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執筆者

森田 満樹

九州大学農学部卒業後、食品会社研究所、業界誌、民間調査会社等を経て、現在はフリーの消費生活コンサルタント、ライター。

食品表示・考

原料原産地表示のパブリックコメントを出そう

森田 満樹

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 全ての加工食品に原料原産地表示義務化を定めた食品表示基準改正案について、消費者庁は国民の意見を聞くための意見募集(パブリックコメント)を3月27日に開始しました。期間は4月25日までとなっています。

 ここでたくさんの意見が集まることで、改正案が見直されることもあります。原料原産地表示は、私たちのくらしにとって身近な問題ですから、ぜひパブリックコメントを出していきましょう。本稿では前半でパブコメの出し方、後半で制度改正の内容と森田の意見についてご紹介します。

●パブコメの出し方の留意点

1)まずは、窓口となる「食品表示基準の一部を改正する内閣府令案に関する意見募集について」にアクセスします。

 ここに意見募集要領、意見記入様式、別紙(新旧対照表)、食品表示基準改正のポイント、新たな原料原産地表示制度に係る考え方(補足資料)の5つがPDFで掲載されています。

2)改正内容に目を通しましょう。別紙(新旧対照表)の基準改正案(内閣府令案)ではわかりにくいので、図解の「食品表示基準改正のポイント」を、まずは読みましょう。補足資料はその内容をさらに詳しくQ&A形式でまとめられているので、参考になります。

3)意見を出しましょう。提出方法は、電子メール、FAX、郵送で4月25日必着です。
 意見記入様式があり、ここは「頁」「条番号」「表題」「ご意見・理由」と4つの表組となっています。しかし意見によっては、「頁」「条番号」がないものもあります。たとえば全体の制度設計にコメントしたい場合はどうしたらいいのか。消費者庁に確認したところ、その場合は「頁」「条番号」を無記入で飛ばしてももよいし、そこに「全体」と書いてもよいそうです。表組の項目にはこだわらなくてもよさそうです。

●電子メールで出す場合の留意点 政府電子メール窓口は匿名でもOK

 電子メールで出す場合は、意見募集要領には消費者庁の電子メール窓口としてi.shokuhin6@caa.go.jp宛てとなっています。一方、政府のパブリックコメント窓口となる「食品表示基準の一部を改正する内閣府令案に関する意見募集について」のトップ画面からも最下段の「意見提出フォームへ」をクリックすると、提出フォームがでてきます。以上2つの提出方法があるのですが、消費者庁に確認したところ、どちらからでも提出できるということでした。

 さて、ここで気付くのが、提出フォームの様式の違いです。消費者庁の募集要領や記入様式には、氏名、住所、電話番号、メールアドレスは必須となっています。ところが、政府窓口の意見提出フォームで提出しようとクリックすると、住所や氏名、連絡先の欄は「差し支えなければ、意見提出にあたっては、住所、氏名等の情報を入力してください。(任意)」とあり、提出意見だけが赤字で(必須)とあります。

 これでは、政府のパブリックコメント窓口では、名前も住所も書かずに意見してもよいことになります。消費者庁に問い合わせたところ、「このフォームではそうなっております。できれば名前を書いていただきたいですが、匿名でもいいです」と答えるので、「それはおかしい。同じ人がちょっと表現を変えて、何通も出してしまうのではないか」と言っても、フォームを修正しないとのことです。それでは募集要領においても匿名でよいと整合性をとればいいのに、それもしないとのこと。一体どうやって集計するのでしょうか。パブリックコメントのあり方が問われると思います。

 それでも気を取り直して、パブリックコメントを出さねばなりません。政府窓口の意見提出フォームは文字数の制限があり、2000字までとなっています。これで書ききれない場合は、何回かに分けて送信すればよいそうです。なお消費者庁宛ての電子メール窓口であれば、文字数の制限はありません。

 ただし、意見を書く場合は、「600字以上の場合は、内容の要旨を添付してください」とあり、表題とは別にいちいち要旨をつけることが求められ、それも面倒です。ここは意見を小分けにして、それぞれ600字以内に収めて項目別に出したほうがよさそうです。また、ファイルの添付は受け付けないということなので、意見の根拠資料や参考資料などを添付したい場合はFAXか郵送となりますので注意しましょう。

●意見の内容は?

 さて、肝心な意見ですが、どのように考えたらいいでしょうか。今回の制度改正は、「全ての加工食品において重量順位1位の原材料を対象に、原料原産地表示を義務付ける。そのために可能性表示、大括り表示、製造地表示などこれまで認められなかった表示方法を例外表示で認める」というものです。これに対しては、これまで消費者団体の意見も様ざまで、賛否両論ありました。

 本当に全ての加工食品に原料原産地表示が必要なのか、導入された例外表示が消費者にとってわかりにくく誤認を招くのではないかとして、私はこの制度改正には反対してきました。原料原産地表示はそもそも食品安全のための表示ではなく、消費者選択のための表示です。わかりにくくなるのであれば、容器包装の表示に限定しなくてもウェブサイトによる情報提供という手段もも検討してほしいと言ってきました。

 しかし、消費者庁は昨年の「加工食品の原料原産地表示に関する検討会」で方針は既に決まったこととして、反対意見を聞きいれません。表示方法も容器包装でなくては認められないとしています。今回、公表された食品表示基準改正案も例外表示の導入はそのままですが、新たにそれぞれの表示方法で誤認を招かないよう措置が講じられた内容となっています。

 たとえば、使用実績や使用計画の根拠資料の要件を「製造年から遡って3年以内の中での1年以上の実績」と厳しく定めたり、可能性表示で極めて少ない産地の原材料を使う場合に「アメリカ又は国産(5%未満)」のように(5%未満)表示を義務付けたりと、改正点が加わっています。これに対応するため、事業者は原料調達を見直し、トレーサビリティ情報を遡って使用実績重量データを整備などに追われることになるでしょう。また、経過措置期間は2020年3月末までとされ、施行される予定の今年夏から残り2年半となっています。

 こうしてみていくと、制度改正の総論で反対意見を述べるほど、消費者庁は誤認防止のために各論の例外表示の要件を厳しくしていくように見えます。このことがコストアップにつながり商品選択の幅が狭まるなど、私たちのくらしにも影響が出てきそうです。

 こうした点を踏まえつつ、私は次のような意見を出そうと思っています。

頁:食品表示基準改正ポイント10・11p
条番号:基準第3条第2項表1の五
表題:可能性表示・大括り表示関係の使用実績について
意見・理由:可能性表示に求められる過去の使用実績について、基準改正案では「製造年から遡って3年以内の中で1年以上の実績」とする要件が加わったが、このように一律の期間を設けることは見直してほしい。
理由は、食品は日配品から発酵食品まで製造期間や貯蔵期間が様々であり、食品の特性をよく知っている事業者がそれに応じて過去の使用実績を決めるたほうが合理的であること。また、製造年から遡って3年以内の1年以上の使用実績を調べるのは、現在トレーサビリティが義務付けられていない状況にある中で、事業者に大きな負担を強いることになり、包材のロスなどの環境負荷もかかること。それがコストアップにつながれば、選択のための表示のために全ての消費者がそれを負担することになってしまう。このため、一律の期間を設けることには慎重であるべきだと考える。

頁:食品表示基準改正のポイント13p
条番号:基準第3条第2項表1の五ハ(ロ)
表題:対象原料に占める重量割合が低い原産地の表示(5%未満ルール)
意見・理由:可能性表示において、使用割合が極めて少ない対象原材料の原産地について、消費者の誤認防止のために「アメリカ又は国産(5%未満)」などと表示するルールが新たに導入されたが、可能性表示における量的表示は消費者にとってわかりにくく、見直してほしい。
 理由は、こうした量的表示はもともと使用原料の割合が固定している場合に用いられるものであり、対象原材料の使用が著しく変動するような可能性表示にはそぐわない。「中国(5%未満)」とあれば、この商品の中国原材料は5%未満なので少ないと消費者は認識するだろうが、実際は過去実績1年間をもとにしているので、その商品に実際に全く含まれない場合もあるし、5%を大きく超える可能性もある。数値で表示されると、その都度原料の産地が変わる可能性があるという可能性表示の意味が伝わらず、かえって誤認を招くことになるのではないか。原則とする国別重量順表示との整合性もあわせて表示全体で考えると、可能性表示の5%未満表示は不要だと考える。5%で線引きした妥当性も検討されていない。

頁:食品表示基準改正のポイント17p
条番号:附則第1条
表題:経過措置期間について
意見・理由:経過措置期間を、食品表示基準改正案施行から5年間としてはどうか。
理由は、食品関連事業者は現在、食品表示法の新表示の対応(移行措置期限2020年3月末日まで)を行っているが、残り3年を切った現時点でも市場には新表示が2、3割しかない実感があり、変更には時間がかかるのが実態だ。この2年間、消費者から「早く新表示に移行してほしい」といった要望はほとんどなく、むしろ十分に準備をして間違いの無い表示を世の中に出してほしい。今回、提示された食品表示基準改正案は、例外表示は過去の原料使用実績や将来の使用計画を根拠とするもので、そのためのデータ整備やシステム修正などが必要となる。事業者によっては数千のアイテムをもつところもあり、それぞれの製品において過去の使用実績等を調査して、適切な表示をするためには、施行後2年半では期間が足りないと考える。改版作業や包材変更でデザイン会社や印刷会社に業務が集中し、その点も考慮すると、十分な移行措置期間が必要ではないか。

頁:食品表示基準改正のポイント27p・補足資料30p
条番号:なし
表題:インターネットによる表示について
意見・理由:容器包装の表示に限定せず、インターネットによる表示も認めてほしい。
理由は、現在の表示は小さい字でぎっしり書いてあり、消費者にとってわかりにくいものとなっており、かえって表示を活用していない現状があるため。食品安全に関する表示であれ、容器包装による表示が必須だが、原料原産地表示は商品選択のための表示であり、スペースの問題やパソコンとスマートフォンの普及率などからもウェブサイト、QRコードなどの表示、電話対応などでも可能としてはどうか。

頁:食品表示基準改正のポイント25p・補足資料31p
条番号:なし
表題:普及・啓発について
意見・理由:今回の改正にあたっては、これまで不可とされてきた「可能性表示」「大括り表示」「製造地表示」などが導入されて店頭に並ぶことになるため、消費者が混乱して誤認することがないように十分な周知が求められる。その際には、原料原産地表示は安全のための表示ではないこと、日本に流通する食品は、輸入食品・輸入原材料であっても国産と同じ基準が適用され、安全性が十分に確保されていることもあわせて周知してほしい。
 また、可能性表示、大括り表示、製造地表示などは、原則となる国別重量順表示よりも劣っているわけではないことも併せて伝えてほしい。加工食品であれば可能性表示であっても、適正な品質と価格を保つために様々な産地の原材料を切り替えながら使用する取組は評価されるべきであり、持続的な社会の取組みとして位置づけられるものでもある。単に表示の読み解き方を伝えるのではなく、輸入食品に頼らざるを得ない日本の食の背景も含めて、丁寧に啓発を行ってほしい。

皆さんはどのようなパブリックコメントを出されますでしょうか。改正ポイントを見ていくと、他にも様々な点に気づきます。その都度、政府広報窓口の意見募集フォームで出していけばよいのです。幅広い目で多くの意見が集まることで、現在の改正基準案が少しでも見直しが進めばいいいと思っています。(森田満樹)

執筆者

森田 満樹

九州大学農学部卒業後、食品会社研究所、業界誌、民間調査会社等を経て、現在はフリーの消費生活コンサルタント、ライター。