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日本食品標準成分表(八訂)が2020年末に公表、食品表示への影響は?

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2020年11月12日

食品成分のデータベースとなる「日本食品標準成分表2020年版(八訂)」が、2020年末のクリスマスの頃に文部科学省より公表される予定です。今回、特に大きく変わるのが「エネルギー値の算出方法」です。今後、食品表示にどのような影響を与えるのでしょうか。

●エネルギーの算出方法が大きく変わる

日本食品標準成分表は、文部科学省が1950年に初版を発行して以来改訂を重ねており、現在は「日本食品標準成分表2015年版(七訂)」が用いられています。文科省の科学技術・学術審議会資源調査分科会が所管し、最近は5年おきに策定されています。次期改訂版公表までには、データの追加や修正を行う「追補」も公表されています。

2020年版の改訂作業にあたり、2019年11月26日に開催された十期食品成分委員会(第18回)で方針が示されています。
様々な変更点がありますが、特にエネルギー値について新しい算出方法に変更する考え方が示されました。これにより、実際に摂取利用されるエネルギー量により近づくことができるということです。新しい算出法は、これまでに比べるとずいぶんと複雑で、以下のとおりとなります。

これまでの算出方法は、「Atwater 係数(たんぱく質、脂質及び炭水化物に各々4:9:4 を乗ずる)」をもとにした修正Atwater法が用いられ、炭水化物の組成成分である各種糖質や食物繊維に一律の係数が使われてきました。
しかし糖質研究などが進み、国際的には「組成ごとのエネルギー換算係数」を乗じた計算方法が推奨され、今後はより正確にエネルギー値を求めるために上記の算出方法に変更されました。

これまで、長年にわたって教科書などでPFCの4:9:4の係数が使われ、それをもとに計算されてきたわけですから、今回の変更は大きいと思います。これまでより計算が複雑になり、食品のカロリーが低くなりそうだな、と感じています。

●エネルギー計算の変更で、数値が増えるもの、減るもの

それでは、新算出法で求められるエネルギー値は、これまでの算出法と比較してどのくらい違うのでしょうか。第十期食品成分委員会(第18回)の資料2−1では、2,294食品について試算した結果を示しています。

その結果、全2,294食品の試算結果は100g 当たり平均−12.42 kcalでした。新算出法によってエネルギー値が増えた食品、減った食品がありますが、最大+115 kcal(ココア ピュアココア)、最小−114 kcal(せん茶 茶)のかい離が生じた結果となりました。

資料の表(以下抜粋)を見ると、ココアは100gあたり七訂では271.0 kcal、試算値386.0kcalで+115kcalの差、せん茶は100gあたり七訂では331.0kcal、試算値 217.1kcalで−114kcalの差でした。

資料2-1「組成に基づく成分値を基礎としたエネルギー値の算出について」表1・表2より抜粋

 

資料ではこの理由について、「ココア」は従来、適用していた FAO(国際連合食糧農業機関)の換算係数が低めに設定されていたこと、「せん茶」(茶葉)は、炭水化物の大部分を占める食物繊維に対する換算係数を使用した影響によるものと考えられる、と説明しています。

ココアやお茶の摂取量は多くなく私たちの食生活への影響は少なそうですが、摂取量の多い食品はどうでしょうか。資料の最後に、平成 26 年度の国民健康・栄養調査の調査票データを基に、摂取量を加味したエネルギー値のかい離の影響評価が紹介されています。

それによると、全世代平均1人日摂取量約 1,900 kcal を全摂取量と仮定した場合の変動量として、調査票出現頻度の高い「こめ [水稲めし] 精白米、うるち米」が、470.2kcal→434.3kcalで、−36 kcal の変動減を示しています。
他にも鶏卵、いも類、アルコール飲料、牛乳、肉類、パンなど−10〜−2kcalの変動域を示しています。変動増のものとして、ほうれんそう、甘柿、バナナなど0.7 kcal増を示したものもありました。

新しい算出方法では、実際の摂取エネルギー量に近くなるというメリットがあります。しかし、これまでの方法で算出したエネルギー値との比較はできなくなります。給食の献立表のエネルギー値計算など、様々な場面で影響が出てくるのではないでしょうか。

●加工食品の栄養成分表示を計算で求める場合は?

今回の改訂は、加工食品の栄養成分表示にもかかわる問題です。義務表示5項目の一番上の「熱量(エネルギー)」は、消費者もよく見る項目です。事業者が表示する値は、分析により求める場合と、分析以外(計算等)で求める場合がありますが、後者は、公的なデータベース等から得られた個々の原材料の成分値で計算されます。この公的データベースの最たるものが「日本食品標準成分表」なのです。

消費者庁の食品表示基準Q&Aに次のとおり示されています。
栄養成分表示は2020年4月に完全義務化となりましたが、計算で求める表示値の多くが「日本食品栄養成分表2015年版(七訂)」をもとに計算していました。今後の切替時などで、また数値の見直しか…という声も聞こえてきそうです。たとえばココアを用いたケーキなど、七訂で計算していたものに比べるとエネルギー値が増えそうです。こうした見直しには、コストもかかります。

●加工食品の栄養成分表示を分析で求める場合は?

一方、表示値を分析で求める場合、今回の改訂の影響はないのでしょうか。そもそも消費者庁の食品表示基準における熱量の算出方法は、文部科学省の日本食品標準成分表とは異なり、食品表示基準・施行通知の「別添 栄養成分表示関係」に、以下のとおり示されています。

・食品表示基準は修正アトウォーター法(文科省では英字だが消費者庁はカタカナ)を用いて、たんぱく質(4 kcal/g)、脂質(9 kcal/g)、炭水化物(4 kcal/g)のエネルギー換算係数を乗じた総和とする。
・糖質と食物繊維の含量を記載している場にあっては、熱量の算出に当たっては糖質と食物繊維の総和を用いて計算し、アルコールについては7kcal/g を、有機酸については3kcal/g を、難消化性糖質についてはそれぞれ定められた適切なエネルギー換算係数を、食物繊維については2kcal/g 又は素材に応じた適切なエネルギー換算係数を用いて算出する。
・難消化性糖質のエネルギー換算係数は、たとえばエリスリトール0、マルチトール2、ソルビトール3 など、表にまとめられている。
・食物繊維のエネルギー換算係数も、たとえば寒天0 。難消化性デキストリン1 、グアーガム2 など、表にまとめられている。
・きくいも、こんにゃく、藻類及びきのこ類の場合は、アトウォーター係数による総エネルギー値に0.5を乗じて算出すること。

以上のとおり食品表示基準では、日本食品標準成分表で導入される「新しいエネルギー値」の算出方法の一部を既に取り入れており、これに沿って分析値よりエネルギー値が求められていました。とはいえ、細かいところでは日本食品標準成分表の新しい算出方法と異なるところもあります。

この計算方法は、消費者庁に引き継がれる前の厚労省の「栄養表示基準」の時代から決められていたものです。厚労省と文科省の縦割り行政のように見えますが、その考え方の違いが今回の第八訂でさらに顕著になったように見えます。
消費者庁では今後、こうした算出方法の整合性等についても調査事業などを行い、検討をしていくということです。

目前にせまった八訂の公表は、食品事業者だけでなく、栄養改善活動にも影響を与えるでしょう。地方自治体の行政栄養士さんに影響があるのか聞いてみたところ、現場では「日本人の食事摂取基準2020年版」の普及啓発もあり、保健所では新型コロナウイルスの影響も受けて業務がひっ迫しているということでした。
まずは新しい日本食品標準成分表(八訂)がどのようなものになるのか、公表を待ちたいと思います。
(森田満樹)

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【FOOCOMアドバイザリーボード・監物南美さん(女子栄養大学出版部)よりお知らせ】

私たちが日ごろ食べている食品にどんな栄養素がどのくらい含まれているかを示したデータベース 「食品成分表(日本食品標準成分表)」は現在改訂作業が行なわれており、今年の年末に八訂が文科省から公表予定です。
その一方で、「食品成分表」の読み方が間違っていたり、情報の更新がなされていないための誤った食や健康の情報が巷にあふれています。

そこで、女子栄養大学出版部では、八訂の公表に備え、「食品成分表」の見方や最新情報についてWebでの発信を始めました。
食品成分委員会主査代理の渡邊智子さんによる連載です。
お役立ていただければ幸いです。

・連載 知れば知るほどおもしろい!「食品成分表」
https://eiyo21.com/blog/category/fooddata/
・更新のご案内はツイッターで行ないます。
https://twitter.com/eiyodaishuppan

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