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消費者庁の食品表示法(上) 酒類の表示を含むことが明らかに

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2013年3月8日

消費者庁の「食品表示法(仮称)」の法案作成が、いよいよ大詰めを迎えている。法文は国会に提出されるまで明らかにされないが、このところ消費者庁は新法の骨格について、1枚の資料(下図)を用いて消費者団体や国会議員等に説明を行っている。それによると、新法には公に検討されていない様々な項目が盛り込まれることがわかった。

消費者庁は発足時から、消費者の声に耳を傾けて透明性を確保しながら、司令塔としての機能を果たすことが求められてきたはずだ。しかし情報公開が行われないまま、食品表示が決まってゆく。 これでよいのだろうか。

ここでは、消費者庁のその資料「食品表示法案(仮称・検討中)の骨格」を基に新たに加わった項目を中心に上・下2回にわけて考えたい。上編は酒類の表示、監視・執行体制について、下編は目的・基本理念、適格消費者団体の差止請求権について取り上げる。

「食品表示法案(仮称・検討中)の骨格」(平成25年2月消費者庁)

●酒類の表示が、新法の範囲に含まれる?

まずは、資料の左上欄の「食品表示基準」を見てほしい。「食品表示基準を策定・変更~財務大臣・厚生労働大臣・農林水産大臣に協議/消費者委員会の意見聴取」との一文がある。ここに「財務大臣」と新たに加わっているが、これは消費者庁の説明によれば「新法の中に酒類の表示を含むことを検討しているから」ということだ。

新法はこれまでもお伝えしてきたとおり、現行の食品衛生法とJAS法と健康増進法の3法の食品表示の部分だけを取り出して、1つにまとめる、とされてきた。酒類の表示は、酒税の保全及び酒類業組合等に関する法律で定められており、新法には含めないはずではなかったか。検討会でも議論をしていないし、報告書にも触れられていない。

これまで「新法に酒類の表示を入れてほしい」という要望は一部から出てはいたものの、それは退けられてきた。そこで私が思い出すのは、今は亡き神宮寺史彦審議官の2012年10月24日の消費者庁意見交換会における説明ぶりだ。

「お酒の話もございましたけれども、現在、酒税保全法のほうでは徴税上必要な表示義務にあわせて品質表示等といったような表示制度が両方設けられている形になっているということでございます。それは酒類も食品であるという意味においては食品に関する特別なルールが酒税保全法にあるということですけれども、それをたとえば食品表示法の中に入れて消費者庁に移管するということになりますと、地方機関を持っていない消費者庁に移管することによって、現在、全国津々浦々の地方機関を持っている国税庁が執行しているよりも執行が弱体化してしまう恐れはかなりある。そういったことは考えなければいけないと思っております。酒類の問題については、食品表示に関する法律と酒類の表示に関する法律を別々に設けている国は特に珍しくは無いかと思いますので、一部の食品について別法で規制すること自体はそれほど特異なことではないと思っているところでございます」

このとき、神宮寺審議官のご説明はもっともに思われた。それなのに、なぜこの期に及んで、新法に酒類の表示を含めることになったのか。

消費者庁に聞いてみると、そもそも、食品衛生法や健康増進法では、「食品」とは「全ての飲食物(薬事法に規定する医薬品及び医薬部外品を除く)」とされ、食品添加物の表示や栄養表示は酒類にも課せられており、酒類を除くとはされていない、という。

それでも腑に落ちず、さらに聞いてみると、酒類の表示を新法に含むことになってもJAS法の品質表示基準が適用されるわけではなく、これから細かいことを下位法令で検討していくことになる、ということだった。

現在、国税庁の酒税の保全及び酒類業組合等に関する法律では、いくつかの表示基準を規格のように定めている。たとえば清酒の品質表示基準では吟醸酒、純米酒、本醸造酒等によって書かなくてはならない表示項目が決まっている。新法で酒類を含むことになれば、今後はこうした表示基準や、他の酒類の基準について原材料をどう表示するのかといったことを、下位法令の中で検討していく可能性があるそうだ。検討は国税庁と協議しながら行わねばならず、このため「財務省との協議」と言う一文がこのペーパーで盛り込まれることになったのだ。

そうなると今後、たとえばアレルギー物質の表示についても消費者庁の議論の対象になるのだろうか。現在は、原材料に麦や乳製品を使用する場合があっても、表示義務の対象にならない。アルコールを飲むことにより、顔が赤くなる等の反応があるため、それが特定原材料の抗原性によるものかどうか判断できないという理由からだ。

一方、EFSAでは数年前からワイン製造時に清澄剤として使用される乳製品や卵製品などがアレルギー患者に対して影響がある可能性を指摘してきた。このため、EUのワインの表示規則は、2012年産ワインから醸造工程で使用された卵・卵製品、乳・乳製品の残留量が0.25㎎/ℓの検出限界を超えたものについて表示義務付けとなっている。今後、酒類が新法の範囲となれば、国際的な動向をみながら、品目ごとに現行制度が見直されることになるのだろうか。

それにしても、酒類の表示が食品表示法に移管することで新たな問題は起きないのか。現在の酒類の表示は、表示の内容について一つひとつ財務大臣にフォーマットに応じて届出をしなけれならず、監視・執行体制が厳しい。新法に酒類の表示が入ると、神宮寺審議官が懸念されていた「執行体制の弱体化」が起きうるのではないか。

執行体制だけではない。酒類と一口にいっても、品目によって消費者が求める表示は違う。酒類の中のどんなものに、どこまでの表示が求められるのか、実行可能性はどうなのか。大事なことがきちんと公の場で検証されないまま、新法の対象とされていくことが決まりそうなのである。

●監視・執行体制が厳しくなる

政策決定過程が不透明なまま決まりつつあるのは、監視・執行体制にも当てはまる。上記の骨格ペーパーによれば、左下欄に「指示等」「立入検査等」とあり、この部分は初めて見る内容だ。違反した場合の行政措置について、指示・命令・公表や、回収、業務停止命令のルールが定められている。JAS法だけに定められていた指示・命令の対象範囲が、拡充することになる。

さらに立入検査の権限も強化される。これによって、これまで現場の食品表示の監視機関(農政局、地域センター、保健所等)の対応も変わることになる。違反かどうかを調査するために、食品の表示に関して必要な報告や、帳簿・書類の提出等を求めることができるようになる。

現行のJAS法の違反については、全国の農政事務所等に所属する食品表示Gメンとよばれる監視員1400人(平成24年度現在)が対応している。彼らが立入検査の際に、これまでは書類の提出等の権限は無かったが、今後新法ができてからは権限が強化されることになる。

実は、検討会報告書では、監視・執行体制については全く触れていない。検討会では、複数の委員がこの場で検討することを求めてきたが、消費者庁は「執行体制については検討会でいろいろなご意見を頂いたが、基本的には行政部内で考えていく必要があると考えて、報告書には書いておらず議題にも挙げていない」と答えている(第11回食品表示一元化検討会)。

こうして行政部内で考えた結果、骨格ペーパーで明らかになったように新法には指示、立入検査、罰則が決められた。しかし、現場は対応できるのか。食品衛生監視員の勉強会などでは「現場では食品衛生の指導だけでも人手不足であり、新法のもとでの監視対応は難しい」という声を聞く。一方、食品Gメンの現場では「検査等の専門性を問われる監視対応は、ソフト・ハード面において課題がある」という。

手足(地方部局)を持たない消費者庁だからこそ、現場の声に耳を傾けて慎重に検討を行い、その内容を説明し、情報公開に留意しながら進めるべきではなかっただろうか。2012年11月には「新食品表示制度についての意見募集」が行われているが、その結果はまだ公表されていない。その時から内容も変わっているのに情報は公開されないまま、来月にも新法は国会に提出される予定である。(森田満樹)

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