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多幸之介が斬る食の問題|長村 洋一

メディア報道における研究者の責任はこのままでよいか

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2007年3月28日

 本年の年明け早々に「あるある」の捏造騒ぎが発生し、私もこの渦中に投げ込まれる形となり翻弄させられた(関連記事1、関連記事2、関連記事3)。先週末に外部調査委員の報告書が出され、これを契機としてメディア関係者およびその報道姿勢には新しい動きが発生することと思う。この問題に関して外部調査委員の方々の正義感に燃えられた徹底した調査の姿勢には頭が下がった。調査員の方々にとって大変なご苦労だったのは普段活動しておられるいわゆる人間社会の不正を暴く問題に、科学的要素が多分に含まれていたことであった。私が関連したレタスの問題は、外部調査委員の方も正確な科学的状況を把握されることができず結局は捏造との判断が下されなかった。

 今回の問題に科学的な要素がたくさんあったことは調査に当たられた方々にとっては随分大変なようであった。私が受けたメディアの記者の方々でも真摯に真実を追究されていた方々が直面していた面倒な問題でもあった。外部調査員の方々もメディアの多くの方々も、ご出身が文系の方が大半であったからやむをえないことである。その苦手な部分を見事に克服されて報告された外部調査員の方々の今回のご努力は、メディア関係者のあり方について今後の再発防止に大きく役立つことと信じている。

 ところで、調査委員の方々の調査対象に今回は科学者の責任の追求という項目はなかったので、これについては大きくクローズアップされることはなかった。しかし、私はこの事件に巻き込まれ、主としてメディア関係者の質問からいろいろな研究者の発言についてコメントを求められた。私は番組を見ていなかったので外れているかもしれないが、受けた質問から直ちに感じたことは、これが学者としてコメントをされたのだろうかと言うような内容がいくつかあった。

 多くの単純なケースは化学物質にはその効果を発揮するのには、ある量が必要であるという科学に携わったことのある者なら極めて当たり前の概念がないことである。ある食材にある化学物質が入っているので特定の効果が期待できるかもしれませんよと言うくらいの発言は、メディアでは許されるかもしれない。しかし、実験のコメントとして出されるのはあまりにも無責任である。

 私が巻き込まれたレタスの例でもレタスに催眠作用の物質が入っているのは確かであるが、もしレタスを食べてその効果を出そうとすると20kgから30kgのレタスを食べなくてはいけない。納豆にしても同じ問題がある。納豆にポリアミンが入っているとしても、基礎代謝を増加させて体重を減少させるのには、どれくらい必要かということを計算したら簡単に分かることである。しかし、ここで問題となるのは、少し考えればすぐ気づくような誤りを含んだコメントが、番組を成立させるための極めて大きな用件になっていたことの重要性である。

 私は今回あるある事件で浮上してきた「レタスと睡眠」と同じような企画の番組を、あるメディアが計画したのを中止に追い込んだことがある。その番組を中止に追い込むまでの経過には、幾つもの障壁があった。しかし、私は最後まで明確な科学的理由を付けて番組の中止をお勧めした。そして、番組制作者は最終的に納得されたのである。すなわち、こうした番組は研究者の似非実験やコメントがなかったら成立しないのである。

 今回マスコミで問題になった先生方の何人かが「一般論を申し上げたのが利用されて迷惑をしている」と被害者のようなコメントされているが、私はこの発言の幾つかは単なる言い逃れか嘘であると確信している。むしろ、コメントを求められた段階で番組の構成と目的は分かっていたはずである。そして、その時にその先生が的確な対応をとっておられれば、こんな大きな問題にならなかったと推測している。

 今回、メディアサイドは組織化して真摯な反省を行っている中で、あまり追求されなかった研究者の責任についてもこれを機に膿を出す必要性を痛感している。(千葉科学大学危機管理学部教授 長村洋一)

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