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多幸之介が斬る食の問題|長村 洋一

食品添加物は意外に天然物

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2006年12月20日

 数年前に「買ってはいけない」と警鐘をならす書籍が販売され大ヒットをしたことがある。この書籍には食品添加物の毒性を種々の観点から取り上げ、そうした添加物が入っている食品を写真入で公開したものであった。その多くの商品は大手食品メーカーのものであったので読者の多くが一度は口にしたことがあった。そこで、非常に大きなセンセーションを巻き起こした。

 しかし、その指摘された食品は相変わらず販売され、一般市民も心の隅に「食品添加物って怖いものだな」という考え方の種だけを植えられてやがては忘れ去られようとしていた。その後も、いくつかの類似本が出されたが、一度「買ってはいけない」に洗脳された人々にとってそれらの書籍は「食品添加物って怖いものだな」ということを再確認するのみで結局はそれ以上のことはなかった。

 ところが昨年辺りからは、こんなに危険ということもさることながら、こんなに汚いとか、こんなものを食べさせていては食に対する考え方が破壊される、といった精神的側面から食品添加物を攻撃している。かつての「買ってはいけない」に始まった「食品添加物って怖いものだな」という何とはなく心の隅で育てられていた「恐怖感」はこの精神面からの攻撃によって磐石なものになり、いまや食品添加物は多くの人々にとって無添加こそ最高の食というように捉えらえられてきている。

 これらの書籍に共通している問題点をいくつか取り上げてみたいが、今回は、やたら食品添加物は怖い化学物質という図式を強調して一般の人をと惑わせている現状の一端にメスを入れてみたい。私の経験からすると、市民講座などの受講者として熱心に勉強をされる方でさえ、理系でない方には、ごく普通の化学物質であっても、化学名で聞かされると何か特殊な怖い響きを与えてしまうものである。

 それは、この人たちが不勉強なのではなく、かつて水俣病、カネミ油症、イタイイタイ病と言った公害により、いわゆる化学物質で苦い思いをさせられた国民としての当然の感覚であるのかもしれない。

 こうした人たちに向かって、グルタミン酸、グリシン、コハク酸、クエン酸などと生体に存在する普通の物質をやたら並べ立て、酢酸をわざわざ氷酢酸と言ったりして食品に添加されている現状が紹介されている。そして、今では食品添加物の中でれっきとした位置を占めているうまみ調味料のことを化学調味料と表現している。

 この化学調味料という言葉に対しては、一般市民の大半の方は何かの化学物質を元に有機化学的に合成されていると感じておられる。しかし、たとえばグルタミン酸は最近ではサトウキビやトウモロコシの糖分を発酵させて作られている。そして、イノシン酸、グアニル酸といったうまみ調味料も皆天然物から抽出し、生成されている。

 このように発酵させて作られた物であっても、食品添加物として粉末となっている物質を見せられると我々は「化学調味料」という言葉に納得をしてしまうものである。しかし、「化学調味料」という言い方は、麦やブドウを発酵させ、蒸留によってアルコールが濃縮された「ウイスキー」や「ブランデー」を化学合成飲料という表現をするような奇妙なことである。

 このように食品添加物のかなりが天然物であるにも関わらず、怖い化学物質として攻撃を受けているのが現状である。(千葉科学大学危機管理学部教授 長村洋一)

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