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「放射能汚染と食品の安全について」メディアとの情報交換会

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2011年4月12日

 (財)食の安全安心財団食の信頼向上をめざす会主催の「原発事故による放射能汚染と食品健康影響評価について」と題するメディアとの情報交換会が4月7日、都内で開催された。厚生労働省、食品安全委員会の担当者が現状の説明を行った後、同会の唐木英明・東京大学名誉教授が解説し、集まった記者らと質疑応答が行われた。当日の概要について、抜粋して紹介する。

◆「放射能汚染された食品の取り扱いについて」現状の説明

 

厚生労働省食品安全部企画情報課課長補佐 佐久間敦氏

(1)放射能汚染された食品の取り扱いについての措置

3月17日に暫定規制値を明示し、これを上回る食品についての規制を実施した。

(2) 食品衛生法上の取り扱い、暫定規制値について

3月29日食品安全委員会「緊急とりまとめ」を受け、4月1日原子力災害対策本部の見解、4月4日薬事・食品衛生審議会食品衛生分科会「食品中の放射性物質に関する当面の所見」より、当分の間、暫定規制値を維持していくものとする。

(3)モニタリング状況

出荷制限をされている地域について全てHPで公開している

(4)出荷制限の解除の考え方

原子力災害対策本部の考え方を紹介

(5)魚介類、魚の放射性物質の取り扱いをどうするか、

薬事・食品衛生審議会が開催された当日3時ごろ、茨城県のコウナゴからヨウ素が検出されたが、魚介類の暫定規制値は設定されていなかった。その後、原子力災害対策本部を通じて、原子力安全委員会の助言を受け、5日魚介類の放射性ヨウ素に関して部長通知を出した。8日薬事食品衛生審議会の中に放射性物質対策部会を設置し、議論する。

厚労省の東日本大震災関連情報

◆「放射線物質の指標値について」

食品安全委員会リスクコミュニケーション官 新本英二氏

3月29日にまとめた「放射性物質に関する緊急取りまとめ」について、経緯とポイントについて説明、今後はワーキングを設置して引き続き継続してリスク評価を行っていく。

食品安全委員会・東北地方太平洋沖地震の原子力発電所への影響と食品の安全性について

 

◆「放射能汚染と食品の安全について」

東京大学名誉教授・日本学術会議副会長・元東京大学アイソトープ総合センター長 唐木英明氏

 食の緊急事態はこれまで一度きり、BSEの時で、この時は食品安全委員会ができ食品安全基本法ができて、世界的にも大きな問題であった。これに匹敵するような事件は二度と起こらないだろうと思っていたら、今回の問題ができてきた。BSEのときにつくった教訓、その時の精神が試されていると思う。

 放射性物質の安全性について、メディアの取材を受けるが、とてもわかりにくいと言われるので最初に基本的な話をしたい。放射線の影響は大きく分けて二つある。一つは大量の放射線を浴びると、吐き気、下痢、頭痛、やけど、白血球の減少などの急性の症状がでてくるが、これはがん以外のリスクでこちらは閾値がある、閾値というのはこの場合約1000mSvで症状がでるがそれ以下では出てこない。

 2番目の放射線のリスクは、がんのリスク。年間、1000 mSvでゆっくりと浴びた場合は5%、急激に浴びたら10パーセントがんのリスクが増えると言われている。人間は必ずがんになる、年間30%くらいが致死性のがんで死ぬが、致死性でないものをいれると50%くらいの人がかかる。普段かかるがんの上に、放射線のリスクが加わるということになるが、そもそもこのゼロ点がふわふわ動いていてぴったり30%ではない。年間のがんの死亡率は毎年変わる、その上にこのリスクが加わる。

 科学的には100 mSv以上の放射線を浴びた時に、放射線の量とがんのリスクの相関がみられるというデータがある。しかし100 mSv以下のわずかな放射線量になると、もともとわれわれがもつがんのリスクか、放射線のリスクかどうかわからなくなる。国際的には予防原則で、ここには直線的な関係がずっと続いているという閾値がないという考え方だが、しかしこれには反対意見もたくさんある。

 100 mSv以下でみると、放射線量の多い地域で暮らしている人ががんになるのか、というとかえって長生きをするという統計もある。これをホルミシス効果という。放射線を浴びてなぜがんになるかというと、活性酸素ができてがんになる。少量を浴びると少量の活性酸素ができ続けるが、われわれの身体は活性酸素消去能をもっておりそれが活性化されて、大量のものができても対抗できるようになるという。それがホルミシス効果で、つまり少量のストレスをいつも浴びていると、大きなストレスに耐えられる身体になる、という学説である。

 そうなると、低線量の放射線で、がんのリスクを考えると、放射線の量が下がっていくと直線に落ちるのではなく、平らになるところがあるという考え方、つまり閾値があるという考え方が真っ向から対立している。その辺が食品安全委員会では十分に審議をしなかった、今後の宿題ということになった。そこを10 mSvか、5か1か、という大きな議論の分かれ目になったが、その議論をしなかった、ということが本日の緊急事態のご説明となっている。

 われわれは過去にどのくらいの放射線を浴びてきたのか。気象庁がずっと出してきたデータをみると、実は1955年当時、米ソ、イギリス、が大気圏内で核実験を行ってきたので、東京では現在の10万倍浴びていた。このくらいの放射能はわれわれは浴びても平気で耐えうる。このグラフをみると、1986年にボンと増えているのがチェルノブイリ事故だが、福島原発の際には一時的にこの辺までボンと増えたが翌日以降は減少している。

 本日は国立保健医療科学院の山口先生に解説をお願いしようと思っていたが、急きょこられなくなったので、いくつかのQAをつくって頂き、手元のスライドにまとめた。「なぜ基準がバラバラで違うのか」「日本の基準が甘すぎるのではないか」という意見について回答をまとめている。食品安全委員会で議論されている最中も10mSvでもいいのではないか、という意見が出てきたときには、食品安全委員会に「お前らは人殺しか」というメールがどっときた、という話も聞いている。5mSvでも10 mSvでもどうってことないことは、先ほどのスライドでもお示ししたとおりである。その辺の誤解が大きい。

 意見の中には、放射線は怖いのだから線量低減のためにあらゆる手段を講じるべきだという意見もあって、これは閾値が無いという考え方に基づいているのだが、これに対しては実現可能だろうか?われわれは自然放射能も浴び、ラドン温泉では低線量を浴びている。

 「どこからの量が危険か?」という問いに対しては、先ほどの閾値があるか、ないか、どちらを取るかで答えが異なる。いろいろな経験から見て100 mSvまではほとんど障害がないという事実をどう考えるのか。

 過去の事故との比較について、放射性物質の環境放出量をみると、チェルノブイリ事故の際はヨウ素131は3000P(ペタ=10の15乗)ベクレル、セシウム137は300Pベクレル、スリーマイル島事故ではヨウ素131は600G(ギガ=10の9乗)ベクレルとなっている。チェルノブイリの際に小児の甲状腺がんが問題になったのは、汚染地域に人が住み続け、牛乳や食品などに蓄積されたものを規制もせずに摂取し続けて起こったことである。今回の福島でどれだけ出たかはまだわかっていないが、こういう数字の比較も一つの参考になるだろう。

◆質疑応答(抜粋)

Q) 今回の暫定基準値が作成された経緯は、ICRPのデータをただもってきただけ、きちんと議論した形跡がない。この値をずっと厚生労働副大臣は使い続けるのか、あくまで暫定で、今後きちんとした基準値を作るつもりがあるのか。

A)(佐久間氏) 食品安全委員会に今後も評価をお願いしている途中である、正式な形はまだ議論が必要だが、緊急のものとして出している。食品安全委員会で改めて評価が出た段階で、その時に再度検討を行って、暫定がとれるのか、新しい基準を作るのか、ということを決める。

Q) 自治体の検査について、しているところ、してないところ、品目もばらつきがあるが、自治体の判断にゆだねられているのか。検査機関の今後の見通しをどう考えたらいいのか。

A) (佐久間氏)検査を自治体に任せるのかということは、食品衛生法上の措置について都道府県知事の権限になっている。各自治体の権限で必要な場合、たとえば流通量が多い場合などをみて検査されている。4日の段階で原子力災害対策本部のほうで、解除の基準が示されているので、それについて各自治体でどういってやるのか、計画を立てて進めてもらいたい。検査機関のキャパが足りているかどうかというだが、基本的に自治体で実施可能な検査機関を確保していただくが、不足している場合は国の機関がいくつかあるので、ご紹介して支援していく方向である。

Q) ICRPの資料の中で、100 mSv以上でがんのリスクがでる、それ以下でわからなくなるという一方で、放射線はできるだけとらないほうがいい、1 mSvという勧告もあった。その整合性をどうとるか。100ミリ以下で健康に影響はないのか、1mSvがいいか。

A) (唐木氏)これをどう整理するのか一番難しい。実態は広島、長崎の被爆データやチェルノブイリのデータ、放射線量の高いところで暮らしている人のデータがある。そこから100 mSv以上の量では、がんのリスクと相関がある。100 mSv以下では自然発生のがんの中に隠れて、全く見えなくなる。全く見えないものを、どうやって科学的に判断するのか、そのところで科学の世界が真っ二つに別れている。かたや直線的に増えていくので低レベルでも当てはまるという考え方、もう一方では低レベルで放射能を浴びている人の方が、むしろがんが少ない、長生きするというデータもある。ただし、そのデータの信頼性についても議論がある。がんは、生活習慣、一番大きな煙草の問題、いろんなもので変わってくる、どれが放射線の影響なのか、見極めるのはきわめて難しいという事情がある。

 科学的には、そこのところが真っ二つに分かれて、大論争をしている。大論争をしているときに、やはり予防原則から厳しい方をとるべきだろうというのが、今の一般的な考え方である。ただ厳しい方をとって、規制をすればするほど費用がかかる。規制値を超えたから出荷できなくなった、食べられなくなったといったようないろいろな費用がかかる。だから無駄な費用をかけないために、無駄な規制をするべきではないという考え方もある。今のところ、科学の世界で統一した見解が出ないので、規制の世界では仕方ないから厳しい方を取ろうということだ。一方で規制の世界でも緩めたらどうかという考え方もある。

 科学の世界ではALAPという考え方がかつてはあった。これはAs Low As  Practicable、あらゆる被ばく線量を実行可能な限り低く保ち、不必要な被ばくは全て避けるようにするという考え方だが、今はALARA As Low As Reasonably Achievable、合理的に達成できる限り低く保たなければならない)に考え方が変わってきた。今後どうなるのかということは、科学の世界で決めていなかくてならないと思う。

 WHOが飲料水で0.1mSvこれが一番厳しい考え方であり、ICRPは緊急時は100mSvでいいという考え方をとっている。それは何を目的にしているのかによって異なる。ここで評価するのは科学だけだが、科学の世界が割れてしまっている場合は、そこで管理をどうするのか、そこで大事なのは民意である。人々がどうしたら満足するのか。また、大事なのは経済が成り立つか、技術的な可能かどうかという点も重要となる。リスク管理機関が目的によって管理の値が異なるのは、ある意味で当然である。繰り返すが科学がきちんと答えを出さない限りは、こういう状況は続くだろう。

Q) 官房長官の発言は、人命に影響はないが出荷は停止するよう指示するという、極めて矛盾した表現は、科学者の論争という視点からみると理解できるが、一般国民がどうやったら理解できるのか。

A)(唐木氏) 「ただちに健康に影響がない」ということばは、官房長官が使う以前から厚生労働省も農林水産省も使ってきた。これは化学物質についても今回も、規制値はすごく厳しいところで決めている。規制値をちょっと超えて健康被害が出ては困るので、健康被害が出る数値に比べて化学物質の場合には100倍以上厳しい安全領域をとって、100分の1以下で規制値をつくる。だから、この規制値を超えても絶対に健康に被害はない。しかしこれは法律違反であり、法律違反のものを絶対に健康影響はない、というと自己矛盾になる。だから仕方なく「ただちに健康に影響はない」といってごまかしているのではないか、というのが私の考えである。放射線物質の場合は、直線的に考えると閾値が無いので、ゼロになるまではわずかであってもリスクは存在する。そういう意味で、「ただちに」はないけど数十年たったらひょっとしたらリスクが出るかもしれないというのは、あり得る理論である。ただあくまで理論であって、実際にそう思っている人はほとんどいない。

Q) 出荷停止する指示をした場合に経済的損害が起こるが、出荷停止されていない福島ブランドの商品が入荷されていないし茨城県域の魚も同じ、広い意味での風評被害が起こっている。国としてこのリスクをどう担保するのか。

A)(唐木氏) 風評被害を防止するのは、どうしたらいいのか。風評被害はなぜ起こるのか。実は大きな事件が起こっただけでは風評被害は起こらない。自分が被害を受けるのではないかと思った時に起こるもので、これは管理している政府や国を信頼できるかどうかで決まる。風評被害を起こさないためには、政府、国が、われわれ行っている管理は完ぺきだ、あなたたちに絶対に被害は及ばないと言えば、風評被害が起こらない。ある意味では、県単位でぼんと出荷を止めたのは風評被害対策としてはやむを得ない。ただし風評被害対策には必ず犠牲者がでるので、それは完全に保障しなくてはならない。

 もう一つは安心対策だから、危険だから止めるのではない、心配するから一応止めるが、こういう条件だから解除するということを明確にして、なるべく短期に解除しなければならない。風評被害対策はこれまでもいろいろとやられてきたが、なかなかうまくいっていないのが残念である。

(事務局・森田満樹)

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