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遺伝子組換え食品表示検討会 原則はそのまま、「組換えでない」表示だけ見直しへ

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2018年3月16日

消費者庁の「遺伝子組換え食品表示制度に関する検討会」が、2018年3月14日に終了しました。1年にわたって対象品目の拡大や表示方法など議論した結果、任意表示である「遺伝子組換えでない」の条件について、現在の「5%以下」から「不検出」へと厳しくする方針をまとめました。

この見直しについて、新聞やテレビなどの多くが、「これまで5%ちかく含まれているのに『遺伝子組換えではない』と表示していた点が厳格になる」と紹介しており、消費者にとって望ましいことのようにも伝わります。実際は、どうでしょうか。今後の影響について考えます。

●義務表示は変わらず、見直しは限定的

まずは検討会について振り返りましょう。これまで概要をお伝えしてきましたが、今回の見直しは現行制度の一部のマイナーチェンジに留まったと感じています。原料原産地表示検討会のように、抜本的に制度を見直して「全ての加工食品に義務表示」という新ルールを導入したわけではありません。

前回(第9回)検討会で、立川雅司委員(名古屋大学大学院教授)が「検討会の取りまとめは現行制度を堅持する方向を示すもので、優良誤認を招く任意表示を少し控えめにしようというだけのことだ」と述べていますが、まさに総括しているように思います。

遺伝子組換え表示制度は2001年に施行されて、本検討会は17年ぶりの見直しとあって、検討会の開催中は、現行制度で義務対象ではないしょうゆや油、液糖などどこまで表示対象を拡大できるのか、関心が集まりました。しかし、これらは科学的検証が困難という理由で、表示対象品目にはならないという方針が検討会の中盤で示されました。

その他の論点である不分別表示の見直しもそのままで、表示が義務付けられる「意図せざる混入」の許容率も維持されることになりました。検討会を傍聴していると、義務表示は何ら見直さないことがあっけなく決まったという印象があります。古い話ですが、2001年に表示制度がスタートする際に開催された「食品表示問題懇談会遺伝子組換え食品部会」の熱い議論を思い出し、あのころはもっと深く議論されていたのにと、つい比較してしまうのです。

検討会の後半にさしかかり、現行制度のままという結論になるかと思ったのですが、消費者庁ですから、検討会を開催したからには消費者にとって少しでもよりよい表示を、となるわけです。そこで、「遺伝子組換えでない」表示の厳格化に焦点が当たり、検討会終盤ではこの1点に論点が絞られたのです。

●混入率5%以下のかわりの表示は?分析方法は?

しかし、5%以下を「不検出」まで厳しく引き下げるとなると、これまで「遺伝子組換えでない」と表示してきた豆腐などの食品で、表示できないものが出てきます。これまで分別生産流通管理(IPハンドリング)によって遺伝子組換えが混ざらないよう調達してきた原材料を使用してきたのに、そのことが一切表示できなくなるのはつらい…こういう意見が出て検討を行い、代わりとなる表示方法について、報告書の参考資料に事例を下記のとおり示しました。

第10回検討会で示された参考資料

第10回検討会で示された参考資料

この表示例は、こう書かなければいけないというものではありません。これらは任意表示なので、現状でも5%以下で無表示を採用している事業者もいますし、これを機に「無表示」に切り替える商品も増えるのではと思います。

しかし、消費者に情報を伝えるとようとすると、この表現では「かえってわかりにくい」とする意見が最終回では聞かれました。委員からは(2)の一括表示枠内に書く事例として、「遺伝子組換え5%以下」や、「非遺伝子組換え95%超」としてはどうかという意見も出ました。これに対して湯川剛一郎座長は「表示例に数字を入れるのは難しいが、数字を入れるのを禁止することも難しい」として難色を示し、今後の課題とされました。また「不検出」をどこまで厳しくするのか、分析方法やサンプリング方法なども議論されていません。検討会ではあくまでも方向性を示したものです。

今後、消費者庁は最終報告書を公表し、消費者委員会に諮問して食品表示部会でさらに審議が行なわれます。同時に「不検出」とする場合の分析方法も、国立医薬品食品衛生研究所で公定法の確立が進められることになります。こうした手続きを踏まえて、食品表示基準やQ&Aが改正されることになりますが、現時点では消費者庁は「施行時期は未定」としています。

●「遺伝子組換えでない」表示が店頭からなくなる?

検討会では、今回の見直しによって「遺伝子組換えでない」表示がお店からなくなるのではないかという懸念の声も聞かれました。今村知明委員(奈良県立医科大学教授)は、最終回に「新しい『遺伝子組換えでない』表示制度について」意見書を提出し、遺伝子組換え混入基準を厳しくした場合、特に「トウモロコシ」が問題としています。

日本に輸入されるトウモロコシの多くは、複数の遺伝子組換え系統を掛け合わせたスタック品種です。スタック品種では1粒で複数の導入遺伝子が検出されることから、混入率は高めにでます。これまでのIPハンドリングで「不検出」を担保しようとすると、さらに厳格な新たなIPハンドリングが必要になり、価格が跳ね上がります。

こうして「遺伝子組換えでない」表示が店頭から消えると、事業者はこれまでのようにIPハンドリングされた原料を調達しなくなり、IPハンドリング制度は消える可能性があるのではないか…これが今村委員の懸念です。これまでIPハンドリングによってこれまで遺伝子組換え食品の輸入総量がある程度抑えられてきたが、それが崩壊することのリスクを知ってほしいと述べています。

他の委員からは、事業者はIPハンドリングの調達をやめると「遺伝子組換え不分別」の表示が義務付けられることにため、それは避けるだろうという意見もあります。私もIPハンドリングがなくなるとは思いません。むしろ今回の見直しによってもし不分別表示が増えれば、まさに選択のための表示となるので、表示制度の趣旨に沿うのでは思います。

一方、最終製品の科学的検証ができないため、義務表示対象となっていない食品群は、どうでしょうか。しょうゆやコーンフレークは「遺伝子組換えでない」表示を多くみかけますが、これらは、最終製品で確認できないので「遺伝子組換えでない」表示は減らないかも…。そう考えると不公平で、やはり今回の見直しはいろいろと問題点がありそうです。表示基準の改正やQ&Aまでに、この点をどのように解消するのでしょうか。

消費者庁は今回の検討会の報告書とりまとめにおいて、説明会を開催する予定だそうです。説明会では、今回の検討会の進め方や、「遺伝子組換えでない」にかわる表示方法、義務表示ではない品目の「遺伝子組換えでない」表示の担保など、質問が出ることでしょう。検討会はひとまず終了しましたが、本格的な詳細の検討はこれからです。(森田満樹)

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