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食品表示法の表示基準案 アレルギー表示方法が変わる?(上)

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2014年5月30日

 2015年6月までに施行される食品表示法。現在、その新基準案について、消費者委員会食品表示部会の調査会で喧々諤々の議論が繰り広げられています。この中で、新法施行後の食品ラベルに大きな影響を与えそうなのが、アレルギー表示と製造所固有記号の見直し案です。その内容に問題はないのか、(上)でアレルギー表示、(下)で製造所固有記号を取り上げて、考えます。

 現在、検討が行なわれている消費者委員会の調査会は「生鮮食品・業務用食品の表示に関する調査会」「加工食品の表示に関する調査会」「栄養表示に関する調査会」の3つ。2013年12月よりほぼ毎月開催されて、新法の表示基準について詳細が話し合われており、この半年で一通り議論が終わったところです。

 これまで調査会を傍聴していて、一番驚いたのが第5回加工食品の表示に関する調査会(2014年4月17日開催)でした。この日の議題は、アレルギー表示と製造所固有記号制度の基準案が一度に出され、現行制度を大幅に見直す内容でした。当日は議論がまとまらず、6月5日に予定されている第7回加工食品の表示に関する調査会で再度、検討されることになっています。

 ここで消費者庁が示したアレルギー表示の見直し案は、「特定加工食品等の廃止」「表示方法(個別・一括)の見直し」と大きくわけて2つありました。

●マヨネーズなどの特定加工食品を廃止、「マヨネーズ(卵を含む)」と表記

 まずは見直し案の1つめ、「特定加工食品等の廃止」について。アレルギー表示の現行制度は、表示義務化の特定原材料は7品目、特定原材料に準ずるもの(推奨)は20品目としており、これらのかわりの表記として、「代替表記」と「特定加工食品等」を定めています。この特定加工食品の事例に出されるのがマヨネーズ。マヨネーズは、一般的に卵を使った食品であると予測されるため、現行制度では表示に(卵を含む)とわざわざ書かなくてもいい、とされています。

 しかし、最近はマヨネーズに卵が入っていることを知らず、子どもが知らないで食べてしまった事故も報告されています。このため以前から、消費者庁の阿南 久長官は新法に移行する際に、特定加工食品について見直すと公言していました。そして今回、発表された見直し案は、マヨネーズ、オムレツのような特定加工食品とともに、からしマヨネーズ、チーズオムレツなどの特定加工食品の拡大表記も、併せて廃止するというものでした。
 今後はこれらの製品に(卵を含む)の表示が必要となり、パン、うどん等は(小麦を含む)、生クリームやヨーグルトには(乳を含む)、醤油、味噌、豆腐には(大豆を含む)が必要となります。

 この「特定加工食品等」の定義が、現行制度ではとてもややこしいのです。消費者庁の表示指導要領には、別表3「特定原材料の代替表記等方法リスト」として「代替表記」「特定加工食品等」が掲載されています。まず「代替表記」は、たとえば卵の場合は「玉子」「たまご」「タマゴ」など漢字やカタカナと表記方法だけが違うだけのもので、こちらは引き続き存続です。

 また、後者の「特定加工食品等」には3つあって、1)特定原材料名又は代替表記を含んでいるためこれらを用いた食品であると理解できる表記、2)特定原材料名又は代替表記を含まないが一般的に特定原材料を使った食品であることが予測できる表記、3)2)に掲げる表記を含むことにより、特定原材料を使った食品であることが予測できる表記例、としています。

 たとえば、特定原材料「卵」で考えた場合、特定加工食品等は1)は厚焼玉子、2)はマヨネーズ、3)はからしマヨネーズとなります。今回の消費者庁案では、2)と3)が廃止され、1)は特定加工食品等のグループに入っていますが、代替表記のため現行どおり存続となります。つまり、原材料名の欄に厚焼玉子とあれば(卵を含む)の表記はこれまでどおり不要ですが、マヨネーズ、からしマヨネーズでは(卵を含む)と、これからはちゃんと書かなくてはならないというのが消費者庁の見直し案です。

 これまで患者さんにとってマヨネーズ等の特定加工食品は、「見えないアレルギー表示」と言われて、見直しが求められてきました。その一方で、私はかつてある患者団体の代表の方から「私たちはこれまで子どもたちに教育を通して、特定加工食品の情報を伝え、それによって対応力を身につけてきた経緯がある。特定加工食品の分類をなくすことはない」という意見を聞いたこともあります。しかし、調査会ではそのような意見は聞かれませんでした。

 食物アレルギーの患者さんを取り巻く状況も変わってきたということでしょうか。アレルギー患者さんのお母さんが世代交代をする中で、マヨネーズが卵からできることを知らない人が増え、実際にマヨネーズに(卵を含む)と表示がないことによる事故が何件も起きています。

 事業者によっては、事故を防ごうと任意で一括表示欄外に表示をするところも増えてきました。しかし、取り組んでいる表示とそうでない表示が両方あれば、患者さんはさらに混乱します。こうした現実を踏まえれば、特定加工食品を廃止するという消費者庁案は、時代の変化に対応した内容ともいえます。

 また、実行可能性についてはどうでしょうか。特定加工食品の項目のうち原材料として使用されるものは実は限られていて、たとえば「マヨネーズ」は原材料になりますが、「オムレツ」や「目玉焼き」は原材料になりにくいものです。このため、対応はごく一部の特定加工食品に限定されることになり、実行しやすいものと思われます。

●個別表示の繰り返し表記省略不可は、実行可能性上問題がある

 見直し案の2つめは「表示方法(個別・一括)の見直し」です。現在、アレルギー表示には、個々の原材料の直後に(〇を含む)とカッコ書きをする個別表示と、原材料全て記載した後に(原材料の一部に、〇、△、□を含む)とまとめてカッコ書きにする一括表示のどちらかとなります
 見直し案は
「個別表示を原則とするが、使用している原材料が多く、表示可能面積の制約がある場合や、表示量が多いために、かえって消費者に分かりにくい表示となる場合は、例外的に一括表示を可能とした上で、次のとおり見直しを行う」
「個別表示については、繰り返しになるアレルゲンの省略を不可とする」
「一括表示については、アレルゲンそのものが原材料に使用されている場合や、代替表記等で表示されているものも含め、一括表示欄に全て表示することとする」
の3つが提案されました

 このうち2つめ「個別表示の繰り返し表記の省略不可」が、問題があると思います。現行制度では、個別表示において個々の原材料の後の(〇を含む)が繰り返しになる場合は、省略できます。しかし、患者さんによっては、省略をしないで全部書いてほしいという声が根強くあります。ちょっとの量なら食べられるので、ある程度の量的な予測が立てられるように、全て表記をしてほしいということです。

 しかし、個別表示で全てを書くようになると、患者さんが勘違いするのではないかと懸念する専門家もいます。アレルギー表示と使用量とは必ずしもリンクするわけではなく、安易な自己判断につながるのではないか、というのです

 それでも、使われている原材料の何にアレルゲンが入っているのか、知りたいという患者さんの声は強く、4月17日発表の消費者庁案は、繰り返し表記の省略不可が2つめに盛り込まれました。同日の資料には省略をしない場合の事例が掲載されていますが、(大豆を含む)(卵を含む)(小麦を含む)が繰り返し、表記されることになることがわかります。
食用植物油脂(なたね油、ごま油)、ゴマ、砂糖、醸造酢、醤油(大豆、小麦を含む)、マヨネーズ(大豆、卵、小麦を含む)、調味料(アミノ酸等) たん白加水分解物(大豆を含む)、卵黄(卵を含む)、食塩 発酵調味料(大豆を含む)、酵母エキス(小麦を含む)、増粘剤(キサンタンガム)、甘味料(ステビア)、香辛料抽出物(大豆由来)

 しかし、実際はこんなものではすまされない、という声も聞かれます。お菓子や弁当など、加工度が高くなれば現在の1.5倍くらいの字の多さになるのではないか、と言います。個別表示で繰り返し表記省略不可となると、現在の原材料、食品添加物などの原材料を一時原料まで遡って確認する作業が必要だそうです。表示スペースは足りなくなるし、正確な表示のための作業は事業者にとって大きな負担となります。

 アレルギー表示の場合は、人の命に関わる表示で間違いは絶対に許されません。間違えればアレルギー表示の欠落として、自主回収を余儀なくされます。このため、このままの消費者庁案でいけば、繰り返し表記の間違いを恐れて一括の表示方法へ流れるだろうと予想されます。当日の消費者庁の説明では、個別表示の方が食物アレルギー患者にとって詳細な情報が得られるので原則とするとされましたが、実際にはかい離しそうで、これでは問題です。私は、個別表示は現状のままの方が、患者さんにとっても消費者にとっても事業者にとってもいいのではないか、と思います。

 今回出された見直し案は、まだ案の段階です。これまで調査会を傍聴していると、消費者庁案が却下されたものも多く、次回に消費者庁が改めて案を出し直す場面も多くみられました。アレルギー表示についても、どうなるかはわかりません。

 もし調査会で結論が出なくても、各調査会の親部会である食品表示部会で6、7月に再度検討されて結論を出して、2014年夏までには表示基準案として公表される予定です。その後パブリックコメントを経て、2014年中に正式な基準として公布され、2015年6月までに施行されるスケジュールとなっています。

 それにしても気になるのは、新表示基準が現行制度よりもどんどんと複雑になっていくのではないかという点です。新法が成立した2013年6月の段階で、消費者庁は「義務表示の範囲は、基本的に変更はない」としていましたが、新基準案をみると細かな変更がたくさんあります

 思い起こせば、新法の目指すところは現行制度の3つの法律を1つにして、わかりやすくすることでした。しかし、調査会で「わかりやすさ」について検証されることはなく、新基準案の検討は最終章を迎えています。(森田満樹)

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