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目指せ!リスコミ道|森田 満樹

猛威をふるう東南アジアの新型インフル 求められる先進国の支援

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2009年7月15日

 タイでは今、新型インフルエンザが猛威をふるっている。6月中旬までに報告された感染者は100人に満たなかったのに、その後爆発的に増え、日本の感染者数をあっという間に追い抜いた。現在の感染者数は4000人近くに達し、死亡例は、6月末から毎日のように報道されており、既に20人を超えている。先進国では深刻度が薄れつつある新型インフルエンザだが、東南アジアでは今後も犠牲者が増える可能性があり、さらにウィルスが変異して強毒化する恐れもある。この急拡大を抑えることはできないのか。

 新型インフルエンザの感染者が世界で増え続けている。最初は北米の感染が主流だったのが、南半球に感染が拡大し、東南アジアはここにきてASEAN加盟国すべてで感染が報告されている。特にタイは、先月末より1日数百人のペースで報告され、感染拡大の勢いが特に著しい。学校や飲食店、ナイトクラブなどでの集団感染が目立って報告されるようになり、今日からバンコク都内の公立小中高校は、一斉休校となっている。

 日本では最近、マスク姿は減ってきたそうだが、バンコクでは逆によく見かけるようになった。タイの新聞には、発熱の場合の対処方法や予防策の記事が目立つようになってきた。暑い国では新型インフルエンザは流行しないのではと思っていたのだが、暑さはどうも関係ないようだ。この1週間、タイから日本に帰国した後、感染が判明した日本人がいることも、何件か報告されている。

 それでは、バンコクに住んでいる日本人もさぞや新型インフルエンザにたくさん罹っているのでは?と思われるだろう。しかし、今のところ、在留日本人の新型インフルエンザ感染報告はほんの数名に留まっている。実は、日本人学校では5月初旬から季節性インフルエンザが流行していて、先月は学級閉鎖にまで追い込まれたクラスもあった。今もクラスによっては流行が続いている。それでも新型と確定された人が少ないのは、検査をしないからである。

 実は私も先月、季節性インフルエンザに罹った。咳と高熱、腹痛で病院に駆け込み、検査をしてもらったところA型だった。タイ人医師に「新型ではないですか?」と聞いたところ、「アメリカに行きましたか?」と聞かれ(先月の子供の検査の際はメキシコに行きましたか?だった)、いいえと答えたら、「新型ではありません」と断言された。それでも新型かどうか検査したいと申し出たところ、有料で7000バーツ(2万円)だというので、検査は思いとどまった。

 ちなみにタイ人の場合は、検査は無料の場合が多いと聞いた。この国は、医療場面だけでなくさまざまな場面で、外国人料金が別枠で設けられている場合が多い。このため、タイにおける感染者は圧倒的にタイ人が多いということになる。それでも検査をするのは、学校で新型インフルエンザが流行していることが分かったケースなど、ごく一部の場合に限られる。タイは貧富の差が激しく、貧困層は病院に行けない場合も多い。貧困層でなくても、家に体温計が無くて、体温は病気になって病院で計るものという感覚のタイ人が多い。デング熱やら食中毒で、しょっちゅう熱を出すので、いちいち気にしていられないという。

 そんなわけで、隠れ新型インフルエンザの数はかなり多いものと思われる。タイの保健省次官のコメントによると、新型インフルエンザの推定感染者数は、タイ国内で約20万人以上はいるという見解だ。また、タイの英字新聞「バンコクポスト紙」によれば、タイ3000万人以上のタイ人が今後3年間に新型インフルエンザに感染するという。タイの全人口のおよそ半分が、今後感染することになる。爆発的な大流行の入り口に、今立っている。

 ところで、今回の新型インフルエンザについては、日本でも当初はリスク評価が定まらず、危機管理が適切に機能しなかった。弱毒性で感染力もそれほど高くなく、通常のインフルエンザと同等と分かってからも、混乱した部分は目立ったが、最近ではようやく段階に応じた対応策に落ち着いてきた感がある。そんなに深刻にとらえなくてもいいということだが、それは、先進国の場合である。タイではこのところ、毎日のように新型インフルエンザ感染による死亡例が報告されているが、深刻にとらえないで重症化してから病院にかかる患者がたくさんいるからだ。貧困層を抱えた国では、病気の監視や治療体制が限られている。しかも不衛生や栄養不足から慢性病患者の割合も高いことから、致死率は高くなる。

 それでも東南アジアの中でも、タイはまだ豊かでましなほうだろう。周辺国では、検査体制の不備も含めて病院にかからないケースはさらに多く、今後さらに犠牲者が増える可能性が高い。これら国における新型インフルエンザの蔓延は、先進国とは異なり、破壊的な影響を及ぼすことになる。しかも東南アジアは、強毒性の鳥インフルエンザで既に多くの死者を出しており、その脅威は過ぎ去ったわけではない。新型インフルエンザの大流行と同時流行になると、ウィルスが変異して強毒化する恐れもある。遺伝子を調べる監視体制の強化が求められるが、検査体制が脆弱な国々が多く、いつの間にか変異が起こって気づいた時には取り返しのつかないことになっているかもしれない。

 これらの国における新型インフルエンザの感染急拡大について、封じ込むことは無理としても、せめて拡大のスピードを抑えることができないものか。タイではこのところの急拡大に慌てて、タイ国内の公立学校や専門学校の一斉休校や、インターネットカフェや遊興施設など人が集まる場所の閉鎖を検討しているが、経済的な影響などもあってなかなか踏み切れないようだ。こんな国だからこそ、ワクチンやタミフルの量の確保が必要だと思うのだが、全然足りていない。

 さらに発生状況やウィルスの監視や医療機関設備の充実、公衆衛生の向上、情報伝達の整備など総合的な対策を講じることが求められる。物資や設備、人員が限られている現状で、今こそ先進国の支援が求められている。先進国は自国の新型インフルエンザ対策を精査するのもいいが、強毒性インフルエンザの脅威から少しでも遠ざかるためにも、この分野の支援にもっと目を向けてもらいたい。道路や橋の支援よりも急務であると思うのだが。(消費生活コンサルタント 森田満樹)

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