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米国の遺伝子組換え表示が2020年より施行 油や糖類は対象外に

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2019年1月18日

米国農務省(USDA)が2018年12月20日、遺伝子組換え食品の表示に関する最終規則「全米バイオ工学食品情報開示基準(National Bioengineered Food Disclosure Standard:NBFDS)」を公表しました。「対象食品は最終製品に遺伝子が残らない油や糖類を除外」「表示方法は容器包装の文言に限らず、QRコードやシンボルマークでもOK」といった内容で、新しいシンボルマーク(下図)も示されました。

(図 USDAが最終規則で示したシンボルマーク・BE(Bioengineered Food) 左がバイオ工学食品、右がバイオ工学食品に由来する食品)

遺伝子組換え農作物の商業栽培が盛んな米国で、消費者の「知りたい」声を受けて法律が制定されたのが2016年7月。その後、パブコメ等を経てようやく決まったルールの内容は、他国と比較しても緩いものでした。これが米国内でどのように受け止められているのか、制度の概要とともにお伝えします。

●これまでの経緯―2016年に法律制定、2018年5月にパブコメ

米国は2016年にバーモント州などで遺伝子組換え食品表示を義務付ける条例ができたのを機に、国の制度に関する議論が進みました。同年7月に「バイオ工学食品の情報開示の法律(Bioengineered Food Disclosure Law)」が連邦会議で可決され、オバマ大統領が署名をしました。これによって各州による条例は無効となり、国で統一したルールが制定されることになりました。

この法律は遺伝子組換え食品の表示に関するものですが、遺伝子(Genetically)という用語ではなくバイオ工学食品(BE:Bioengineered Food)ということばが使われ、包装表示(Labeling)制度ではなく情報公開(Disclosure)という位置づけです。遺伝子組換え食品のイメージを損なわないようにという配慮がにじみ出ているようにです。

ところで2016年の段階では、表示方法にQRコードなども認める内容が盛り込まれたものの、対象範囲や閾値などの詳細は明確にはなっていませんでした。そこで米国農務省(USDA)が2年ちかくをかけて準備・調査を進め、USDAの農産物マーケティング局(AMS)が2018年5月4日に基準案を連邦官報に公示してパブリックコメントを求めました。(詳細はこちら

●BE食品情報開示基準の施行は2020年1月1日

このパブコメには1万4000件を超えるコメントが寄せられ、これを踏まえたうえで米国農務省(USDA)は12月20日、全米バイオ工学食品情報開示基準を最終規則として公表しました。
*USDAのニュースリリースはこちら

基準は239ページに及び、食品製造者、輸入業者、小売販売業者に、BE食品及びBE食品成分に関する情報の開示を要求するものです。なお、小規模食品事業者(年間売上高250万ドル未満)やレストランなどの食品小売り施設で提供される食品は免除対象となっています。

基準の施行は2020年1月1日(年間売上高1千万ドル未満の食品製造事業者は2021年1月1日)。移行措置期間は2年とされ、2022年1月1日から完全な義務化となります。

●高度に精製された油や糖類は対象とせず、「意図せざる混入率」は5%以下

注目されていた対象品目ですが、最終規則では、情報開示対象となるBE食品(Bioengineered Food)を「組換えDNA技術によって改変された遺伝子物質を含むもので、従来の育種技術で得られないか、自然界で起こらない食品」と定義しています。

この定義からすると、油や糖類は、加工の工程で遺伝物質が分解されて含まないので、対象とはなりません。どのような食品が対象となるのか、AMSはバイオ工学食品リスト(アルファルファ、リンゴ、キャノーラ、トウモロコシ、綿、ナス、パパイヤ、パイナップル、ジャガイモ、サーモン、大豆、カボチャ、テンサイ)を示し、事業者はそのリストから情報開示が義務付けられる食品かどうか判断することになります。

振り返ると、2018年5月のパブコメ時には、2つのポジションが示されており、「糖類や油などの高度精製品(highly refined products)は、DNA技術によって組み換えられた遺伝子物質を含まないので除外する」のか、「高度精製品も情報開示の対象に含む」のどちらがよいか、意見を求めていました。最終的には分析における検出可能性等を配慮して、前者が採用されました。

また、表記免除となる「意図せざる混入率」について、パブコメ時には1)5%以下、2)0.9%以下、3)製品中のBE合計量が5%以下の3案が提示されていました。こちらも、最終的には1)の「5%以下」が採用されました。AMSの文書を読むと「5%以下を採用したのは、消費者への開示の提供と食料サプライチェーンの現実とのバランスが適切であると考えているためです」と説明しています。つまりEU並の0.9%にすると、生産者と食品加工業の規制負担が高すぎるということです。

●情報開示方法は様々 シンボルマークも決定

続いて情報開示の方法は、容器包装への表示(BE食品であることを示す文字)・シンボルマーク(図1)・QRコードなどの電子またはデジタルリンクの掲載など、いくつかの方法が示されています。事業者はそこから選ぶことになります。また、一定規模以下の事業者(売上高1千万ドル以下)や小型パッケージでは、電話番号やウェブアドレスの情報提供も可能としています。

容器包装に表示する場合は、「Bioengineered Food」または「Contains a Bioengineered Food Ingredient」などと表示します。パブコメで検討の際には「may」を使った可能性表示も示されていましたが、曖昧であるとの理由から却下されています。シンボルマークのパブコメ時は「May Be Bioengineered Food」という文字が示されたマークがありましたがそれもなくなりました。

また、電子またはデジタルを利用した情報開示では「Scan here for more food information」などのことばがあわせて必要です。電話番号の表示にも「Call 1-000…」のことばが必要です。

●生産者団体は歓迎、消費者団体は反対

この最終規則については、米国では様々な報道がされています。まずは高度精製品が開示対象から除外されたことで、消費者団体などは「知りたい食品の7割は開示されず、抜け穴が多い」など不満の声が聞かれます。また「QRコードなど消費者が一目で確認できない」「5%のしきい値は高すぎる」など反対意見が多いようです。

一方、米国最大の農業団体アメリカン・ファーム・ビューロー連合(AFBF)や、全米トウモロコシ生産者協会、アメリカ大豆協会など生産者側は最終規則を高く評価して、米国農務省の Sonny Perdue長官の手腕を讃えています。

興味深いのは加工食品業界の中で意見が割れており、一部は今回の情報開示基準が緩いことから「消費者の知りたい声にこたえていない」と批判する声があることです。新しい事業者団体を設立して、「NON-GMO」マークの自主的なルールで情報提供を継続していくという動きもあります。当面は賛否両論、様々な意見が出てくることでしょう。

それにしても米国のGM情報開示制度は表示方法こそ違うものの、対象品目や意図せざる混入率の考え方は日本の表示制度とよく似ていることに気づきます。20年前につくられた日本の表示制度は、事業者と消費者双方にとって不満の残るものでした。今回の米国の制度について、AMSは「公共情報の恩恵と、法律を遵守するために消費者に転嫁されるであろうコストのバランスをとるために起草した」と述べています。その結果、消費者に不満の残る内容になってしまったのは否めません。

あわせて今回の制度で興味深いのは、表示ではなく情報開示という概念を導入して、QRコードなど様々なオプションを認めたことです。3年ちかくかけて米国で議論されてきたゴールは、表示だけでなく情報伝達の新しい形を示したものともいえるでしょう。こちらは現在、日本の消費者委員会で検討しているグランドデザインの参考になるのかもしれません。

いずれにしても2022年以降の完全義務化の後、米国の食品パッケージがどのように変わっていくでしょうか。表示、マーク、QRコードなどどの表示が主流となっているのか。もしかしたら日本のようにNON-GMO表示が目立つようになるのではと想像しているところです。(2018年12月28日のFOOCOMメルマガ第376号を加筆修正しています)

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