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食品表示法成立、食品表示行政のこれまでと今後の課題

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2013年6月22日

 これからの食品表示制度の基盤となる食品表示法案が、6月21日参議院本会議で可決、成立しました。この日より30日以内に公布され、公布日から2年以内で施行となります。

 新法は、現行のJAS法、食品衛生法、健康増進法とバラバラだった食品表示の部分を一つにしたものです。複数の法律にまたがっていた表示基準や用語が整理され、消費者、事業者双方にとってわかりやすい表示になることが期待されます。

●消費者の要望を受けて食品表示法ができるまで

 これまで消費者団体は長年にわたって、食品表示の適正化を求め、法律を一つにすることを求めてきました。現在の食品表示の法律は、戦後間もなくできた食品衛生法やJAS法などで規定され、それぞれの目的、時代に応じて表示ルールが定められたものです。平成に入ってからは、添加物表示、原材料表示、遺伝子組換え食品表示、アレルギー物質の表示、原料原産地表示の義務付け拡大と、表示項目が大幅に増えてきました。

食品表示法ができるまでの食品表示行政

 しかし、表示項目が増えるにつれてわかりにくくなり、2002年に厚生労働省と農林水産省が設置した「食品の表示制度に関する懇談会」で、初めて法律の一元化が議論されました。しかし当時は、業界側、役所側の抵抗が強く、表示の一本化は不可能に思われました。

 その後、懇談会を引き継ぐ形で「食品の表示に関する共同会議」が開催され、2002年から2009年まで45回にわたって食品表示のあり方について議論されてきました。たとえば、賞味期限と品質保持期限という二つのことばを賞味期限に統一するなど、少しずつ改善も進められてきました。

 そして2009年9月に発足した消費者庁が、食品表示に関する規制と事務を一元的に所掌することになり、様々な検討を経て策定された食品表示法案が今国会で成立したのです。このように、戦後できた食品衛生法、JAS法などが、消費者庁のもとで食品表示法という新しい法律に生まれ変わったことは、食品表示行政の歴史上からみても大きな転換点であることがわかります。

●新法の基本理念は、消費者と事業者の両方に配慮

 今回、成立した食品表示法案は、全部で23条からなります。第1条は目的、第2条は定義、第3条は基本理念、第4条は表示基準をつくること、第5条はそれを守ること、そして第6条から指示、取締、それに従わなかったら命令できるということが書かれています。また11条が適格消費者団体の差止請求権、第12条が申出制度、雑則と続きます。第17条以降は罰則となります。

 この中で消費者、事業者双方にとって重要なのは、第3条の基本理念です。これは、現行の食品表示に関する法律のどれにも書かれていない条文で、消費者庁は、消費者基本法を踏まえることが原則なので、消費者基本法の基本理念第2条をそのまま持ってきています。この中に、消費者の「権利の尊重」と「自立の支援」が盛り込まれています。

 食品表示法案は個別法であり、事業者に義務付けさせる表示内容を定めるものです。ここに「権利」という言葉を入れると、「情報の開示の徹底を求める」のが消費者の権利となり、これが行き過ぎると事業者の権利や公正な競争の確保が阻害されることにもなりかねません。

 そこで基本理念には事業者にも配慮するという条文が盛り込まれることになりました。これが第3条2の「小規模の食品関連事業者の事業活動に及ぼす影響に配慮」や「食品関連事業者間の公正な競争の確保に配慮」です。

 このような経緯から、基本理念に「消費者のため」と「事業者への配慮」という観点が盛り込まれることになったのです。このことは、国会の審議中も複数の議員が取り上げており、消費者庁としてはどちらに重きをおくのか、落としどころをおくのか問い質す場面が何度もみられました。

 これに対して森まさこ国務大臣(消費者及び食品安全担当)は、「消費者と事業者はWIN-WINの関係である」「どちらも大事」「車の両輪である」とこたえています。答弁では「小規模事業者の配慮」と「消費者の権利の尊重」を並列に位置づけていることがよくわかり、表現は異なりますが基本はぶれませんでした。

 国会の質疑でもみられたように消費者と事業者は対立するものと思われがちです。しかし、これから具体的な食品表示の検討が行われる中では、わかりやすい表示を目指して力を合わせて協働をしていくことが求められるでしょう。両者を「車の両輪」と位置づけ、その中で解決策を見出していこうという森大臣の基本姿勢が今後も変わることがないよう、見守ってゆきたいと思います。

●今後の努力目標として出された附帯決議

 食品表示法案は4月5日に閣議決定された後、5月に衆議院、6月に参議院の消費者問題に関する特別委員会で審議が行われました。本会議もあわせると、今国会で食品表示法案に費やされた時間は20時間弱となります。

 衆参を通して様々な質問が出されましたが、このところ食物アレルギーについて関心が高まっていることから、この問題について多数の議員から質疑が出されました。食品表示法案では、第4条の表示基準の中に食物アレルギーに関する記述が入っていなかったことから、衆議院では議員による修正案が出され、第4条の食品表示基準の中に「アレルゲン(食物アレルギーの原因となる物質をいう)」という言葉が入ることになりました。

 さらに執行体制の一元化を求める意見も多く出されました。食品表示法案では、第6・7条で指示、命令、公表について、第8・9条で立ち入り検査について定められていますが、現行の法律よりも規制強化となり、罰則も厳しくなっています。これらを実効的なものにするために、地方の執行体制の手足を持たない消費者庁がどこまでできるのか、問い質すものでした。

 他にも食品表示法には様々な注文がつきました。これらが附帯決議として衆議院では11個参議院では12個が出されています。附帯決議には、法的な拘束力はないものの、今後の努力目標のような位置づけとなります。それにしてもこんなにたくさんの附帯決議がつく法律は、珍しいものです。

 衆参の附帯決議の内容の多くは重なっていますが、意見として強く出されたのが、一元化検討会で先送りされた加工食品の原料原産地表示のあり方、中食・外食のアレルギー表示、食品添加物のあり方について速やかに着手し、スケジュールを具体的に示せ、というものでした。

 さらに、消費者教育の拡充や製造所固有記号についての検討、TPP交渉にあたって遺伝子組換え食品の表示について万全を期すこと、執行体制を充実強化させて問い合わせ等のワンストップ体制を早急に実現すること等が附帯決議に盛り込まれました。

 また、参議院の附帯決議が一項目多いのは、トクホや栄養機能食品、いわゆる健康食品について今後の表示のあり方や広告の適正化について検討を求める内容が加わったからです。

●食品表示制度に求められること

 食品表示法案の国会の審議過程では、「単に3つの法律をくっつけただけで、大事なことは何も決めずに先送りしているではないか」という意見も多く聞かれました。

 確かに新法は具体的なことには触れていませんが、それもっと大きな考え方、食品表示を規定する際の「基本理念」や「執行体制」などの枠組みについて定めたものだからです。(唯一、具体的に決めたのは栄養表示を義務化することで、これは新法施行後5年以内に原則として全ての加工食品に栄養表示が付けられることになります)。

 食品表示法成立で、まずは器ができあがりました。これからはそのなかみ、下位の内閣府令や告示レベルの表示基準として、たとえば原料原産地表示や食品添加物表示、わかりやすくするための文字の大きさといった具体的な表示基準を検討していくことになります。消費者庁はこれから数年間、なかみづくりに追われることになるでしょう。

 21日に法案が可決され、食品表示法が成立した直後の記者会見で、森大臣は「長い間の課題だったがようやく、一歩進むことができる。今後は、消費者団体など関係者の意見をしっかりと取り入れ、できるだけ早く、取り組みを進めたい」と答えています。

 中でも、中食・外食のアレルギー表示の検討については早急に着手されることになりそうです。森大臣は「小規模事業者の多い中食・外食では、厨房でのコンタミネーションが起こりやすく管理が難しい。表示を行うためには、その食品においてアレルギー物質の含有の有無を正確に把握したうえで表示を行うことが不可欠で、今後実態調査を行い、しっかりと検討する」と答えています。事業者の実行可能性に配慮しながら、議論が進められることになります。

 原料原産地表示や食品添加物表示も取り組みが進められることになりますが、その際には消費者ニーズはどこにあるのか、どこまでの表示の開示が可能か、コストはどうか、検証できるのか、様々な観点で議論が進めてもらいたいと思います。事業者の実行可能性が担保できなければ、過度な負担となり、値段が高くなったり、偽装表示につながったりして、結局は消費者の不利益となります。ここでも消費者と事業者を「車の両輪」とする基本スタンスは重要です。偏った議論にならないよう、消費者庁、消費者委員会には十分に説明を行いながら進めることを求めます。

 食品表示法が成立したことは喜ばしいことですが、これによってすぐに食品表示がわかりやすくなるわけではありません。私たちが食品表示を活用するためには、その表示が何を意味するのか、私たち自身も引き続き学んでいかねばなりません。

 FOOCOMも、わかりやすい食品表示のあり方について、これから積極的に情報発信をしてゆきたいと思っています。(森田満樹)

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