科学的根拠に基づく食情報を提供する消費者団体

執筆者

松永 和紀

京都大学大学院農学研究科修士課程修了後、新聞記者勤務10年を経て2000年からフリーランスの科学ライターとして活動

特集

どうなる?「食品表示一元化」ー消費者団体の大暴走

松永 和紀

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 食品表示一元化検討会が「中間論点整理」を出し、パブリックコメントを募集中だ(4月4日まで)。3月23日には意見交換会もあり、応募した消費者団体や事業者団体、企業などが意見を表明した。
 中間論点整理は非常にわかりにくいもので、多くの消費者、事業者共に対応に苦慮していることだろう。意見交換会も、一部の消費者団体の意見ばかりが目立つ、いびつなものだった。本特集で、食品表示の議論において今、起きていることを知ってほしい。

特定の消費者団体が主張を大展開した意見交換会(松永和紀)

 食品表示一元化検討会の「中間論点整理に関する意見交換会」が3月23日、東京で開かれた。
 私は所用で意見交換会は傍聴できず、傍聴した方に音声データをいただき聞いた。正直に言って、「これは大変なことになりそうだ」と強い懸念を抱いた。今のままでは、中小、零細業者や一般消費者が気付かぬうちに、科学的妥当性がなく多くの事業者が実行できないのに、うわべだけを取り繕った表示制度ができてしまう恐れがあるのではないか。現実にそぐわず、事業者が守れない法律は、業者の不正を誘発する。その結果、被害を被るのはやっぱり消費者自身である。


別の団体に見えて、根元は同一

 中間論点整理については、Foocomでは既に小比良和威さんが「食品表示・考」でまとめてくださっているので、そちらを見てほしい。
 論点を全部、投げ出して見せているような中間論点整理には唖然としたが、意見交換会はさらに、すさまじかった。

 同じ消費者団体で活動してきた人たちが、いろいろな団体名でそれぞれ別個に出てきたのだ。例えば、意見を述べた「食の安全・監視市民委員会」「遺伝子組換え食品いらない!キャンペ—ン」「市民バイオテクノロジー情報室」は全部、事務局が日本消費者連盟内にある。もちろん、この人たちとは別に同連盟事務局長も、きっちり意見陳述する。さらに、「ふーどアクション21」として意見を述べた人も、同連盟幹部である。

 また、「食品表示を考える市民ネットワーク」も意見を述べたが、大河原雅子・参議院議員がブログで公開している資料によれば、その構成団体は、食の安全・監視市民委員会/主婦連合会/NPO法人食品安全グローバルネットワーク/生活クラブ事業連合生活協同組合連合会/グリーンコープ共同体/株式会社大地を守る会/NPO法人日本消費者連盟/遺伝子組み換え食品いらない!キャンペーンである。
 この中からは、生活クラブ事業連合生活協同組合連合会、主婦連合会もそれぞれ今回、意見陳述している。

 結局、多様なグループがそれぞれ意見を出したように見えて、ほとんど根元は一緒なのだ。出している意見もほぼ同じ。「消費者の選択の権利」の保障を目的にかけ/原料原産地表示を義務化しろ/栄養表示を義務化しろ/遺伝子組換えの表示制度を検討会で議論しないのはけしからん。検討しろ―というのが共通の中味である。何人かは、放射能汚染についてもとりあげ、「基準値以下のものもベクレル表示しろ」と主張していた。

 根元は一緒になのに、たくさんの団体が声をあげている、と見せかける。これは、“団体原産地偽装”では? なんてことを書くと、「それぞれ別個に活動実績があります。なんてことを言うんですか!」と怒られそうだが、原産地ロンダリングをしながら原産地表示を要求する構図は、彼らの本質を表しているように思えて仕方がない。

 意見を述べた消費者系団体の中で、これらと異なる主張をしたのは、「食物アレルギーの子を持つ親の会」のみであろう。
 こうした意見交換会、公聴会でわざわざ意見陳述しようとする消費者は往々にして、運動を展開する特殊な「消費者」なのだが、今回は特に、顕著な形でいびつさが表れてしまった、と私は思う。

事業者側の状況説明には、説得力があった

 こうした消費者系団体とは結果的に対立する形で、事業者側の団体、企業なども意見を述べた。個人的には、事業者側の意見には説得力がある、という印象を受けた。

 たとえば製粉協会は、小麦粉において重要なのはタンパク質の量と質であることを詳しく語った。同一産地、銘柄であっても作柄や運んでくるロットによってこれらが変わるため、その都度配合比率を変更する必要がある。原料原産地表示が義務化されると、影響は甚大であり、消費者にとっても不利益になるという。

 社団法人日本果汁協会も、日本でジュースを安くふんだんに飲めるのは、さまざまな産地から濃縮還元果汁を調達して品質も調整しているためであることを説明した。一方、国産果汁の生産量は安定しておらず、あてにすることが難しい。そのほか、さまざまな理由により、原料原産地表示が義務化されるとかえって、国内産業の空洞化を招く恐れがあるという。

 また、弁当惣菜業者や全国和菓子協会なども、それぞれの状況を説明した。
 事業者側がほぼ共通して主張したのは、拙速の議論をするな/原料原産地表示や栄養表示の義務化や適用拡大は実行するのが難しい/無理に実行すればコストがかかり、結局は消費者の不利益になる/自主的な取り組みで表示の充実を図りたい―である。

 とりわけ、社団法人日本植物油協会の代表者の発言が印象的だった。「表示一元化であらゆる問題が解決するという共同幻想を作り上げている」と指摘し、消費者庁や食品表示一元化検討会の姿勢も問題視したのだ。

だが、消費者庁は、“消費者”の利益を優先

 意見の内容では、表示を具体的に実行する立場の事業者側に十分な説得力がある。しかし、消費者団体が「消費者の選択の権利の保障を」「原料原産地表示や栄養表示の義務化を」「遺伝子組換え表示を議論の俎上に」と同一の主張を繰り広げた、という事実を、食品表示一元化検討会、消費者庁はもはや、無視することができないだろう。それが実質的には、一部の消費者団体の主張であっても、表向きは、消費者がみんなで口を揃えて、なのだ。

 いみじくも、「市民バイオテクノロジー情報室」の代表者が意見陳述の中で述べていた。消費者庁の「安全・安心・豊かにくらせる社会に」というパンフレットの中で、消費者庁自らが「消費者庁は、消費者、生活者の権利とはなにかを第一に考え行動する機関」と述べているという。正確には、「消費者庁は、消費者・生活者の利益とは何かを第一に考え行動する行政機関です」という記述である。

 食品表示は、本来科学的根拠を持たねばならず、公平性がなければならない。しかし、現行の表示制度、特に消費者庁が所管するようになってから決まった黒糖、昆布巻きの原料原産地表示義務化は、事実上、国内産地と消費者団体から要望があったために表示義務化が決まったもの。なぜ黒糖と昆布巻きなのかを科学的に説明することはできない。

 もはや、現行の表示制度は科学ではなくなっており、「だれかが強く望めば……」という流れが既にできつつある。そして、今回の意見交換会では、ごく一部の消費者団体の意見が「消費者の声」として表明された。一方、運動をしていない消費者の声、「それほど複雑ではなく見やすい表示の食品を、ほどほどの価格で提供してほしい」という普通の市民の感覚、おそらくサイレントマジョリティの願いは、意見交換会では出てこず、食品表示一元化検討会や消費者庁には届いていない。業界団体が「消費者は、詳細な原料原産地表示など望んでいない」と代弁しただけである。

 不幸な「消費者vs.事業者」の構図がまたも描き出され、消費者庁は消費者の利益を優先する。私に言わせれば、「特殊な消費者団体vs.<事業者+サイレントマジョリティ消費者>」なのだが、サイレントマジョリティの姿は見えてこない。となれば、食品表示一元化は……。

消費者、事業者双方が納得できる食品表示は…

 非常にまずい事態になっている、というのが私の見方だ。このFoocom.netも、普通の市民や中小、零細事業者に情報を届け、その声を社会に出す役割を担わなければならないはずなのに、まったくできていない。改めて、そう反省するばかりである。

 サイレントマジョリティが望んでいない、中小零細業者には実行不可能な制度が論議不足のままできるのは、なんとか避けたい。食品表示一元化検討会は、6月には報告書を出すとしているが、拙速にならず、落ち着いて検討してもよいのではないか。食品表示一元化検討会と消費者庁が、うわべの消費者の声と「多数決」に引きずられるほど愚かではない、と思いたい。検討会委員で現在は米国に出張中のFoocom事務局・森田満樹にも、後半戦は頑張ってもらわねばならないだろう。

 まずは、中間論点整理のパブコメで「拙速にならないで」「真の消費者の声を聞き、事業者が実行できる制度にして」と意見を述べるのが先決なのだろう。そして、多くの人たちに、食品表示一元化に関心をもってもらい、自分自身の問題として感じて考えてもらう。サイレントから脱してもらう。そのための努力をしなければ。
 皆さんはどのようにお考えだろうか。

【意見交換会の中で、内容が充実していたセッション(市民バイオテクノロジー情報室/社団法人日本果汁協会/日本消費者連盟の議論)の傍聴記録を下記にまとめたので、ご覧いただきたい】

中間論点整理にかんする意見交換会 傍聴録〜選択の権利の保障を訴える消費者団体と、現実を見る事業者団体

 食品表示一元化検討会の中間論点整理に関する意見交換会が23日、開かれた。
 消費者庁の募集に応じた23団体・個人が6つのグループに分けられ、それぞれのグループに50分程度の時間が与えられた。
 そして、各団体・個人がそれぞれ8分程度、意見を述べた後に、座長の池戸 食品表示一元化検討会会長の司会の下に15分程度の意見交換を行う、というセッションが6回にわたって繰り返された。

 なかなか珍しいやり方で、グループごとに議論の質にも違いがあったようだ。
 本欄では、Foocom・松永が「事業者側の事情、消費者団体の言い分が、もっとも明確に整理されて議論された」と思う三つめのグループ(市民バイオテクノロジー情報室/社団法人日本果汁協会/日本消費者連盟)の議論の傍聴記録をお伝えしたい。

 当日のプログラムや意見の概要については、消費者庁の食品表示一元化検討会のページで公開されている。当日の配布資料も、ここで後日公開されるという。

(なお、なるべく忠実にテープ起こしをしようとしたが、聞き取れないところもあった。また、聞き間違いもあると思う。各団体の主張の概要を伝える記録として、お許しいただきたい。)

<市民バイオテクノロジー情報室>

 食品表示を一元化するにあたっての新たな法律の目的は、消費者の知る権利を保障するものである。そのことを、制度の「目的」の中に入れてほしい。
中間報告の本体ではなく、関連する委員の指摘として「参考資料」にありますが、食品表示の目的は、「食品に関する表示を適正なものにすることにより、消費者の安全を確保し、消費者の自主的で合理的な商品選択が確保されるようにするため、事業者に対して、消費者の食品選択に必要な情報を開示させ、かつ、消費者が誤認することのないようにその内容を適正なものにさせることとし、もって消費者の権利を確保すること」ということを、目的に明記してほしい。
 これについては、検討会を何度も傍聴していますが、複数の委員から再三意見が出ているが、「参考意見」としてまとめられてしまうことを、私としてはおかしいと思っている。

 次に、論点2については、基本的に考え方2−1−3を支持する。私の意見とぴったり合うものではないが、もし選ぶとするとこれ。
 原料原産地は、原則としてすべて表示すべき。消費者が食品を購入する際の手がかりは表示。私たちは、購入しようとする食品にどんなものが使われていて、それがどこから来ていて、それ以外にどんなものが入っているか、知りたい。知る権利、表示で保証されるべきだ。

 原材料すべての記載は、スペースの問題で無理だという意見が事業者から出ているが、宣伝のための大きな文字、商品名など入っている。そういったものを小さくすれば、スペースを確保できる食品はたくさんある。そもそも、限られたスペースに書ききれないないほどの材料を使って食品を作っていることに、私たち消費者は不信を感じている。おかしなことではないか、と思っている。

 たとえば、食品添加物はわかりづらく、見ただけではわからないものたくさんある。だからこそ、それを使って食品を作っている事業者は、その名称と、なんのために使っているかわかるようにしっかりと書くべき。一括表示では、どんな食品添加物が使われているか、まったくわからない。事業者として、きっちり知らせる、どんなものを使っているか示す責任がある、と思っていないのではないか。

 消費者のアンケートで、「情報を少なくして字を大きくする」のと「文字は小さくても情報を多く載せる」のと、どちらかという設問になっている。当然、文字が大きければ読みやすいわけなので、こちらを選択する消費者は多い。
 しかし、極端の言い方をすると、文字数少ない、情報量は少ない、でも自分が普通だと思っている情報には答えていますよ、それでもいいですか、という設問があれば、答えは変わって来たと思う。

 私たち消費者は、自分や家族が口にする食品に、なにが含まれているかもちろん知りたい。食品表示に原材料がきっちり書いてあれば、自分がとりたくない、食べさせたくないものを書いていないものを、確かめることができる。
 表示の簡素化は、今以上に表示をわかりにくくするものであって、けっして文字が大きく情報が一定量あるものがわかりやすい表示ではない、ということは申し上げたい。

 最後に、消費者庁の「安全・安心・豊かにくらせる社会に」というパンフレットの中に消費者庁自ら、「消費者庁は、消費者、生活者の権利とはなにかを第一に考え行動する機関」と書かれている。食品表示制度は、消費者の知る権利を保障するものであってほしい。そのあたりを踏まえて、目的にいれて議論をしてほしい。

<社団法人日本果汁協会>

 基本的には、関係法令一元化は賛成するものであるが、現在検討されているTPP協定においては、たとえば遺伝子組換え食品、米国で広く採用されている放射線照射食品等が、大きな課題になってくる。交渉の方向がわかっていない段階で、内容もわからないのに、一元化を法制化するのは次期尚早。結論を待ってやるのがいいのではないか。

 原料原産地問題については、消費者向けの最終加工製品が米国産であれば、中味の果汁がブラジル産であっても米国産と書く、という制度であれば、それは国内の果汁産業業界を疲弊させることになる。
 飲料メーカーは海外に進出している。シンガポール、オーストラリア、米国、逆輸入されるようになれば、国内産業界が空洞化することになる。その点を十分に考えてほしい。

 前のグループで、韓国では多くの加工食品で原料原産地表示が義務化されている、という意見があった。それはたしかにそうだ。だが、果汁製品でいえば、日本の関税は25%、韓国は50%。韓国では、最終加工製品は輸入できてもペイしない。そういうバリアがある。
 米国では最近確かに、原料原産地表示が増えている。しかし、米国に日本から輸出しようとすると、日本の工場は米政府の登録、審査に合格しなければ、輸出できないバリアがある。そういうことも考えた上で、施策を決めていただきたい。
 アメリカでは、食品安全強化法が施行されます。海外でただやっているから、というだけでは、日本の産業界を疲弊させる。

 果実飲料についてもっと詳しく述べる。原料原産地表示が義務化されたらどうか、ということを、協会が事業者にアンケートして、消費者庁担当官にも1年くらいまえに報告した。国産果汁の生産量は、今年はみかんが9万トンくらい、前の年は裏年で4万トン。果汁の量が年によってものすごく変わる。そういう状態では、企業は原料として使えない、定番商品としては使えない。企業が、国産果汁を使わず、海外果汁に特化せざるを得ないという状況を招く。そこを十分に考えてほしい、ということだ。

 今までの検討会を傍聴したが、どうも委員各位の発言は、それぞれの立場の主義主張を述べているだけだ。消費者の知る権利はわかるが、産業界、国民全体に対して、どういう経済的負担があるのか、ちゃんとケーススタディするべきだ。
 原料原産地表示を義務化すると、販売価格が上昇する、その負担は最終的には消費者がする。果汁飲料の場合、主な消費者は20歳未満、あるいは60歳以上の経済的弱者である。原料原産地表示を義務化すると、どれくらいのコストアップが成立するか、ケーススタディしたうえで、判断してほしい。

 検討会の議論には失望している。こういう施策がどういう事態を招くか、もっと真剣に議論してほしい。6回も膨大な国費を使ってやっている。日本の国民全体にとって、経済的負担、インパクトがあるか、ケーススタディ、サーベイをしてほしい。

<日本消費者連盟>

 まず、食品表示の問題のきっかけを振り返りたい。2007年の不二家、ミートホープ、白い恋人など、食品偽装の問題があり、これらがきっかけになって、表示問題をしっかりとやるべきだ、ということになった。
 ただいまの果汁の話、実態は天然のジュースになっていないものもジュースとして売られていた。議論の出発点は、消費者がこの間、さまざまな形でダマされて来たというのがきっかけ。そういうことが起きないように、新しい体制になるように、そういう理念を盛り込まなければならない。

 2年前も、この場で意見を述べたが、さまざまな事業者の意見もあって、私たちは統一法の必要性、原料原産地表示の必要性を述べた。そして、(消費者委員会に)食品表示部会ができたり、消費者庁で検討が始まった。
 表示部会の中においても、原料原産地表示の拡大を検討した。私どもは委員だったが、事業者の声が多く聞かれて、本来、消費者の利害をどう改善して行かなければいけないか、議論が非常に少なかった。そのことを遺憾に思っている。
 消費者基本計画の改訂が、昨年あった。統一法の必要性、現行制度の運用改善をうたっている。これを踏まえて長官も仰っていたが、消費者の視点に立った新しい制度にしなければならない。

 消費者庁内に一元化検討委員会が設置されたが、まだまだ事業者の声が多い。残念に思っている。消費者の声がしっかりと反映できるような体制でなければならない。

 そして、中間報告の論点の問題点を述べる。目的、基本的考え方、論点が羅列されているだけ。消費者の選択権の確保が強調されていない。

 私どもの基本的な考え方は、たとえば食品添加物であれば、どういう添加物がなにに使われているかがわからないのが問題。加工食品は、良質でない原材料を使いながら、香料や大豆タンパク、着色料など多用してごまかしている。よく見せるためにさまざまな化学物質を使っている実態がある。それが消費者にわかるように、納得できるような表示でなければいけない。

 また、適用範囲を外食などにも拡げるべきだ。事業者からは、ガイドラインで、という声が聞こえるが残念だ。

 総論では、「目的」については、偽装や安全問題について、情報を企業が公開して、消費者が食べたくないものを選択できるようにする。まがい物が多いと思うので、そういうものだと分かるような、消費者の選択権の確保が必要ではないか。それをうたうことが総論で必要と思う。
 それから、現行の消費者庁の安全体制は、縦割りを引きずっている。実行力の確保が必要だ。
 たとえば、企画立案は厚労省、農水省の部門がやっているものがある。消費者庁がしっかりやってほしい。立入検査も消費者庁でできるような体制作りをしてほしい。また、厳罰化も求めたい。

 各論においては、原料原産地表示拡大。これをあくまでも求めて行きたい。

<意見交換>
日本消費者連盟

 TPPの関連について、時期尚早ではないか、という意見が出たが、先手を打つことが求められている。よく、コーデックスで表示ルールが決まっている、と言われるが、決まっているのではなく今動いている議論があるわけなので、日本のルールを世界に示すことが必要。TPPが議論されているから、まだ、という議論のたて方には合意できない。

日本果汁協会

 関係法令がまとまって、TPPの交渉経過で違う、となった場合、法令を改正し直さなければならない。協定と法令の関係、直さなければならない。そんなことが世の中に通るのか。
 私は、時期尚早じゃないか、と思う。遺伝子組換え食品も放射線照射食品も、米国で広く流通している。拡げられない、と政府が言っても、通じるのか。

日本消費者連盟

 TPP参加自体が問題だ。TPP自体が、国家の主権を無視している。TPP協定を進めてアメリカ基準を押し付けるもの。事前協議が行われているが、中味を精査して、一方的な非関税障壁は認められない、という立場で交渉に臨むべき。交渉自体の問題点を見据える気構えがないと。

市民バイオテクノロジー情報室

 TPPに参加することで、食品表示が今以下になるのであるば、消費者としては受け入れられない。
 それとは別に、今回の検討会では遺伝子組換え表示がまったく議論されず、このまま最終報告が出ることを、危惧している。遺伝子組換え食品については、消費者はできるものなら、食べたくない、口にしたくない。それは、これまでのアンケート等ではっきりしている。現在の表示はとても中途半端なので、食べたくない、と思っても、知らないうちに食べざるを得ない。消費者庁のまとめる食品表示であるのなら、消費者の望んでいない遺伝子組換え食品は選べる表示であるべき。検討会で今後、議論にあげてほしい。

日本消費者連盟

 今の遺伝子組換えもだが、各論としてしっかり議論すべきことがある。議論されないまま、最終的な報告になることを危惧する。次に上げる項目、議論してほしい。
 原料原産地表示における加工食品の50%ルールを撤廃していただきたい。

 それ以外の食品添加物の義務表示についても、キャリーオーバーについて、問題であるものもある。消費者もわかるようにしてほしい。アレルギー表示も厳格化を求めたい。放射線照射も 当然。栄養成分表示も、義務化に向けてしっかり検討してほしい。主婦連合会の意見にもあったように、放射能汚染問題は重要なので、ベクレル表示を、基準値以下であっても数値を記載、そういった方向性の検討をしてほしい。

日本果汁協会

 原料原産地表示にしろ、栄養表示にしろ、表示をすることがコストを伴う。原料原産地表示は、いろいろと意見があるが、義務化すると製品コストが2割、3割上がる。消費者が納得しますか。
 日本は人口が減って、経済がうまくいかない。製品価格が上昇し、消費者の経済的負担になる。消費者連盟、いろいろな消費者団体の方にお聞きしたいが、消費者が納得すると理解していいのですか。

日本消費者連盟

 事業者に、いったいどれくらいのコストか、何%か、明らかにしてほしい。値上げに結びつくのであれば、私どももしっかりと考えなければいけないが、コストが上がると言われるだけでは、承認できない。実際、加工食品は濃縮還元が多いと聞いている。実際の海外から入って来て日本国内で加工して、今のブランド化をしている。その時に濃縮還元のコスト、国内での原料を使うことの違いも考えて。消費者は本物のジュースを飲みたい、と思っている。中味の問題がわかるようにすることが前提。

日本果汁協会

 ストレート果汁は長持ちしない。せいぜいもって1年です。海外から輸入されるのは、濃縮によって品質が劣化しない状況で冷凍で入ってくるので、安くできる。輸送コストもかからない。貯蔵期間も長くできる。
 一般に市販されているストレート果汁の方が、濃縮還元果汁より価格が数段高いはず。ストレート果汁は、国産果汁です。輸送コスト、長持ちしないという問題あるから。
 では、国産果汁はストレートだけか。ミカン、リンゴ、約8割は濃縮にしている。ストレート果汁だけでは売れない。貯蔵のスペース、コストの問題もありる。

 ちなみに、濃縮還元果汁1缶の果汁の原価は約50%だが、ほかの飲料は1割いかない。50%ですから、原料原産地表示を義務化すると、大量にかつ定期的に、それだけの量を確保できる国しか、原料として使えない。
 現在、オレンジ果汁はブラジル産が6割、リンゴ果汁は中国6割という状況。義務化するとなると、輸出量の少ない国から輸入できず産地が特定化する。中国産リンゴ果汁は、世界の流通の半分を占めているが、価格は暴騰している。
 容器に表示されるとなると、中味が決まってしまう。容器は、1年前に発注するものであり、詰める時に作るわけではない。産地が変わったら、容器も捨てなければならない。そういうこともコストに含まれる。

 消費者が、原産地を知りたいのはわかる。だから、果汁協会としては、「強調表示でやりましょう」と言っている。国産果汁や、イタリアのシシリーのレモン果汁など、ちゃんと書いている。しかし、定番商品は(産地を変更しても)、価格変更できない。変更すると、流通に説明しなければならず、欠品が出ると違約金も払わなければならない。そういうことも含めて、ケーススタディしてほしい。そうしないと、国内の清涼飲料、果汁業界は空洞化する。海外で生産し日本に輸出すればいい、という話になる。

 ほかの加工食品もそうだろう。日本にはバリアがない。関税は下がっているし、韓国や米国のようなバリアがない。そういう仕組みがまったくないのに、原料原産地表示だ、なんだかんだ、と言っていると、国内の企業は海外で生産し、逆輸入ということになる。

日本消費者連盟

 詳しくご説明していただいて、どういうふうにできるか分かったが、一般的には知られていない。消費者は実態を知ったうえで、応援したい。そういう素性、どういう流通の過程か、がわかるようにしていただきたい。全部記載するだけでなく、いろいろな手段があるので、情報提供してほしい。ラベルは無理かもしれないが、わかる仕組みを作ってほしい。

日本果汁協会

 国産と銘打っても、消費者は買わない。国産果汁のリンゴは平成20年度の在庫が2000トンある。消費者は要するに価格。1円でも安いものを買うという姿勢だ。原料原産地表示を消費者が求めるのなら、チョイスすればいい。法律で決めるのでなく、消費者が選択したいのであれば、表示してあるものをチョイスすればいい。

執筆者

松永 和紀

京都大学大学院農学研究科修士課程修了後、新聞記者勤務10年を経て2000年からフリーランスの科学ライターとして活動