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2017年夏・全加工食品に原料原産地表示の基準改正へ(2)事業者の対応は?

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2016年12月2日

今週11月29日、消費者庁・農林水産省共催の検討会の最終報告書「加工食品の原料原産地表示制度に関する検討会中間とりまとめ」が公表されました。この先、事業者はどのような対応を求められるのでしょうか。

●どの例外表示を選ぶのか、事業者の判断に委ねられる

検討会方針のまま食品表示基準が決まれば、事業者は重量割合1位の原料原産地について、原則国別表示か4つの例外表示(前編参照)か、いずれかの方法で表示することになります。ここで問題となるのは、原料の原産地の情報をいかに集めるかです。諸外国では原料原産地の情報を伝達する商習慣はありません。どこまで情報を集め、どう消費者にどう伝えるのか―事業者の考え方によって表示方法は異なります。

たとえば、ドレッシングについて考えてみます。重量割合1位の植物油は加工品ですので、例外4の中間加工品の製造地表示となり、【原材料名:食用植物油脂(国内製造)、…】となります。

しかし、検討会報告書には、中間加工品でも原材料の原産地表示がわかっている場合は国別原則表示ができる、としています。たとえば、大豆の原産地がアメリカとカナダとわかっていれば、【原材料名:食用植物油脂(大豆油(大豆(アメリカ、カナダ))、なたね)、…】と表示できます。

どちらがいいでしょうか。原料原産地表示なのだから、後者のほうがいいのでしょうが、そのためには、大豆をひっぱりだしてカッコ大豆、カッコ原産地と表示していくので、文字数は圧倒的に多くなります。ドレッシングのように加工度の高い食品では、消費者はそれほど原産地表示を気にしない傾向もあります。例外4のほうがわかりやすいという判断もあるでしょう。

一括表示の原材料名の原材料には、たくさんのカッコがあります。アレルギーの個別表示、遺伝子組換え表示、複合原材料表示、野菜(キャベツ、白菜)などのまとめ表示、添加物の用途名表示など、細かくルールが定められています。ここに原料原産地表示が義務付けられて、カッコが増えるとますますわかりにくくなり、アレルギー個別表示のような大事な情報が埋もれてしまう点も懸念されます。

結局のところ、食品の特性や原料の調達実態に応じて、どんな表示方法ならば消費者に適切に伝わるのかは事業者の判断に委ねられます。原料の調達方法が変わるのかもしれません。さらに例外表示で消費者を誤認される可能性が高いのであれば、一括表示の枠外に原産地に関する情報を足したり、ウェブサイト等で情報を補ったりということも考えられるでしょう。まじめな事業者ほど、情報伝達手段に悩むことになりそうです。

●日本生活協同組合連合会が反対を表明したが…

このような状況を危惧して日本生活協同組合連合会は11月30日、「加工食品の原料原産地表示制度にかかわる意見書」を消費者委員会委員長と消費者担当大臣宛てに提出しました。「このまま法制度化されると消費者、事業者双方にとってメリットのないものになる」と、制度全体について強く反対する内容です。

この中で、「原料原産地表示は『検証困難』な制度であり、取り締まりが非常に困難なことから『作為的に消費者を誤認させる表示』が懸念されます」との記述があります。その危機感は相当のものです。

今後、制度の見直しはあるのでしょうか。消費者庁は今後のスケジュールについて「食品表示基準案とQ&Aをつくり、消費者委員会に諮問してご意見を頂き、パブリックコメントとWTO通報も同時に進める。来春に改正案を決めて、公布の時期はできれば来年の夏頃としたい。」と説明しています。日本の食品表示制度においては大きな変更となりますが、法律の条文を変えるわけではなく、施行までの期間は意外と短いのです。

ここで「待った」をかけられるかどうかは、消費者委員会とパブコメにかかっています。消費者庁が出した基準案は来年早々に消費者委員会に諮問され、専門部会である食品表示部会で審議されます。慎重に検討が行なわれて、答申が行なわれることになるでしょう。

●新制度の導入は、国産を応援できるものか?

これまで述べてきたとおり、消費者、事業者にとっては問題の多い制度になりそうですが、導入によって生産者のメリットはあるのでしょうか。「国産」の表示のあるものを消費者が選び、国産原料の利用促進につながれば、食料・農業・農村基本計画の「食料の安定供給に関する施策」としての面目も立ちます。

しかし、前述の日本生協連の意見書では、国別表示は2~3割、可能性・大括り表示は2~3割、製造地表示は5割程度と試算しています。「今回の表示義務化が、国産原料の利用促進どころか、逆に国産原料を利用する機会が失われる、あるいは排除されることにつながる可能性もあるのではないかと危惧しています」と記しています。

検討会を取りまとめた座長は、検討会後の記者会見で「TPP対策から見たら、その成果としては大きなアドバンテージにはならないのではないか。ルールができたからといって国産が増えるかはわからない。実際に運用の段階になって、これからどうなるのかは楽しみでもある」と述べていました。規制影響評価など全く考慮されず、報告書はまとまったようです。

自民党の小泉進次郎農林部会長は、全加工食品の原料原産地義務化について「できない理由を挙げるのではなく、どうやってできるのかを考えて進めたい」として、昨年秋からTPP対策の1つとして進めてきました。文藝春秋2016年11月号「特集 TPPを迎え撃て 日本農業改造計画」では、「国や行政の責任はもちろん重大ですが、頑張っている生産者を守る最後の砦は消費者です。…「意思のある消費者」と「意思のある農業者」がともに日本の食のレベルを高め合うのです」とコメントしています。
その結果が検討会の報告書となったわけですが、全国消費者団体連絡会が「この制度では、消費者は国産を応援できない」と心配していることをご存知でしょうか。

●十分な経過措置期間が必要

なお、消費者庁は基準改正を行った後の経過措置期間(食品表示基準の施行後、新ルールに基づく表示への移行の猶予期間)を現段階では未定としています。11月2日の検討会で、事業者委員は「今回は全ての加工食品を対象に表示にしたことで、食品表示法が施行された時と同じくらいの大きなインパクトがある。事業者は原料の情報は集めるのも容易ではなく、消費者の啓発がないと定着しない中で、食品表示法と同様に5年間と長くとっていただきたい」と要望しました。

さらに「現行法(食品表示法)が2020年までの経過措置になっている。そうするとダブルで2回、表示を変えなくてはいけない。これは事業者としてはコストがかかり、非常に苦しくなる。したがって、現行法の猶予期間もあわせて延ばしてほしい」とも要望しています。消費者庁は現行法の猶予期間を延期することは難色を示しましたが、「施行するにあたってどのくらい大変なのか見たうえで、最終的な時期等を決めたい」と言っています。

現在、事業者は2015年に施行された食品表示法の対応に追われています。加工食品の栄養表示が義務化され、アレルギー表示や製造所固有記号など細かくルールが見直されて、新表示を作るのに難儀しています。2020年3月末までの経過措置期間になっており、あと3年4ヶ月しかありませんが、スーパーなどの店頭では2割程度しか新表示に変わっていない感じです。

ここに、新たに原料原産地表示が導入されたらどうなるのか。今年の6月ごろからでしょうか。事業者の方から「これまで新表示対応のパッケージを準備してきたが、原料原産地表示が義務化されたらもう一度改版しなければならないので、作業をストップしている」という声が聞かれるようになりました。最近では「どうせ原料原産地表示が義務化されるなら早く表示方法を決めてもらい、一度で改版が済むようにしたい」という声も出てきました。

表示のルールが変わる度に対応を求められ、表示作成現場は疲弊し混乱しています。経過措置期間5年間は、無理からぬことと思います。準備不足で原産地の間違いが増えれば、「偽装表示」として社会問題に発展することにもなるでしょう。

それに、消費者も「1日も早く新表示への移行を」などと望んでいるわけではありません。現行の食品表示法について、消費生活センター等で食品表示法についてお話する機会がありますが、そんな要望は皆無です。

むしろ、変更点の多さに戸惑い「ついていけるかしら…」といった感想です。ここに新たに原料原産地表示の例外表示が導入されたら、「ついていけない」となるでしょう。「国産又は輸入」など1回聞いてもわからない複雑な制度です。消費者が理解できなければ、例外表示への反発や問い合わせが増えることが予想されます。誰のための表示制度かわからないまま、基準改正に向けて作業は進められています。(森田満樹)

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