かしい日本語表示や、「むてんか食品」といった怪しげな表記も見かける。中でも生鮮農産物におけるORGANIC表示は数が多く、IFOAM(ヨーロッパの国際基準)マークや、タイのオーガニックマーク(写真)など、さまざまなマークで差別化を謳っている。

 バンコクに来て、買い物はさぞかし苦労するだろうと覚悟していたのだが、さにあらず、店頭に並ぶ食材の種類の多さにむしろ圧倒されている。特に野菜や果物の種類が多く、小さなスーパーでもトマトは20種類以上、卵もこだわりの餌を使用したものやオーガニック卵など20種類以上が並ぶ。日本でも大手量販店でさえ卵の種類はそんなには多くないだろう。タイは農業国だからかと最初は思っていたが、タイでは栽培されていないリンゴも、オーストラリア産、米国産などさまざまな地域から届いた多様な品種が並んでいる。スーパーの店頭に「1日1個のリンゴは医者しらず。常時8カ国から8種類以上のリンゴをそろえています」などと英語で表示されていたりする(タイ語表記もあったが、なんと書いてあるのはまだ読めないのが残念)。

 これは、一部の店だけの話だろうか。私が住むスクムヴィット地区は外国人が比較的多く住む地域で、日本の食材を売る「フジスーパー」や欧米人向けスーパー、デパートなどが点在している。この地区での買い物客は、日本人を含めた外国人が半分、タイ人が半分くらい。だから余計にORGANIC表記が目立つのかもしれない。そう思って、郊外にある「ジャスコ」や「カルフール」といった巨大スーパーに行ってみたが、こちらでもやはりORGANIC農産物は人気があるようだ。店頭は地元タイ人の客でごった返していて、種類や量はさらに多いが、そこでもしっかりとORGANIC表記農産物がある。一方、庶民の台所であるタラート(屋台中心の市場)においては、表示は一切無い。値段すら書いていない。タイにおける昔ながらの標準的な生鮮食品売り場はこんなものであったのだろう。

 それにしても、日本ではあまり見かけなかった生鮮の有機農産物が、タイの店頭にこんなにあるとは!タイのORGANIC農産物には、さまざまな認定マークが付いている。「AUSTRALIAN CERTIFIED ORGANIC」はオーストラリアが定めた規定に基づいて表示されたもので日本と同等の厳しい規定で運用されているもの、「USDA ORGANIC」は米国農務省のオーガニックプログラムの規定による表示、「IFOAM ORGANIC」はヨーロッパ国際基準で日本でも時々見かけていた表示である。また、こちらで最も多いのは「ORGANIC THAILAND(写真)」表示。タイの国のどういう法律で運用されているのか、よく分からないのだが、国が保証しているものらしく、3年以上無農薬という条件だけでクリアできる緩い規定のものらしい。だからこれだけ量が多いのだろうか。とにかくいろんな野菜に表示されている。

 日本の有機JASマークのついた農産物は、残念ながらバンコクではまだ見たことはない。それもそのはず、日本の有機農産物はJAS法に基づき生産方法が細かく規定されており、農林水産大臣から認可を受けた認証機関が生産工程を検査して合格したものだけに表記されるもので、その条件はやたらと厳しい。だから、日本においては、有機加工品は増えているが、国内生産量に占めるこの有機農産物の割合は約0.1%という低い水準にとどまっている。日本では、よほど大きい店か、こだわりの店舗でなければなかなか見ることができない。私も農林水産省JAS委員として有機農産物の条件については議論に加わったが、さまざまな栽培方法の中でも有機栽培はダイヤモンドのような地位であってほしいという消費者団体の意見が強くて、厳しい規定になってしまった。

 ところで、タイにはこれだけたくさんのオーガニック生鮮農産物があるということは、タイ政府が認めたORGANICの規定が、緩いのだろうか。取り締まりは確かに緩いようで、店頭のラベルにORGANICとだけ表記されているだけのものもあったり、まさに氾濫状態である。また、無農薬という表示も氾濫している。その一方で、この国には原産地表示は義務付けられていない。原産地を知りたければ、店員に聞けばいいのかもしれないが、とてもわかりそうにない(私のタイ語レベルという意味においても)。原産国が知りたければ、ORGANIC認定マークのついた製品が無難ということになってしまう。

 そんなわけで、日本にいるときよりも、ずっと生鮮ORGANIC農産物を口にすることが多くなった。日本では考えられなかったことである。値段も慣行栽培に比べると、あまり変わらないものもあるし、10倍近いものもある。慣行栽培のものと比べて味はどうかというと、特に良いということも無いような気もするが、1つ気付いたことがある。どういうわけかORGANIC製品の方が、見た目がきれいで虫食いが少ないのだ。慣行栽培のナスは、イモムシのようなものが入り込んで、中を迷路のように食い散らしているものに当たることが多いのだが、ORGANIC製品は今のところ、虫食いが無い。友人に話したら、ORGANICは手間をかけて丁寧に栽培しているからだとか。それとも、当地における慣行栽培は、農薬は高いから使っていないのだろうか。不思議である。

 不思議といえば話はそれるが、こちらでは、1カ月に1回、一般家庭においてもペストコントロール(家にタンクを背負った人がやってきて、家中に殺虫剤を噴霧する)が行われるのだが、ペストコントロールの行われた後、なぜか部屋の中に虫がいっぱい出てくるのだ。天井を見上げるとタバコシバムシがぽつぽつ、窓には羽ありがうようよ。薬剤を噴霧されて弱った虫が外に出てくるのだろうか?不思議だなあと掃除機で吸い取って、殺虫剤をさらに部屋の中に撒く。その時にふと気づいたのだが、これだけ空気中から農薬を摂取する機会が多いと、少しでも口から摂取する農薬を減らしたいと思って、農薬を使わない栽培方法のものを求める気持ちになるのかも!だからタイでは有機農産物が人気があるのかも!と妙に納得したりする。

 いずれにしてもタイは農業輸出国なので、高付加価値化、 輸出競争力の向上などの観点からも今後は特色のある栽培方法や加工方法を採用する生産者や企業が増えていくだろう。特に中国が今のような状況であれば、当然この傾向は加速されるだろう。そんな国際状況がタイの野菜売り場の店頭にも反映されていることを、日々実感している。(消費生活コンサルタント 森田満樹)

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