科学的根拠に基づく食情報を提供する消費者団体

執筆者

松永 和紀

京都大学大学院農学研究科修士課程修了後、新聞記者勤務10年を経て2000年からフリーランスの科学ライターとして活動

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消費者委員会・原料原産地表示拡大の進め方に関する調査会第4回会合〜表示拡大へ向けた議論進まず

松永 和紀

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 消費者委員会・原料原産地表示拡大の進め方に関する調査会の第4回会合が5月16日、開かれた。調査会は、加工食品の原料原産地表示の義務付けの拡大を進めて行くにあたり、義務表示対象品目を選定する際の基本的な考え方や対象品目の候補の選定方法などを検討するために昨年12月、設置されたもの。これまでの3回の会合では、主にヒアリングが行われ、4回目の16日は、座長(田島眞・実践女子大学生活科学部教授、同庁食品表示部会の部会長)による取りまとめに向けた「たたき台」が示され、論点整理が始まった。だが、そもそも現時点で表示拡大へ向かうべきなのかどうか、という点から委員の意見が対立し、議論は進まなかった。

たたき台

 たたき台は、方向性として(1)原料原産地表示は、消費現場での食品選択時に役立つものが求められる(2)わかりやすさが求められる(3)国際食品規格(Codex)準拠が求められる(4)事業者によるコスト負担や単純ミスによる食品回収等を考慮し、実行可能性が求められる―の4項目を挙げている。さらに、「議論する必要がある各論」として、「原料が頻繁に変わる場合の表示のあり方」や「現行の50%ルール(製品の原材料のうち単一の農畜水産物の重量の割合が50%以上のものを表示対象とする)を見直しするかどうか」などを列挙している。

 この日は、座長が出席した5人の調査会委員と1人の消費者委員会委員に、たたき台についての意見を求めた。消費者委員会委員はあまり発言せず、5人の調査会委員の意見は多くの項目において二手に分かれ、歩み寄りはまったくなかった。
 そもそもの「原料原産地表示の拡大」において、2人の委員は拡大の必要性を強調した。50%ルールに隠れて、消費者が「国産」などと信じ込んで知らないうちに輸入食品を食べている現状を訴え、「実態を消費者に知らせるために、原料原産地表示を拡大すべき」などとした。一方、3人の調査会委員は「長期的には拡大の方向で正しい」としながらも、「現在の消費者の要望は高くない。関心が持たれていない」として、検討の優先順位が低いとする見方を示した。
 そのほかの細かな項目においても、消費者に情報を提供し選択肢を明確にするという観点から拡大・充実を求める委員らと、それによるさまざまなデメリット(消費者に分かりにくくなることやコスト増等)を懸念する委員らとの意見が対立した。

 今後のスケジュール案では、6月8日16時半から2回目の論点整理を行い、7月6日14時から報告書とりまとめを行うとされている。

 配布資料は、消費者委員会ウェブサイトの食品表示部会、原料原産地表示拡大の進め方に関する調査会のページで公開されている。

執筆者

松永 和紀

京都大学大学院農学研究科修士課程修了後、新聞記者勤務10年を経て2000年からフリーランスの科学ライターとして活動