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【新刊紹介】食品添加物はなぜ嫌われるのか

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2020年7月9日

食品添加物はなぜ嫌われるのか(画像:株式会社化学同人社より提供)

畝山智香子さん(国立医薬品食品衛生研究所安全情報部長)の新著「食品添加物はなぜ嫌われるのか 食品情報を『正しく』読み解くリテラシー」(株式会社化学同人)

タイトルから食品添加物の話かと思いきや、そこにとどまらず、超加工食品、オーガニック、北欧食、食品の国際基準、食品表示、プロバイオティクスなど、国内外で話題となった情報を広く取り上げています。メディアなどで一面的に取り上げられる情報が、ほんとうのところはどうなのか、真実に迫る内容です。

新著の帯には「ゼロリスク幻想を超えて改めて考える、ほんとうの『食の安全』」とあります。これを見て、2009年に刊行された「ほんとうの『食の安全』を考える—ゼロリスクという幻想」を思いだしました。新著のまえがきを読むと「前著の続編と考えてもらってかまいません」とあるとおり、さらに深く掘り下げた内容でした。

前著では、残留農薬、食品添加物、発がん物質など食品中の化学物質のリスクの解説で、「リスクのモノサシ」という考え方が印象的でした。食品はもともと「未知の化学物質のかたまり」であり、その中で農薬や食品添加物は安全性を確認しないと使用が認められず、一般的な食品よりもむしろ安全という考え方です。

この本をもとに消費者団体の学習会が行われ、畝山さんを講師に招いたリスクコミュニケーションの催しも各地で行われてきました。

それから10年、ほんとうの食の安全が根付いたかというと、心もとないものがあります。メディアでは今でも中国産食品で残留農薬などを取り上げ、リスクについて誤った情報が散見されます。本著では、この10年の最大の変化はソーシャルメディアの影響力の拡大であるとし、フェイクニュースということばがすっかり定着しているように虚偽や事実誤認も多くなっていると指摘しています。

●食品添加物が嫌われる歴史的経緯

特に事実誤認の情報が多いのが、食品添加物でしょう。
第1章「終わらない食品添加物論争」では、「食品添加物が悪」という意識がどこからくるのか、まずは歴史的経緯、国際事情から解説しています。1960年代に始まる実験動物を用いた安全性試験、そして1970年代に開発されたエイムス試験(試験管内で遺伝子の突然変異を誘発する物質を調べる試験)。当時、「試験で発がん性の疑いがあるものは全て規制すべき」として、環境保護団体、消費者団体の活動が盛んになったと振り返ります。

ところが、1990年代には天然の食品でも試験で調べれば同じように毒性があることがわかり、エイムス試験は陰性なのに人に対して強い発がん性を示す事例も出てきます。試験法の解釈も変わり、現在は様々な試験法を組み合わせて総合的にリスクを判断するようになっていきます。

それでも1970年代の悪いイメージだけを利用して、「無添加」などと表示して商売を行う人は後を絶ちません。それが消費者の正確な理解を妨げており、時に食品の安全を脅かすという問題も発生していると指摘します。

現在、多くの消費者団体は2003年に導入されたリスクアナリシスの考え方を学び、化学物質のリスクについて総合的に理解をしようと務めていると私は思います。その一方で、今でもかつての悪いイメージの主張を繰り返す活動家や、食品安全委員会のリスク評価書の試験結果を1つだけを取り出して「この添加物はがんになる」と主張する情報のなんと多いことか。適切な情報が提供されるためにはどうすればいいのか、改めて考えさせられます。

ところで、畝山さんは「食品添加物だから安全です」と解釈してはいけない、とも記しています。「食品添加物として認められている物質を、食品添加物として認められている使用条件で使うなら安全」であり、それは食品だから安全なのではなく、「食品として全体的に健康的な食生活の一部として適切に食べれば安全」だそうです。

ここを読んで、最近話題の次亜塩素酸水などに表示された「食品添加物だから安全です」の広告を思い出しました。一般消費者向けに除菌目的等で販売されているものは、本来の使用基準を満たしておらず、「食品添加物だから安全とはいえない」と気づかされます。

●日本の食品表示制度の功罪

後半は添加物から離れて、世界で話題になっている食事法、国際基準の違いによる規制影響、欧州でのプロバイオティクスの評価など読みどころがたくさんです。この中で、私が興味深く読んだのが第6章の「食品表示と食品偽装」でした。

ここではカフェインについて触れています。カフェインは有害影響があり、とくに妊婦さんとこどもは要注意。エナジードリンクの規制は現在進行中で議論が行われているものですが、国によって製品のカフェイン含量表示や規制が異なります。日本では表示義務はありません。畝山さんは、お茶に「カテキン〇g」などの表示よりも、カフェインを表示したほうがはるかに役に立つのに、と記しています。

一方、カフェインレスをうたう製品も多く出ていますが、妊婦さんや子どもはこの手の各種ハーブティに注意が必要とのこと。ハーブの中には、比較的強い発がん性のあるアルカロイドが含まれている可能性もあるからです。天然のものには未知の部分が多いというのは、本著で様々な事例が示されています。

また、日本の食品表示制度については、これまで3つの法律が一元化されて「食品表示法」となりましたが、この法律が難解であると指摘しています。畝山さんが食品表示で安全性にとって大事とする情報は、アレルゲン、消費期限、保存方法、栄養成分。そのほかの添加物、原材料の産地、遺伝子組換えは消費者の好みと価値観に関係するもので、そこは分けて理解すべきということです。確かに、ここは消費者には伝わりにくいところです。

どの章から読んでもわかりやすく、エッセイもあり、スイスイ読み進めることができます。そして最後、あとがきでは、新型コロナの危機を踏まえて世界がどう変化していくのかと憂慮されています。

その答えを見つけようとすると、やはり畝山さんの情報提供が参考になるでしょう。現在、畝山さんは研究所で月2回の食品安全情報を発信しているほか、平日のほぼ毎日、「食品安全情報blog2」で最新情報を更新してくださっています。食品中の化学物質のリスクに関する情報は、このサイトを見れば知ることができますし、最近の新型コロナをめぐる世界の食品安全情報も最新のものに触れることができます。

畝山さんによれば、この食品安全情報からここ3年間の話題を取り入れてわかりやすく解説したのが本著だということ。食の安全、リスクコミュニケーションに関わる行政、事業者、消費者全ての方にお勧めです。(森田満樹)
(6月18日・FOOCOMメールマガジン第448号を加筆修正しました)

*FOOCOMでは8月7日に畝山さんをお招きして、会員向けオンラインセミナーを開催いたします。入会のご検討はこちらをご参照ください。

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