科学的根拠に基づく食情報を提供する消費者団体

執筆者

森田 満樹

九州大学農学部卒業後、食品会社研究所、業界誌、民間調査会社等を経て、現在はフリーの消費生活コンサルタント、ライター。

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厚生労働省・薬食審・食中毒・乳肉水産食品合同部会開催

森田 満樹

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 生食用食肉の安全確保対策について話し合う厚生労働省の薬事・食品衛生審議会食品衛生分科会 食中毒・乳肉水産食品合同部会の初会合が、6月28日(火)開催された。(当日の配布資料

 本部会では、今年10月1日の施行を目標とする「生食の規格基準」について、主に検討が行われた。規格基準の検討に入る前に、厚労省が今回の食中毒事件の発生状況と原因究明調査、国および地方自治体の対応等について、説明した。また、平成10年(1998年)に衛生基準を設けた経緯、衛生基準が守られているかどうかについて5月に都道府県が行った緊急一斉調査結果の内容も、紹介した。その後、新たに定める規格基準について、対象となる動物・部位と、微生物について検討を行った。

*規格基準は牛肉のみを対象とし 二つの対象微生物とする
 
 事務局が示したたたき台は、生食用食肉として馬肉および牛肉を検討対象とするもので、これらの食中毒発生状況、汚染実態について説明を行った。この中で馬肉については、寄生虫を除いて危害が高いものは認められないことから、今回設定する規格基準は牛肉のみを対象とすることになった。また対象とする微生物は、腸管出血性大腸菌及びサルモネラ属の二つとした。

 専門参考人の岩手大学農学部の品川邦汎・特任教授は「馬は病原菌をそんなに保有しておらず、事件もあまりなく、実際は寄生虫の問題だろう。牛は腸管出血性大腸菌が主な問題だと思う」と述べた。また、国立医薬品食品衛生研究所の小西良子・衛生微生物部長は「牛と馬に同等に規格基準を設けるかどうかについては、分けて考えるべき。馬の場合は危害が出るとしたらサルモネラだが、既に衛生基準通知で整理されており、衛生基準が守られている。それを踏まえると馬肉は今回の議論から外してもよい」と述べ、今回の規格基準は牛に絞られることで確認を行った。

*レバーの生食も検討を行う
 
 今回、事務局が示したたたき台は、対象として牛肉を検討することになっており、レバーや鶏肉については追って検討することになっている。これについて、全国消費者団体連絡会の阿南 久・事務局長が「規格基準ができるまで、牛レバーを禁止してほしい」と主張し、複数の委員からも牛レバーについて何らかの規制を行うことが必要ではないかとする意見が出た。
 一方で「緊急性を考えると今回2回で牛肉に絞って議論を行い、レバーの規格基準は落ち着いてやったほうがいい」「法律に基づいて禁止扱いにするのは、相当の根拠が無いと無理」「既に通知は出されているので、自治体で行政指導を強化したらいいのではないかと思う」「牛レバーだけ禁止というのは短絡的」と言った意見が他の委員から出され、意見は大きく分かれた。

 事務局は「今回は緊急に規格基準を作るということで、食肉の生食を検討することになっているが、他のものについては結論の中で、付帯事項として盛り込む形で出してもらいたい」と回答した。次回、レバーに関するこれまでのデータを出され、検討が続けられる。

*生肉調理者資格についても検討

 その他の項目として、小西委員が「生肉を扱う調理者について、ふぐの調理者のように資格を与えて適切な処理をできるようにするといったことを、この対策の中に盛り込めないか」と述べたが、事務局は「ふぐ調理者は地方で条例として定められたもので、食品衛生法上の制度はない。ただ、食品衛生法では食品衛生管理者として施設に置かねばならないという規定があり、これに適するかどうかは議論してもらえればと思う」と答えた。

 次回の部会では、現在研究が行われている表面加熱処理について規格基準に盛り込むかどうかも検討され、2回の議論を経て新しい規格基準を含めた「生食用食肉に関する安全確保対策」としてまとめられる。この案が7月中に食品安全委員会に諮問、その後の答申と法的手続きが順調に進めば、10月の施行に間に合うことになる。(森田満樹)

執筆者

森田 満樹

九州大学農学部卒業後、食品会社研究所、業界誌、民間調査会社等を経て、現在はフリーの消費生活コンサルタント、ライター。