科学的根拠に基づく食情報を提供する消費者団体

執筆者

森田 満樹

九州大学農学部卒業後、食品会社研究所、業界誌、民間調査会社等を経て、現在はフリーの消費生活コンサルタント、ライター。

食品表示・考

意見交換会をやるなら公開で!消費者庁に要望書を提出しました

森田 満樹

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 FOOCOMは10月5日、消費者庁の阿南 久長官宛てに「食品表示一元化検討会報告書と法案作成について 公開意見交換会開催のお願い」とする要望書を出しました。「NPO法人 食品保健科学情報交流協議会」「公益社団法人 日本消費生活アドバイザー・コンサルタント協会 食生活特別委員会」「食のコミュニケーション円卓会議」と共に、4団体連名での申し入れです。

 要望書に至った経緯について、ご説明します。
 消費者庁が食品表示一元化検討会の報告書を発表したのが2012年8月9日、その後、「主婦連合会」や「日本消費者連盟」などの消費者団体が、「内容がけしからん!」として反対運動を行ってきました。8月28日には衆議院銀会館多目的ホールで緊急院内学習会「消費者が求める食品表示」と銘打った集会を開催しています。(詳細は「食品表示・考 特定の消費者団体の声に消費者庁どうする?」をご覧ください)

 また、9月25日にはそれらの消費者団体が、緊急合同記者会見「欠陥表示を許すな!~食品表示一元化にモノ申す」を開催しました。翌26日の「しんぶん赤旗」はその様子を次のように伝えています。

 各団体は、記者会見で「国際的にも貧しい表示なのに削減の動きさえある」「監視体制が抜けている」「加工食品の表示は抜け穴だらけだ」と発言しました。

 最後に「消費者目線からの食品表示制度の実現を」求めるアピールを発表し、消費者庁に提出しました。また、「食品表示を考える市民ネットワーク」は阿南久消費者庁長官との意見交換も予定しています。

 この記事の中で、特定の消費者団体と意見交換を予定しているという点について、気になったので消費者庁食品表示課に問い合わせたところ「先方の団体からオファーがあったので、近いうちに意見交換会を行う予定で調整中である」という説明を受けました。しかも、会は非公開だということです。

 これまで食品表示一元化のあり方をめぐっては、消費者庁の検討会においても様々な意見が対立して、1年ちかくの議論を経てようやく報告書がまとまったという経緯があります。すべての議事を公開し、最終的に委員の合意のもとにまとめられたはずなのですが、主婦連等の団体は後から内容を不服として、消費者庁長官に直々に意見交換を申し入れたのです。
 しかし、こうして意見が対立している時に、消費者庁が片方側の意見だけを非公開で聞くのは、公平性の観点から問題があるのではないでしょうか。

 そこで、私たちは公開の意見交換会をお願いすることにしたのです。連名の団体と相談し特に「公平性」という言葉を強調した要望書にしよう、ということになりました。また、私たち団体だけではなくて、「意見を聞いてほしい様々な団体や個人にも同様に機会が与えられることも求めたい」ということにもなりました。意見を調整しながら1週間かけて、10月5日の以下の要望書提出に至りました。

                                        2012年10月5日

消費者庁長官 阿南 久様

                          NPO法人 食品保健科学情報交流協議会

公益社団法人日本消費生活アドバイザー・コンサルタント協会 食生活特別委員会

                                食のコミュニケーション円卓会議

                   一般社団法人FOOD COMMUNICATION COMPASS

 

    食品表示一元化検討会報告書と法案作成について

    公開意見交換会開催のお願い

 平素より消費者行政のためにご尽力頂き、誠にありがとうございます。

 さて、2012年8月9日に公表された食品表示一元化検討会報告書につきまして、一部の消費者団体がその内容を不服として、阿南久消費者庁長官との意見交換を予定していると報じられています。消費者庁食品表示課に問い合わせたところ、確かに「一部消費者団体からオファーがあったため、非公開で意見交換を行う予定である」との回答でした。

 しかし、意見交換を行う際には、特に鮮明な意見対立がある件などでは、公平性の原則に基づき、意見を申し述べたい他の団体等にも機会が与えられるよう、公開で開催して頂くのが公正な進め方だと私たちは考えます。

 食品表示一元化検討会について、国民の意見を聞いて、公開で意見交換会を行ったのは2011年3月の1回きりです。その当時の中間論点整理と最終報告書は内容が大きく異なっているにもかかわらず、最終報告書について国民の意見は求められませんでした。

 また、新法の法案作成にあたっても、国民の意見を聞く場は設けられない予定と聞いています。

 その中で、非公開で特定の団体の意見だけに阿南長官が耳を傾けるのは問題が大きい、と私たちは考えます。様々な団体、消費者、企業等の声を聞く機会を、阿南長官がご出席のもとで、改めて公開で設けてくださいますようお願い申し上げます。

 以上が要望書です。
 要望書にも示した通り、消費者庁は3月に「食品表示一元化に向けた中間論点整理」について意見交換会を開催していますが、その後、内容が大きく変わったにもかかわらず、国民の意見を聞くことをしていません。報告書をまとめた時も、これから食品表示一元化の新法を決める時も、これ以上国民の意見を聞くつもりは無いと言います。その理由について「国会という場で国民の代表が法案について審議をするのだから、パブリックコメントはもう必要ない」と消費者庁担当者は説明しています。

 そう説明する一方で、一部の消費者団体からオファーがあれば、長官が非公式に会って意見を聴こうとする、そのやり方がおかしいと思うのです。これらの団体のバックには、民主党の「市民とともに消費者行政を考える議員連盟(辻 恵会長)」がいて、ほぼ同じ内容で、食品表示に関する要請をしいます。政治圧力をバックにした隠された横槍によって、すべて公開のもとに決められた報告書の内容が干渉を受けるようなことは、あってはならないでしょう。

 このままでは、新法が公布されるまでの過程が不透明になってしまいます。私たちFOOCOMは、そしてほかの3つの団体は、これらの一方的意見が消費者を代表する意見として、ブラックボックスの中に取り込まれていくことを強く危惧しています。

 私たち4団体の他にも、意見のある団体や個人は他にもたくさんいるはずです。一部の団体の要望だけを今の段階で密室で聞くことになれば、それは消費者庁としての信頼を失うことにならないでしょうか。公開の場において、公平に意見陳述の機会が与えられる意見交換会をお願いしたいと思っています。(森田満樹)

執筆者

森田 満樹

九州大学農学部卒業後、食品会社研究所、業界誌、民間調査会社等を経て、現在はフリーの消費生活コンサルタント、ライター。