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全加工食品の原料原産地表示は、消費者の誤認を招く

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2016年10月7日

消費者庁・農林水産省が共催する「第9回加工食品の原料原産地表示制度に関する検討会」が10月5日に開催された。検討会は取りまとめの段階を迎え、この日は報告書につながる事務局案が示された。その様子はテレビ新聞でも取り上げられ、「これから全加工食品に原料原産地表示が義務付けられることになる」と紹介されている。

●事務局案は、「原則表示」と4つの「例外表示」

この検討会は、環太平洋戦略的経済連携協定(TPP)の関連政策として位置づけらたものだ。2016年3月には、自民党の農林水産業骨太方針策定PT(小泉進次郎委員長)が「全ての加工食品に原料原産地表示を拡大」する方針を定め、6月には、「日本再興戦略2016」の中で「原料原産地表示について、全ての加工食品への導入に向け、実行可能な方策について検討を進める」とされた

現在は22食品群+4食品のみに義務表示が限定されており、全加工食品の1~2割にしか原料原産地表示が書かれていない。これを全加工食品に拡大すれば、「国産を応援したい」「国産品は安心できる」と思う消費者は国産品を選び、国内生産者の支援につながることが期待されている。そのための方策を検討するのが、会の目的である。

今回、事務局案が示した表示方法は、「原則:国別重量順表示」「例外1:可能性表示」「例外2:大括り表示」「例外3:大括り表示+可能性表示」「例外4:中間加工原材料の製造地表示」である。例外が4つもある。

「原則表示」とは、対象原材料の産地について「重量の割合の高いものから順に国名を表示する」もので、たとえば「大豆(アメリカ、カナダ、国産)」などと国名を句読点で並べていく方法だ。現行の22食品群の表示は、この方法だ。原材料の原産国が明確にわかる。

●例外が7割? それは、例外とは言わない

しかし、これまで22食品群から原料原産地表示を拡大できなかったのは、この原則表示では困難だったからではないか。このため、第8回までの検討会で「解決策例」として、「可能性表示」「大括り表示」「中間加工原材料の表示」を検討してきた経緯がある。

しかし、これらの「解決策例」は消費者を誤認させるというデメリットが指摘されるようになってきた。そこで、事務局案はこれらを「例外」として位置付けて、様々な条件を付けることになった。

この「例外」という位置づけについて、検討会で岩岡宏保委員(一般社団法人全国消費者団体連絡会共同代表)が「7 割近くの加工食品がこれらの例外の適用を受ける試算になるので、例外というには無理がある。大いに疑問を感じる」と、問題提起をした。

岩岡委員の「例外7割」という試算は、当日の参考資料2「原料原産地表示の想定される状況について」によるものだ。第8回検討会で「国別表示以外を認めた場合に、どのような状況が想定されるか」という質問に対して、農林水産省が加工食品製造工場33事業所の聞き取り調査結果を提示した。

こんなに少ない数で全体の傾向がわかるのかと思うが、農林水産省の担当者は「全国の加工食品に関する市場の実態を代表しているとまでは言えないまでも、大手企業を含めた主要な事業者を選定しているので、参考となる有益なデータになっているものと自負している」と説明した。

それによれば、代表的な加工食品97商品のうち、重量順位1位の原料において生鮮原材料は51商品、中間加工品は46商品だったという。前者51商品のうち、1か国の原材料で確実に国別表示ができるものは23商品で、残りの28商品は例外1、2、3の表示ができる。後者46商品は「例外4 中間加工原材料の製造地表示」となり、一番多くを占める。この数値からみると、例外が7割以上になると予想される。もはや「例外」とは言えない割合だろう。

●例外表示、特に「例外4 中間加工原材料の製造地表示」が多くなる

しかし、この「例外」ということばで一部の委員は納得するらしい。事務局案に「原則は国別表示を定めたうえで、例外ならば認めざるを得ない」「例外表示が多いのは懸念されるが、それはごく一部だろう」として、例外表示を認める意見も多く聞かれた。

メディアも「原則表示」を中心に伝えたところがほとんどだ。これまで検討会を傍聴してきて、これだけたくさんの記者が詰めかけたのは初めてだったが、彼らはこれまでの検討会の内容を取材していない。事務局案に「原則表示」とあればそのまま報道するのだろう。

10月5日の朝日新聞の1面トップが、まさにそうだった。事務局案が示した「原則表示」の解説が中心で、図解も原則表示のみ。例外表示の懸念については全く触れられていない。他の新聞やテレビも似たり寄ったりだが、特に気になったのが、「例外4 中間加工原材料の加工地表示」についてほとんど触れられていないことだ。ある記者に聞くと「参考資料に示されていなかったので、気づかなかった」と言う。

検討会で事務局が示した参考資料1「今後の加工食品の原料原産地表示制度(案)について」のイメージ図が示されているが、確かに例外4が記されていない。例外4の表示は市場の多くを占めることになるのに、なぜ書かないのだろうか。

●例外表示は、消費者の知りたい表示とはほど遠い

今回示された表示方法は、消費者の誤認を招く可能性があるとして、全国消費者団体連絡会では、既に反対意見を表明している。

検討会では、同会共同代表の岩岡委員が「可能性表示については、実際には入っていないものを表示する恐れがあることから、反対である。大括り表示についても、消費者が望んでいる国別表示ではないので反対である。これらを合わせた可能性+大括り表示も同様であり、「国産又は輸入」などの表示は、言い換えれば「地球のどこか」ということになり、まったく意味をなさない内容だろう。中間加工原料についても、消費者はどこで収穫された原材料なのかを知りたいのに、参考資料 2 の結果から類推しても、4 割以上の商品に「○○製造」と表示されるのは容認することができない。仮に「国内製造」と記載されていれば、国産の原料を使用したものとの誤認が生じかねないだろう。TPP 対応等で国産原料を応援しようとしている動きにも逆行することになる。」と述べている。

また、消費者委員の市川まりこ委員(食のコミュニケーション円卓会議代表)も、「現行制度では『国産又はB国』といった可能性表示は消費者の誤認を招くとして不可とされているが、それを義務表示として認めていいのか」「産地に関する表示がまったくないよりもましとの考え方もあるだろうが、 誤認するぐらいなら表示がない方がましだと思う」と強い懸念を示している。

事業者団体も「事業者には配慮されているが、消費者に使ってもらえなければ意味がない」「表示をするには内容をチェックする必要があり、原料原産地表示のためのコストアップを消費者に負担してもらうことになるかもしれない」と反対意見がほとんどだ。

しかし、これだけ懸念を表明した委員がいたにもかかわらず、検討会の最後に「本日の案は、概ね委員間の合意が得られたと思うので、次回はとりまとめの議論に向けて、文章化された報告書案を基に検討を進めていきたい」と座長と事務局が重ねてまとめている。

さらに「今回の報告書について、きちんと国民の意見を聞くようにパブリックコメントを求めたい」とする委員の意見に対しても、座長も事務局も「これまでの実績として、内閣府令による表示基準の改正となれば、意見募集は行ってきているところである」と回答している。それは違うだろう。消費者庁は、食品表示一元化検討会の中間取りまとめの際に、国民の意見募集を行った実績があるはずだ。

委員の意見も国民の意見も聞かないまま、消費者の誤認を招く懸念を含んだままに、全加工食品の原料原産地表示は結論に向かっている。この施策は本来は生産者団体のためだが、本当にこれでいいのだろうか。原産国は外国なのに、「国内製造」と表示されたら、消費者は混乱する。国内生産者の支援をしたいのに、そのための情報が得られない。誰のための表示か、いよいよわからなくなってきた。(森田満樹)

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