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食品表示は適正に 山崎製パン「バター香る」表示の問題点

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2020年4月9日

消費者庁は3月30日、「バター香るもっちりとした食パン」の表示について、山崎製パン株式会社と株式会社ファミリーマートに「不当景品類及び不当表示防止法(景品表示法)」の措置命令を出しました。同時に、この製品を含む5製品の原材料表示の不適正表示ついて、山崎製パンに食品表示法に基づく指示・公表を行いました。つまり、景品表示法と食品表示法の2つの法違反です。

●景品表示法の問題点

景品表示法上で問題となった表示内容は、消費者庁のリリース
「バター香るもっちりとした食パン」と表示するとともに,原材料名欄に「バター」及び「もち米粉」と表示することにより,あたかも,本件3商品には,原材料にバター及びもち米粉を使用しているかのように示す表示をしていた。
とあります。

景品表示法は、消費者を惑わす過大な景品付き販売や、誇大な広告、不当な表示を規制するものです。今回の表示は、実際のものよりも著しく優良と表示した「優良誤認」とされました。

新聞等では、「『バター香る』なのにバターゼロ 山崎製パンに措置命令(朝日新聞)」のタイトルが報道されていますが、これでは法律上の問題が正確に伝わりません。景品表示法では「バター香る」と書いてバターゼロでも、通常は問題にならないからです。

消費者の感覚とは違うかもしれませんが、「バター香る」は味や香りの官能的な表現であり、植物油脂と香料で「バター香る」状態であれば、商品名やキャッチコピーで表示しても通常は違反とはなりません。一方、「バターを練りこんだ」となると使ったことを意味するので、不使用だと景品表示法に抵触します。

たとえば「バターの風味」という商品名のマーガリンがありますが、裏面の原材料名を見ると、バターは入っていません。また、「松茸の味お吸い物」という商品がありますが、こちらも松茸は入っていません。裏面の原材料名を見ると松茸という文字はなく、カツオエキスと調味料と香料などで、この独特の風味を出しているんだなあとわかります。いずれも原材料名が適正であれば、景品表示法では問題になりません。

ところが、「バター香るもっちり食パン」では裏面の原材料名が間違っていて、使っていない「バター」「もち米粉」が書かれていました。これでは消費者は誤解しています。このため、景品表示法の優良誤認として措置命令が出されたのです。

●食品表示法の問題点

今回の問題は2019年10月に判明しており、山崎製パンは「北海道内で販売した食パンの不適正表示に関するお詫び」として、5製品に表示間違いがあったと自ら公表していました。同社の札幌工場で「原材料の配合が異なる他の食パン生地を使用し製造していたことが判明しました」として、誤表示の原因も説明しています。

この内容を見ると、原材料に使っていない「バター」を表示したり、表示の順番を間違えたり、使っているのに表示漏れがあったり、栄養成分表示が不適切だったり、なかみと表示が異なる5製品があったということです。

原材料名のルールなどの義務表示は、食品表示法の食品表示基準で定められており、使った原材料を多いもの順で書くことが定められています。表示を間違えると食品表示基準に違反していることになります。この場合、国は事業者にまず指導を行い、指導に従わない場合は次の段階の指示・公表となります。

具体的に食品表示基準の指示・公表の指針が定められており、指導で、1)一過性の過失、2)表示の是正、3)ウェブサイトなど情報提供による誤認排除の3点が行われ、これに従わない場合となります。消費者庁は「山崎製パンは2)と3)は既に対応していたが、1)は確認できなかった。故意に他のパン生地を使ったからである」と、指示・公表の理由を述べています。

以上により、消費者庁は景品表示法の措置命令と、食品表示法の指示・公表をあわせて出すという厳しい判断を下しました。5製品のうちの1つ「バター香るもっちりとした食パン」の強調表示を景品表示法の優良誤認とし、ほかの4製品は商品名は「朝の笑顔食パン」のように消費者を誤認させる強調表示ではなかったので、食品表示法上の問題だけとしました。

消費者庁や公正取引委員会が景品表示法の措置命令を出すまでには、その情報を入手して数か月の調査がされるので時間がかかります。このため半年後の2020年3月末の公表となったのです。

●食品表示は、事業者から消費者への大切な情報伝達手段

食品表示の義務表示は、2015年4月に消費者庁のもとで新しい食品表示法が施行され、5年の経過措置期間を経て2020年4月1日から完全義務化となりました。栄養成分表示も義務化など様々な変更があり、事業者の皆様は新しい表示の切り替えに努力されてきたことと思います。

新法になった経緯は、2000年代に相次いだ偽装表示も1つのきっかけとなっています。2009年に消費者庁が発足し、これまでの表示の法律を見直し、消費者に安全と商品選択の情報をきちんと伝達する手段として法体系が整備されました。また、2013年末にはメニュー表示の問題が明らかになり、景品表示法も見直され課徴金制度が導入されるなど改正が進みました。消費者庁のもと、消費者視点が重視され適正な表示がより求められるようになったのです。

だからこそ、消費者の皆様には表に書いてるキャッチコピーだけでなく、裏面の原材料名を含む一括表示や栄養成分表示をちゃんと見て活用してほしいと思います。消費者にとって大事な情報を伝えようと、食品製造現場では原材料の配合と表示に間違いがないよう管理し、表示担当者がさらにチェックするなど、様々な努力が行われています。

それだけに、今回の不適正表示は残念なことでした。同社はこの問題を受けて3月30日にリリースを出し「当社は、今回の指示及び措置命令の内容を真摯に受け止めて、再発防止と管理体制の強化にしっかり取り組み、社内体制の整備をはかるとともに、全社を挙げてコンプライアンスの徹底をはかり、信頼回復に努めてまいる所存でございます。」としています。

同社の品質管理が優れているのはよく知られているところで、北海道工場はAIB(米国製パン研究所)の各カテゴリーと施設の7項目で全て「Superior」と「Excellent」を獲得していると紹介されています。今後は表示の管理も期待したいと思います。

現在、新型コロナウイルスの影響のもとで、改めて食品業界は大きな社会的インフラを担っていることに気づかされます。不安なくらしの中で価格を上げることなく、高度な衛生管理のもとに安全な食品を安定供給する食品事業者の努力には頭が下がります。

今は、表示の間違いなど些末なことかもしれませんが、食品表示は消費者への大切な情報伝達手段であり信頼の礎ともなるものです。消費者庁ができてこの10年で法律も大幅に改正されました。消費者を誤認させることがないよう適切な表示をお願いしたいと思います。(森田満樹)

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