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多幸之介が斬る食の問題|長村 洋一

トクホの許認可において消費者庁に考慮していただきたいこと

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2010年3月31日

 特定保健用食品(トクホ)の許認可の権限が消費者庁に移管されて初めての認可が先般報告され、本欄にもニュースとして掲載された。いよいよ、消費者庁によるトクホの認証が開始されたことになるが、今回の発表において、いわゆる健康食品の問題に関してここに1つの不安材料が同時に発生していることをお伝えしたい。それは、ある会社がすでに同社でトクホとして認可されている製品に使われている素材を、カプセルにしてトクホとして申請したことに対する不許可の通知が出されたことである。その不許可の理由はある一面からは消費者の安全を護る姿勢を強く感じさせるが、究極のところは健康食品に関する悪徳健康食品業者の温存につながると懸念している。

 不許可になったトクホ申請食品の素材はα-グルコシダーゼの阻害による血糖の上昇抑制効果を有するものであり、すでに一般食品の形態ではいくつかがトクホとしての認可されている。しかもその素材は、化学構造からは相当に食べ過ぎても低血糖ショックやそのほかの副作用が発生することはないと推測されるし、実際にかなりのレベルで安全性が確保されている。そのため、不許可になった理由も有効性や安全性に関する懸念ではなく、形状がカプセルであり、びんに入って販売され、さらに「血糖の気になる方」という効能的なことが記述されるので、消費者が医薬品と誤認をする可能性がある点にあるとのことである。

 この理由には確かに納得させられる一理がある。しかし、この素材レベルくらいの有効性と安全性が確保されているような食品素材をカプセル型のトクホとして認可することこそが、健全ないわゆる健康食品の問題解決につながると考えられる。それは、この食材が摂取によって確実に血糖上昇の抑制効果が期待でき、かつカプセルとなればまとまった量の摂取が可能となるので血糖コントロール能が低下している人にはかなり的確な健康維持素材となる。そして、日常の食生活に取り入れることによりまさに医薬品ではなく、食品としての健康維持に役立つと考えられるからである。

 欧米ではこうした作用を有するハーブなどの素材がカプセルまたは錠剤とされ、医薬品ではなく、サプリメントとして販売されている。そして、糖尿病予備軍になりそうな人たちが実際に摂取している。日本では同じようなもので、カプセルに入ったり錠剤となったりしているものはすべてトクホでも医薬品でもなく食品として販売されている。そして、これらが食品としては効能が言えないために、バイブル商法的に販売されている。それで、消費者の中には医薬品よりも安全で有効だと考えて摂取している人がいるが、実際のところ本当にどれだけ効果や安全性に関して保証されているか全く分からない。

 一方、今回のケースを見てみると、素材としての有効性、安全性に関してはそれなりのデータがヒトにおいて取られ、トクホとしての認可が得られれば摂取方法、過剰摂取の問題等明確な指示の基での使用が可能である。しかし、認可されなかったこの食品は、素材そのものの安全性ではなく、形状などの問題で不許可になっているのでトクホとしての道は完全に閉ざされている。かといって医薬品として開発するにはその作用が弱すぎる。従って、今後もし販売しようとするならば、先述のわけの分からない健康食品と同じ範疇で販売するより方法がないことになる。

 小生は、健康食品管理士認定協会を主催させていただいているが認定された会員から知らされる情報の中で最も問題となっているのは、素材の有効性、安全性、内容量などに全くデータがなく、しかもカプセル、錠剤、ドリンク剤的な形で販売されているいわゆる健康食品である。いわゆる健康食品として扱われている健康食品の世界は、まさに玉石混交であり非常にしっかりしたデータが取られているものもあるが、いい加減なものも非常に多い。実際に国民生活センターがいくつかの健康食品に関してその量や崩壊性に関して考えられないような粗悪品が販売されている実情を報告している。

 こうした情勢下において今回のような素材の安全性と有効性の明らかな素材に対して形状を理由にトクホとして認可しないことになると、結果として悪徳健康食品の存在を許容することになってしまうことを懸念する。畝山智香子氏が最後の本欄の記事に書いておられるように、リスクを避けることに終始するのではなく絶えずベネフィットとの比較の中で何を取るかを、消費者庁の今後に期待する次第である。(鈴鹿医療科学大学保健衛生学部医療栄養学科教授 長村洋一)

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